世の中にはすごい人がいる。例えば、「駅名が全部言える子供」のような。あるいは、衒学趣味の人、武勇伝を語る人、自慢話をする人、濡れ手に粟で大儲けをしたという人など。しかし、私は、こういった人たちを見ると、だいたい心の中でこう思う。
「感心すれど、感謝せず。」
つまり、すごさに感心はするのだが、それが、私を含めてその人以外の誰の役にも立っていないという点において、感謝するところがないのだ。私は他人を見ると、その人は何ができるのか、よりも、何のためにそれをしようとしているのか、の方が気になる。つまり、その人の生き方に「義」があるかどうかが問題なのだ。「一芸に秀でたるは芸人にて、侍にあらず」だったか。「葉隠」のそんな言葉を思い出したりするのだ。眼高手低でもいけないだろうが。


【参考】

「天才と使徒との相違について」(キルケゴール)