県庁おもてなし課
○ 県庁おもてなし課
有川 浩 著
角川書店 刊
有川浩がカラフルに描く、史上初、ふるさとに恋する観光小説!
とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員・掛水は、地方振興企画の手始めに、人気作家に観光特使を依頼するが、しかし……!? お役所仕事と民間感覚の狭間で揺れる掛水の奮闘が始まった!?(角川書店ホームページから転載)
こういった地方がんばれ的なお話は、決してけなしてはいけないと思います。
誰もが持っている故郷(ふるさと)は、誰もが応援したいと思っているはずだからです。
大きな震災のあったあとだからこそ、より地方を応援せにゃなりません。
しかしながら、この作品を有川さんが書く必要があったかなという感じがします。
高知県の観光アピールを無理矢理有川ワールドに引きずり込んで、
甘酸っぱい感じのするお話にまとめたってかんじです。
有川さんが自身の出身県を応援したいという気持ちはわからないでもないし、
県としても、県のPRにはもってこいのお話だと思いますので、
お互いの思いも一致してよかったのでしょう。
高知県としては大成功の事業だったことと推察します。
有川さんのネームバリューで読者もそれなりにいたでしょう。
現に私もその一人です。
しかしながら、
有川さんの作品でオススメは何?
と聞かれても、決してオススメ作品の上位には入ってこない作品ですね、これは。
私は、施策論としての話ではなく、物語のおもしろさという観点のみで感想を述べてます。
決してけなしていません。檄を飛ばしているんです。
これが別の作家さんだったら、十分に高評価となったと思いますが、
有川さんだからこその辛口評価です。
我が北海道でもこういう話があればいいのに・・・
でも、もう、2番煎じですね。
・・・何だ、結局、高知県が羨ましいだけじゃん。
(補足)
パンダ誘致論はいいですね![]()
参考になります。
読み易さ:◎
評価(読後感):○
印象:秀
猫と妻と暮らす
蜜姫村
○ 蜜姫村
乾 ルカ 著
角川春樹事務所 刊
変種のアリを追って、東北の山村に迷い込んだ、東京の大学の講師で昆虫学者の山上一郎は、瀧埜上村の仮巣地区の人々に助けられ、命をとりとめた。翌年、山上は医師でもある妻の和子を説得し、一年間のフィールドワークのために、再び仮巣地区を訪れた。この村には医師がいなかったため、和子にとってもそれはやりがいのある仕事に思えたのだった。優しくて、親切な村の人々。だが、何日かその村で生活していくうちに、和子は違和感を覚える。――みんな健康すぎる・・・医師もいないのに・・・。(角川春樹事務所ホームページから転記)
何から書けばいいんだろう・・・。おもしろかったけど、ドッと疲れた作品でした。
読み終わったあとも、少しどよ~んとしてしまいました。
このお話、ミツツボアリから発想が始まってますよね。間違いないと思います。これを人間社会に当てはめて・・・。なかなかのミステリーです。
でもおどろおどろしい中に、人としての信義則というか、人の道も説かれているような感じで、何というか、いずれが悪でいずれが善といった分け方をしてなかったんだなーって、読んだあとに思いました。
優子と大蜂がうまく逃げ切れればハッピーエンド、でもなかったんだなー。
切ないなぁ。
物語の構成としては、もう少し長くても(ページ数が多くても)よかったのではないだろうか。
後半の展開が早すぎるし、状況の十分な説明がないような気がする。
スピード感をだそうとしてのことかもしれないが、蜜姫が自ら下界に降りて、優子と大蜂を捜索する件は、もっと時間をかけて、サスペンス感を引き出してくれてもよかったんじゃないかと、ちょっと残念に思います。
せっかくいい出来なだけに。
それだけ、この物語に引き込まれたということでしょうね。
何が善で何が悪なのかを考えさせられたような気がします。
「何事においても約束は守らないとダメだ。」ということを改めて学びました。
なんだかんだ言ってはいますが、私は気に入りました。
でも、人によって好き嫌いがあるかもしれません。
読み易さ:◎
評価(読後感):◎
印象:優→秀
こちらの事情
○ こちらの事情
森 浩美 著
双葉社 刊
母を介護施設に送り出さなければならない苦悩の息子に、母が言う。「人の手は二つしかない。大事なものができれば、先に持っていたものは手放さなくちゃ」(荷物の順番)。前作「家族の言い訳」で熟年世代に涙を伝わせた著者が放つ、期待の短編集。(双葉社ホームページから転載)
これは泣ける!間違いない!
