その2 からの続き)


「誰じゃったん、藤本。」


僕は尋ねた。


「うん?ああ、長谷よ。うちのクラスの。」


長谷というのは、うちのクラスの同級生で、背が高く、すらっとした、色の浅黒い女の子だった。


「長谷がどうしたん。」


「長谷がの、他の女らと3人で集まって遊んどるんじゃと。」


3人というのは、いずれも、うちのクラスメートで、わりと地味な感じの女の子たちだった。


「ほいで?」


「ほいでの、『いまから、うちに遊びに来んか』、言うけえ、断ったんじゃ。何でわしが女らの家に遊びに行かなあいけんのなら。のう。」


僕は地味な彼女らの大胆な行動に驚いたが、藤本に冷静に答えた。

「ええんじゃない、行ってくれば。」


「あほか、われ。なんで、わしが、この歳にもなって、女の家に行って、ママゴトの相手をして来にゃならんのなら。」


僕はその彼の返事を聞いて、噴き出した。彼女たちこそ、この歳にもなって、ママゴトの相手を探して、男の家に電話をかけてきたわけではあるまい。藤本は、実のところ、かっこよかったのである。


「なんかしらんけど、ああやって、ときどき、変な電話がかかってくるんじゃ。われのところにもかかってくるじゃろ。」


「ううん、かかってこんよ。」


僕は彼の質問にむっとした。


「ほうか、ええのう。」


彼はのんきに僕をうらやましがった。今になって思うと、彼はこの時点でいまだに第2次成長期を迎えていなかったのかもしれない。



その4 に続く)