週末の大通りを 黒ゴキが歩く
ご自慢の触角をひょこひょこ揺らして 威風堂々と
その姿からゴキは 忌み嫌われていた
闇に溶けるその身体めがけて ゴキジェットが吹きつけられた
コドクには馴れていた むしろ望んでいた
誰かを想いやることなんて 煩わしくて
そんなゴキを拾いあげる 若い絵描きの掌
今晩は 素敵なおちびさん ぼくら好く似てる
掌の中しゃかしゃかして 必死で噛みついて
コドクと言う名の逃げ道を
走った 走った 産まれて初めての
優しさが 温もりが まだ信じられなくて
どれだけ逃げたって 変わり者はついてきた
それからゴキは絵描きと 二度目の冬を過ごす
絵描きは友達に名前をやった 黒き幸 Holly Knight
彼のスケッチブックは 殆ど黒づくめ
黒ゴキも初めての友達にくっついて甘えたが ある日
貧しい生活に 倒れる名づけ親
最後の手紙を書くと 彼はこう言った
走って 走って こいつを届けてくれ
夢をみて跳び出した ぼくの帰りを待つ恋人へ
黒ゴキのグロテスクな絵など売れないのに
それでもあんたは俺だけ描いた
それゆえあんたは冷たくなった
手紙は確かに受けとった
雪の降る山道を 黒ゴキは走る
今は亡き親友との約束を 脚に結びつけて
見ろよ 悪魔の使者だ
毒団子を投げる子供
何とでも呼ぶがいいさ 俺には消えない名前があるから
Holly Knight
聖なる夜と呼んでくれた
優しさも温もりも全てつめ込んで 呼んでくれた
忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
この日のために産まれてきたんだろ
どこまでも走るよ
彼は辿りついた 親友の故郷に
恋人の家まであと数キロだ
迷った 転んだ 既に満身創痍だ
立ち上がる間もなく 襲いくる
新聞紙に殺虫剤
負けるか 俺は Holly Knight
千切れそうな脚脚を ひきずり
なお走った 見つけた? どの家だ?
彷徨い走り続けるゴキは
いつまでも どこまでも 恋人の家をめざした
それでも辿りつけなかった
いつまで辿りつけなかった
参考
BUMP OF CHICKEN 『K』
Muriel Rukeyser 『St. Roach』
Franz Kafka 『Das Schloss』
ご自慢の触角をひょこひょこ揺らして 威風堂々と
その姿からゴキは 忌み嫌われていた
闇に溶けるその身体めがけて ゴキジェットが吹きつけられた
コドクには馴れていた むしろ望んでいた
誰かを想いやることなんて 煩わしくて
そんなゴキを拾いあげる 若い絵描きの掌
今晩は 素敵なおちびさん ぼくら好く似てる
掌の中しゃかしゃかして 必死で噛みついて
コドクと言う名の逃げ道を
走った 走った 産まれて初めての
優しさが 温もりが まだ信じられなくて
どれだけ逃げたって 変わり者はついてきた
それからゴキは絵描きと 二度目の冬を過ごす
絵描きは友達に名前をやった 黒き幸 Holly Knight
彼のスケッチブックは 殆ど黒づくめ
黒ゴキも初めての友達にくっついて甘えたが ある日
貧しい生活に 倒れる名づけ親
最後の手紙を書くと 彼はこう言った
走って 走って こいつを届けてくれ
夢をみて跳び出した ぼくの帰りを待つ恋人へ
黒ゴキのグロテスクな絵など売れないのに
それでもあんたは俺だけ描いた
それゆえあんたは冷たくなった
手紙は確かに受けとった
雪の降る山道を 黒ゴキは走る
今は亡き親友との約束を 脚に結びつけて
見ろよ 悪魔の使者だ
毒団子を投げる子供
何とでも呼ぶがいいさ 俺には消えない名前があるから
Holly Knight
聖なる夜と呼んでくれた
優しさも温もりも全てつめ込んで 呼んでくれた
忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
この日のために産まれてきたんだろ
どこまでも走るよ
彼は辿りついた 親友の故郷に
恋人の家まであと数キロだ
迷った 転んだ 既に満身創痍だ
立ち上がる間もなく 襲いくる
新聞紙に殺虫剤
負けるか 俺は Holly Knight
千切れそうな脚脚を ひきずり
なお走った 見つけた? どの家だ?
彷徨い走り続けるゴキは
いつまでも どこまでも 恋人の家をめざした
それでも辿りつけなかった
いつまで辿りつけなかった
参考
BUMP OF CHICKEN 『K』
Muriel Rukeyser 『St. Roach』
Franz Kafka 『Das Schloss』