前作の「家族言い訳」に続く第2作目なのですが、前作よりもこっちの方が断然いいです。
これも、短編集でいろいろな「こちらの事情」の話が綴られています。
どの作品も、本当に「こちらの事情」ねんです。要するにわがままを通す話。
でも、このつらい現代社会を生きていくためには、必要な「事情」ばかりだと思います。
人間誰でも、面倒なことは避けて通りたいです。でも、身内のことは誰もやってくれません。
自分がやらなくてはならないんです。その辺の様々な「事情」を様々な物語で表現してくれています。
グッとくりお話ばかりです。これから読まれる方は、是非、ハンカチのご用意を。
読み易さ:◎
評価:◎(泣)
印象:優
乾杯屋
○ 乾杯屋
三田 完 著
文藝春秋社 刊
芸能界を舞台に己の欲望に翻弄される人々を描く現代の奇譚集
長老として芸能界に重きをなす音楽評論家の鍋島から、業界のパーティーで乾杯の音頭を取る役目「乾杯屋」の株を買わないかと持ちかけられた定年目前のスポーツ新聞記者・才谷。退職金3000万円を注ぎ込んで乾杯屋稼業に乗り出し、順風満帆なスタートを切ったが……。表題作など、6つの短篇を収録。前作『俳風三麗花』が直木賞候補作となり、高い評価を得た著者が、己の欲望や妄念に翻弄される人間の弱さを鋭く描いた、リアリティに満ちた現代の奇譚集です。(文藝春秋社ホームページから抜粋)
仕事がら、いろいろな会合に顔を出すことがありますが、乾杯の音頭取りは、主催者のあいさつや来賓あいさつと同格くらい重要な役割を担うものだと感じます。
それ故に、下手な地位の人を選べないので、主催者側としては頭を悩ますところだと思います。
このストーリーのような「乾杯屋」なる商売(?)というか役割を担う人物が現実にいても、需要があると思います。
私も、それなりの年齢にあったときに、こういった役回りが、しっくり当てはまるような人物になっていたいと思います。
このほかにも、いくつかの短編で構成されていましたが、正直あまり覚えてません。
ですので、書評も高めです。
読み易さ:◎
評価(読後感):◎
印象:優→秀
偉大なる、しゅららぼん
○ 偉大なる、しゅららぼん
万城目 学 著
集英社 刊
高校入学をきっかけに、本家のある琵琶湖の東側に位置する石走に来た涼介。本家・日出家の跡継ぎとして、お城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。ある日、淡十郎は校長の娘に恋をするが、その直後、彼女は日出家のライバルで同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海が好きだと分かる。恋に破れた淡十郎は棗広海ごと棗家をこの街から追い出すと宣言。両家の因縁と三角関係がからみあったとき、力で力を洗う戦いの幕が上がった――! (集英社ホームページから抜粋)
きました万城目さんの新作。期待しておりました。
さすがは万城目さん。万城目ワールド全開でした。
非常にナンセンス(というか非現実)な題材を見事に、通常の世界の中に見事に融合させています。
ストーリーも、スピード感があって、スイスイ読めていく感じでしたね。
前作の「プリンセス・トヨトミ」のような重厚感(?)というよりは、
「鹿男青によし」のようなちょっとおバカ感が漂うといったらよいのでしょうか。
あの「ホルモー」にも通ずる新語「しゅららぼん」を作りだし、もう、言うことなしです。
と、ここまでベタ褒めしましたが、
個人的には「鴨川ホルモー」、「鹿男青によし」を超えたとは言えないと感じたので、
印象は「優→秀」問い売った厳しめの評価とさせていただきます。
万城目さんが書いたのでなければ、間違いなく「優」をつけていたと思います。
