この間、妙な夢を見ました。
ずっと昔、ずっと昔でどのぐらい昔だったか忘れましたが、ずっと昔、好きだった女性がいました。大学の頃だったかな。彼女はとても明るくて、友達がたくさんいる社交的な女性でした。その夜、見たのは、その彼女の夢でした。夢の中で、彼女がマンションを引っ越すことになって、何故か、僕が、その後、入れ替わりにそのマンションに住むことになっていました。彼女のマンションは変な構造になっていて、マンションの一室なのに、勝手口があって、庭が付いているのでした。引越しの日、彼女と僕の共通の友達がたくさん引越しの手伝いに来てました。彼女はみんなと一緒に引越しの支度をしてました。僕もみんなに混じって、彼女の引越しの手伝いをしてました。でも、僕は彼女からは離れて作業をしていました。どうしてかというと、以前に、僕が彼女に「昔から君が好きだった」と言ってしまって以来、口を聞いてもらえなくなっていたからでした。で、僕は遠くで荷造りをしながら、彼女のことをときどきぼんやりと見ていたのでした。彼女は僕に背を向けて、いろんな人に指示を出してました。で、彼女は全員にいろいろとねぎらいの言葉をかけながら、僕には背を向けたままなのでした。こうして彼女が引越しの荷造りをしている最中に、僕は僕で自分の荷物を運び入れ始めました。僕はひとりで自分の荷物を運んでいました。なんと暗い性格。そのうち、彼女の荷造りが終わって、いつの間にか、彼女と友人たちは皆いなくなっていました。おそらく、彼女の新居の方に移動したのでしょう。で、そのうち、そちらで荷解きをして、終わったら、みんなで打ち上げでもするのでしょう。僕は一人で残りの自分の荷物を片付けていました。その後、喉が渇いてきて、台所に行くと、まだ彼女の荷物があちこちに残っていました。で、流しと台所の床を見ると、割れたグラスがたくさん残っていました。彼女は片付けないで行ってしまったのでした。「片付けないといけないなあ、面倒くさいなあ」と思っていると、足に違和感を覚えました。片足を上げてみると、足の裏の親指の付け根が腫れてました。で、そこをつまんで、ぎゅっと握ってみると、そこからガラスの破片が出てきました。僕はそれをつまんで取り除きました。それから、床を見ると、破れたポラロイド写真が落ちていました。拾い上げてみると、それは、居酒屋で、彼女が彼氏や他の友達たちと一緒に写った写真でした。その写真には、写っている人たちが皆オレンジやピンクのペンで可愛く落書きされてました。でも、写真自体は破れていました。おそらく彼女が破ったのでしょう。彼女はその彼氏とずっと前に別れたのでした。彼らが付き合っていた頃、僕は彼女がとても好きでした。いつも遠くから見ていて、胸が痛くなっていたのでした。しかし、当の彼女は、当時付き合っていた彼氏を捨てて、とっくに別れていました。人生がすごいスピードで過ぎていく。僕だけ、人生の時間が止まっているかのようです。
それからしばらくして、彼女の部屋の勝手口あたりに人がうろうろしているのに気が付きました。そのとき、勝手口の隣に何故かガソリンスタンドの給油口のような形をしたコカコーラのスタンドが取り付けられているのに気がつきました。僕は、何かと思って、勝手口の方に近づきました。勝手口を出てみると、うろうろしていたのは近所のおばさんたちでした。引っ越した彼女がフレンドリーな性格で、近所の人たちと仲良くしてたので、おばさんたちも警戒感なく、訪ねてきているのでした。しかし、かわりに僕が引っ越してきたことを知ると、皆いなくなってしまいました。
その後、勝手口で、コンコンと音がするので、出てみると、真っ赤なキャンバス地のつなぎを着たコカコーラの人が立ってました。何の用か聞いてみると、コカコーラ代の集金でした。何のことかと思って聞いてみると、このマンションには、全室コカコーラのスタンドがついていて、コーラが飲み放題なのだそうです。しかし、そのために、毎月お金を払わないといけないのだそうです。そんなこと、僕は彼女から聞いていません。ムッとしながらも、僕はコカコーラの人に尋ねました。
「いくらですか。」
「5000円です。」
毎月コカコーラが飲み放題で5000円。高いのか、安いのか。やむなく僕はそのお金を彼女のかわりに立て替えて支払ったのでした。来月以降も毎月支払うんですかね、これ。