あるところに、ひとりの紳士がいた。
その紳士は珍しく一人の美しい少年奴隷を持っていた。
そして、その紳士はその美しい少年奴隷に彼の友情と誠実を示し、毎日眺めて暮らしていた。
ところで、ある日、彼は友人にこう悩みを打ち明けた。
「ああ、俺の奴隷のなんと美しく、善い気質を持ったことよ。
これでもう少しおしゃべりでなく、粗暴でなかったらどんなによかったことだろうか。」
それを聞いて、その友人は以下のように答えた。
「なあ、兄弟。すでにかれに友情を告白したんだから、この際、服従を期待するのは無理というものさ。
愛する者と愛される者の間では、主人と奴隷の関係なんて成り立つはずはないのだから。
主人が愛らしい僕(しもべ)と
戯れ、笑いさざめくとき、
何の不思議があるというのだね、僕(しもべ)が主人のように命令し、
主人が僕(しもべ)のように言いなりになることに。」
[奴隷は水を運び、レンガを造りたまえ。
そして、愛らしい僕(しもべ)はまるきりボクサーのようになってしまうのさ。]
「ゴレスターン」(サァディー 沢英三訳 toraji.com改訳)
2008 (c) toraji.com All Right Reserved.
toraji.comの本の目次
http://ameblo.jp/toraji-com/entry-10059286217.html
今年の年末に出る予定の本の目次(更新中)
http://ameblo.jp/toraji-com/entry-10111157888.html
the very best of toraji.com(製作中)
http://ameblo.jp/toraji-com/entry-10112793517.html