(最低限の書き起こし)
昭和三十年代後半の呉。
例の喫茶店で晃司と幸子の二人はぐだぐだおしゃべりをしている。
「今度うちの妹が来るんよ。よかったら、会わん?晃ちゃんに会いたいんじゃと。」
「妹って、前に言いよった双子の妹?」
「うん。」
「いつ来るんかいの。」
「今度の日曜日に来る言うとったよ。」
「おうほうか。」
次の日曜日、待ち合わせの時間に晃司がいつもの喫茶店に行くといつものように幸子がいた。
彼女は振り向くとにっこりと笑った。
「おう、幸。」
すると彼女はしばらく黙っていたが、その間くすくすと笑いを噛み殺していた。それを見てすぐに晃司も気がついた。
「あんたあ、幸子じゃないわ。」
するとカウンターに隠れていた幸子がゲラゲラ笑いながら出てきた。
「引っかかった、引っかかった。晃ちゃん、この娘がうちの妹の頼子さんよ。双子じゃけえ、そっくりじゃろ。」
(そのあと三人は歓談する。)
姉妹がケーキを食べているうちに二人とも鼻の頭に生クリームがついた。
「お姉ちゃん、あんた鼻の頭にクリームがついとるよ。」
「頼子さんもついとるよ。」
在日の娘二人はなんでもないことを言ってはケラケラ笑った。
(未完)