これからふたつの例について考えてみよう。

ひとつめ。昔(25年前)、あるところにT君というあどけない美少年がいた。T君はガンダムが大好きだった。ある日、模型屋に行って、ガンダムのプラモを買ってきた。喜んで家に帰って、よく見ると、それはガンダムじゃなくて、類似品の○○だった。それで、Tくんは悔しがって言った。
「ガンダムを買いに行ったのに、違うのをつかまされたわ。チクショー、騙されたわ。(`ω′)! 」

ふたつめ。あるところにTさんという、30代の苦みばしった成人男性がいた。この間(2ヶ月前)、そのTさんが風呂で髪を洗おうと思ったところ、シャンプーが切れているのに気がついた。翌日、Tさんは薬局に行って、シャンプーを買ってきた。しかし、家に帰って、よく見ると、それはシャンプーじゃなくて、リンスだった。それで、Tさんは悔しがって言った。
「シャンプーを買いに行ったのに、リンスをつかまされたわ。チクショー、騙されたわ。(`ω′)! 」

さて、上のふたつの例についての問題。
問題:
両者の根本的な違いは何か?
解:
前者は騙されたのだが、後者はそうではない。
証明:
(何故ならば)、「騙す」という行為には、「そうすることによって、行為者に何らかのメリットがあり、行為者自身がそれを見込んでいる」という暗黙の前提がなければならないが、上のふたつの例を見比べてみると、前者にはそれが見られるが、後者にはそれが見られない。実際のところ、後者のリンスの製造元である薬品メーカーにも、薬局にも、Tさんに対して、
「リンスをシャンプーであるかのように見せかけて売りつけるメリット」
は何処にもないし、それを意図している形跡もない。(故に)、後者の例において、Tさんが騙されたと主張するのは正しくない。
Q.E.D. (証明完了)