新約聖書を参考にしながら、「老子」を創作的に翻訳する。必ずしも原文に忠実ではない。
なお、本文の次の()内の訳は中公文庫における小川環樹氏によるものである。



第2章


「天下、皆、美の美為ることを知る、これ、悪なるのみ。皆、善の善為ることを知る、これ、不善なるのみ。」
(天下すべての人がみな、美を美として認めること、そこから悪(みにく)さ(の観念)が出てくる。(同様に)善を善として認めると、そこから不善(の観念)が出てくるのだ。)


toraji.com訳
「世の人々がそろって美を美として褒め称えるとき、あなたがたは気をつけなさい。
そこから醜さは生まれてくるのだ。
また、世の人々がそろって善を善として褒め称えるとき、あなたがたは気をつけなさい。
そこから偽善は生まれてくるのだ。」



第3章


「(是を以て聖人の治は、)其の心を虚しくして、其の腹(ふく)を実(み)たさしめ、其の志を弱くして、其の骨を強くす。」
((それゆえに、聖人の統治は、)人民の心をむなしくすることによって、人民の腹を満たしてやり、かれらの志(のぞみ)を弱めることによって、かれらの骨を強固にしてやる。)


toraji.com訳
「心の貧しい人々は幸いである。あなたがたは満たされる。
望みの少ない人々は幸いである。あなたがたは丈夫な体を得る。」



第4章


「道は沖(ちゅう)なり。而(しこ)うして之を用うるに或は盈(み)たず。」
(「道」はむなしい容器であるが、いくら汲み出しても、あらためていっぱいにする必要はない。)


toraji.com訳
「神の国を何に例えよう。それは汲めども尽きない容器に似ている。
それは一見空っぽのようでいて、いくら汲み出しても尽きることなく、改めて満たす必要もないのだ。」



第5章


「天地は仁あらず。万物を以て芻狗(すうく)と為す。」
(天と地には仁(いつくし)みはない。(それらにあっては)万物は、わらでつくった狗(いぬ)のようなものだ。)


toraji.com訳
「天に人の情けを求めてはならない。天は神の玉座である。
地にも人の情けを求めてはならない。地は神の足台である。
天地において、あなたがたはわら細工の狗に過ぎない。」



「聖人は仁あらず。百姓(ひゃくせい)を以て芻狗(すうく)と為す。」
(聖人にも仁(いつくし)みはない。(かれにとって)人民どもは、わらでつくった狗のようなものだ。)


toraji.com訳
「聖人に向かって「主よ、主よ」と言う者が皆、憐れみを受けるわけではない。
そう言いながら天の父の御心を行わない者に対しては、聖人はきっぱりと言う。
「あなたたちのことは全然知らない。わら細工の狗ども、わたしから離れ去れ。」」



2008 (c) toraji.com All Right Reserved.(toraji.comによる翻訳部分)