幼稚園の頃、風邪を引いて寝ていると、兄が帰ってきました。
ごそごそという音がして、薬でうとうとしている私の頬にやわらかいものが当たりました。目を開けると、そこには小さなひよこが立っていました。ひよこはあちこちを見回して、きょろきょろとしていました。そのひよこは、兄が、小学校の前で行商のおじさんから買ったものでした。それから毎日、私と兄は交代でそのひよこの世話をしました。
やがて、ひよこは日に日に大きくなり、気がつくと、頭上にかさぶたのようなものが隆起してきて、鶏らしくなってきました。そのうち、室内で飼えなくなってくると、父が大きな本箱を運び出して、細い園芸用の金網を貼り、鳥小屋にしました。鶏はその後も成長を続け、やがて朝っぱらからけたたましい声で鳴くようになりました。それがあまりにうるさいので、どうしようかということになりました。父は、冗談で、締めて食べてしまおうと言いました。それならフライドチキンがいいと私が提案すると、兄はせっかくだからローストチキンにしようと言いました。母はキモも美味しいのよと付け加えました。
鶏の味付けが決まった数日後、私が学校から帰ってみると、テーブルの上に大きなスイカが乗っかっていました。「これはなんだ」と母に聞いてみると、「今日、お向かいのおうちのドーベルマンが逃げ出して、うちのを食べてしまったのだ」と答えました。
その日の夜、私たち兄弟は口の中を真っ赤にしながら、どちらがたくさんスイカを食べるかを競争しました。