『じゃあ「優」でいいじゃん』と思いますが、万城目さんには、それだけ期待しているということです。
最初から最後まで、ジェットコースターのように、ずーっと物語の世界に引き込んでいって欲しいのです。
読み易さ:◎
評価(読後感):◎
印象:優→秀
夏目家順路
○ 夏目家順路
朝倉 かすみ 著
文藝春秋社 刊
夏目清茂74歳、本日脳梗塞により昇天いたしました
74歳のある日、脳梗塞で亡くなったブリキ職人の夏目清茂。葬儀に集う人々のさまざまな人生が、清茂の死を中心にして交錯する
北海道在住のブリキ職人・夏目清茂(74歳)はある夜、脳梗塞で突然昇天する。その死を悼む息子、娘、そしてさまざまな知り合いたち。葬儀の日まで、そして葬儀の際に彼らが思い出す清茂の姿は、機嫌がよく、優しく、世話好きで――謎の部分もあった。清茂の死を中心に、さまざまな人生が追憶と回想の中で交錯する。『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した著者の傑作長篇小説。(文藝春秋社ホームページから抜粋)
しばらくブログを更新していなかったので、「ベッドの下のNADA」の前にこの本を読んでいたことを忘れていました。
タイトルや紹介文からは、一家の大黒柱の死をきっかけにその生涯を負うとともに、家族の絆を描いた物語のように感じますが、そんなことなかったような気がします。
物語前半で、清茂さんが倒れる直前の光景を描いて、あとはあまり印象に残ってませんが、あまりタイトルとつながらないようなストーリーが展開していったように記憶してます。いや、決してそれがおもしろくなかったというわけではないです。
悪くはないのですが、ただ読み終わったあとに、すっきりしない感が残りました。
次回作に期待ですね。
読み易さ:◎
評価(読後感):○
印象:秀
ベッドの下のNADA
○ ベッドの下のNADA
井上 荒野 著
文藝春秋社 刊
結婚5年目。私たちの店は、郊外の古いビルの地下にある
「coffee NADA」のマスター夫婦をめぐる不穏な日常――共有される時間と不在の時間の記憶。現在と過去、変わらぬ日常と秘密の外出
一聴、意味深なタイトルですが、このNADAは喫茶店の名前です。郊外の古いビルの地下にある名刺大ほどの看板しか目印のない「coffee NADA」。この経営者夫婦の子供時代、そして彼らをとりまく人間関係を繊細な筆で語りつむいだ連作短篇集です。1日の殆どを共に過ごす妻と夫が共有する時間の外側には、裏切りや欲望、感傷や死が、不意にその姿を現します。不穏にして変わらぬ日常の底知れなさに酔う、冬の夜の耽読にお薦めの1冊となりました。(文藝春秋社ホームページから抜粋)
いやーおもしろくないわけではなかったのに、時間がかかった。
これもすべて暑い夏のせいだと思う。
荒野さんの書く文章って、どうしてかわからないけど好きなんです。
たとえば、性的表現が生々しいというか、美しく書いてないんですよ。
それが、すごく身近な人のように感じていいんです。
また、世間を真正面から見ていないというか、世の中を少し揶揄しているというか、厭世的とでもいうのか。
表現はよくないかもしれませんが、少しひねくれているかのような書きぶりが、私には心地よい。
私にはそう感じます。
劇的なことは何もない、淡淡と過ぎていく日常を、ただ、描いているだけ。
だけど、そこに読み手を引きつける何か魅力がある。
やはり、表現がうまいんだろうな。
タイトルの付け方も上手だと思う。
書店を歩いていて、なぜか気になる、目の留まるタイトルをつけてくれている。
もう、この辺はセンスとしかいいようがない。
記憶に残る本もいいけれど、記憶に残らないこんな本もいい本の一種だと思います。
読み易さ:◎
評価(読後感):○
印象:秀









