<冬の訪れ>  (*この物語はフィクションです。)

 

 

 

昔々、あるところに、小さな王国がありました。

 

 

そこに住む民は、長年の圧制と、高額の税金に苦しめられていました。

 

王様は、いつも

 「天国は近づいた!我に続く者は、歴史にその名を刻まれるであろう!」

と、雄弁に語られ、民は王様を “この世の救世主=メシヤ” だと信じていました。

 

だから、年々、吊り上げられていく高額の税金にも

「この税金が、きっと世界平和の為に役立っている!

 いつか、この国を中心に世界が統一され、地上天国が成されるのだ!」

と信じて疑いませんでした。

 

でも、民の暮らしぶりは悲惨なもので、あまりの苦しさに、亡命する人達もいました。

 

民に手渡される世界地図には、その王国は “メシヤ王国” と記されていました。

 

厳しい情報統制下に置かれていた民は、知る由もなかったのですが

実際、その国以外の国で使われている世界地図には

自称メシヤ王国” と、表記されているのでした。

 

 

 

 

ある日、突然、大きな行事を目前に控えて、王様が亡くなられました。

 

民は、嘆き悲しみ、うろたえました。

「世界統一も、地上天国も、できていないのに、私達はどうすればいいんだ!?」

王様の後を継いで、実権を握られた王妃様が民をなだめました。

 

 

「民よ。落ち着きなさい。 私は神であり、メシヤである!

 私に従う者は、不安や恐怖に怯えることはないであろう!」

 

ご病気をお持ちの王妃様は、毎日、奇妙な踊りに励まれ、健康を回復されました。

それを聞いた民は、「これが最近、王妃様のお気に入りの踊りよ!」と

お花畑で、みんな一緒に楽しく踊る日々が続きました。

 

又、王妃様は王国の発展と安泰を祈願され、精誠を尽くされる為に

 

ご病気のお体にムチを打たれ、スイスの銀行に行かれ、ヨーロッパを巡回されるのでした。
 

 

 

 

ところで、亡くなった王様には、たくさんの王子様と王女様がいらっしゃいました。

 

 

 

民には、知らされていなかったのですが、王様には、たくさんの愛人がいらっしゃり

隠し子までいたという噂が広がり始めました。

 

実は、その噂を流し始めたのは、他でもない、末の王子様であられるナナ様だったのです!

 

もうひとりの王子様のヨン様も、裏で協力されているご様子でした。

 

壮絶な、お家騒動の始まりでした。

 

 

ナナ様は “ゆうちゅーぶ” と “ねっと” なる武器を駆使して、王妃軍を攻められました。

 

 

ナナ様は、おっしゃられました。

 

「私に従う者は、一生、高額の税金に苦しまない生活を約束しよう!

 先祖供養も、結婚式も、母の王国より、安いお布施でしてあげよう。」

 

 

多くの民が、涙を流して喜びました。 

 

 

もう何十年も、高額の税金とお布施に苦しんできたからです。

 

 

「もう、こんな生活は嫌だ! 自分はナナ様に従う! 皆も共に闘おう!」

 

 

そう言って、立ち上がる民が現れ始めました。

 

 

 

 

 

「このまま噂が広まれば、自分達の首が危ない!」

 

 

 

 

 

と考えた王妃様側の重臣達は、慌てて、五ヶ条の御触れを出すに至りました。
 

「我が王国以外の諸外国は、全てサタン国家である!

 故に

 ひと~つ! サタン国家の言葉に惑わされない!

 ふた~つ! サタン国家の言葉を拡散しない!

 み~っつ! サタン国家の儀式に参加しない!

 よ~っつ! サタン国家の者達と接触しない!

 いつ~っつ! サタン国家の活動をする場所に行かない!」

 

 

 

 

しかし、ナナ様の元に、はせ参じる民の足を止める事は、できませんでした。

 

 

 

 

 

ナナ様に従おうとする律儀な民は、わざわざ “海外転出届” を提出して

 

ナナ様の国に向かうのでした。

 

ナナ様の国は、雄大な自然に囲まれた環境でした。

 

たとえ、簡易ハバカリで、天幕の生活だったとしても、そこは民にとっては、正に楽園でした。

 

民は、もう、不正だの、横領だの、不倫だの、そんな汚い言葉を聞きたくありませんでした。

 

 

先に亡命した人達が、どんなに叫んでも

 

良識あるジャーナリストが、義憤に駆られて真実を伝えても

心ある弁護士達が力を合わせて裁判をおこそうとも

耳を塞いで、一切、聞こうとはしませんでした。

 

耳を塞いで聞こうとしないのは、王妃様の元に残った民も同じでした。

 

毎日、王妃様と一緒に、お花畑で、奇妙な踊りを踊って、楽しく暮らしました。

 

楽しい日々が続きました。

 

 

 

 

 

1年、2年、3年… 月日が流れました。

 

 

 

 

 

3年を過ぎた辺りから、ナナ様の国に、変化が現れ始めました。

 

 

何という事でしょう! 税金とお布施の価格がだんだんと上がり始めたのです!

 

 

「これでは、父君と母君の時代と変わらないではないか!」

 

 

そう気付いた民は、愕然としました。

 

 

ここに移ってから納めたお金は、大した額ではなかったけれど

 

以前の王国で納めた税金とお布施は、莫大な額だったからです。

 

確か、20年前まで、さかのぼって請求できると聞いたことがありました。

 

 

慌てて、心ある弁護士に、以前の王国での

 

不当な税金徴収に対する返還請求はできないものかと相談しました。

 

弁護士は答えました。

 

 


「あなたは、3年前に海外転出届を出されたでしょう?

 

 不当な税金徴収に関する返還請求は

 海外転出届を出してから、3年以内に申告しなければならないのです。

 残念ですが…」

 

 

 

 

 

途方に暮れた民は、力なく空を見上げました。

 

真っ白な雪が、チラホラと舞い始めました。

 

 

急にブルッと身震いがしました。

 

冬服を準備していなかったことに気がつきましたが

悲しいことに、もう、冬服を買うお金もありませんでした。

 

あんなに綺麗だった、お花畑の花も、寒さで枯れています。

 

 

 

常しえの春だと信じていた王国にも、冬がやってきたのです。 

 

 

 

 

 

 

 

(この物語はフィクションです。 長い文章を、お読み頂き、ありがとうございました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外転出届を出すよりも、亡命した方が良かったのでは?と思った方は

 

 

 

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