あるところに、ひとりの紳士がいた。


その紳士は珍しく一人の美しい少年奴隷を持っていた。


そして、その紳士はその美しい少年奴隷に彼の友情と誠実を示し、毎日眺めて暮らしていた。


ところで、ある日、彼は友人にこう悩みを打ち明けた。


「ああ、俺の奴隷のなんと美しく、善い気質を持ったことよ。


これでもう少しおしゃべりでなく、粗暴でなかったらどんなによかったことだろうか。」


それを聞いて、その友人は以下のように答えた。


「なあ、兄弟。すでにかれに友情を告白したんだから、この際、服従を期待するのは無理というものさ。


愛する者と愛される者の間では、主人と奴隷の関係なんて成り立つはずはないのだから。


  主人が愛らしい僕(しもべ)と


  戯れ、笑いさざめくとき、


  何の不思議があるというのだね、僕(しもべ)が主人のように命令し、


  主人が僕(しもべ)のように言いなりになることに。」



[奴隷は水を運び、レンガを造りたまえ。


そして、愛らしい僕(しもべ)はまるきりボクサーのようになってしまうのさ。]



「ゴレスターン」(サァディー 沢英三訳 toraji.com改訳)



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