一ヶ月ほど前でしょうか、私の所属する部活動で一週間ほどの長い合宿がありました。私の所属する部活は総勢80名ほどの大規模なもので、同期だけでも20人超。そんな大人数のなかで、一週間ほど一緒に仕事や部活やらして起床を共にしていたら、もちろん見たくないことだって多く見えてきます。その逆に、今まで見落としていたものに光が当たることもある。
どう望ましい人間関係を築いてゆくか。これは多くの人が悩む人間の一生の課題と言ってよいかと思います。どう衝突を避け、どう仲良くし、どう関係を長続きさせるか。ほとんどの一般人はどこかでこの課題にぶつかり、悩み、そしてそれぞれの答えや経験を見出していく。
今日の記事では私なりの、私のこれまでの経験から語る、人間関係のコツ、心得のようなものについて綴りたいと思っています。もちろん、私の意見を本気で捉える必要はありません。ただ私はこうしているというだけで、ただ参考程度に目を通してくれさえすればいい。
人間関係の心得、ひとえにそう言ってもいろいろ答えは分岐するのですが、まず私が一番軸となり、大事だと思っているのは
「面倒くさいことを避けないこと」です。そしてもっと言うなら、
「率先して面倒くさいことを行うこと。」
それがどんなに好戦的な人間であれ、私たちはやっぱりどこかで衝突を避けたいと思っています。仲の良い友達、恋人、家族、そういう人たちから嫌われることはやっぱり避けたい。誰しも嫌われることは望んでいない。
ここでいう「面倒くさいこと」はすごく多義的な意味を含みます。
・例え自分が悪くなかったとしても先に謝ること。誠意を見せること。
・相手が目上の人であれ、忖度せず正しいことを凛然と行うこと。
・話し合い、意見の衝突を避けないこと。相手が親しい友人であれ、面と向かって意見を堂々と吐くこと。
そして、集団を引っ張るリーダーが心得ておかなければいけないこと、それは「不必要な争いを避け、必要な争いで逃げない態度」でしょう。不必要な、しょうもない小競り合いは集団にとって何も利益を及ぼさない。しかし、目先の衝突や不仲を避けて、必要な意見交換の場を避けることは長期的にはチームに悪影響を及ぼします。リーダーというのはいつだって、眼の前のぬかるみを踏みしめていく度量と勇気を持たなければならない。
私は現代人というのは歴史をもっと学ぶべきだと思います。特に明治維新の偉人たちの生き様を学ぶことができれば、今生きている自分の愚かさに誰しもがハッとする。勝海舟と西郷隆盛が成功させた江戸城無血開城は、そんなリーダー、武士道の根幹的な精神から成り立ったものです。彼らの生きるか死ぬかというところから生まれる仁義、正義は到底私たち現代人の及ぶところではない。
そしてもう一つ、「先にごめんなさいと言える人間になること」です。私は中学卒業の際、中学校の恩師にこう書かれた手紙を頂きました。
「私が息子に望むことはただ1つ、先にごめんなさい。と言える人間になること」
先に謝れる人間。例え自分が悪くなくとも、頭を下げて他者を引き立てることのできる人間性。そこには私たちが目指すべき精神の多くが含まれていると思います。目明千人、目暗千人、負けるが勝ち、です。例え自分が一ミリも悪くなかったって、負けていなかったって、参りました、僕が悪かったですと膝をつき心を畳む余裕を持とうではありませんか。何も衝突ばかりを望む人間が英雄というわけではないのです。謝られた人間が、「こんなに謝らせて申し訳ない」と思うくらいに頭を下げようじゃありませんか。
切り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ
一足進めば そこは極楽
宮本武蔵のこの言葉は、勇気、そして武士道というものの真髄を語っています。勇気を持つこと、それは軒並みの小学生が使う浅い言葉のように見えて、本当は私たち大人が持つべき心意気でしかあり得ない。
私は高校3年生の時の国語で「他者性」というものについて学ぶ機会が多くありました。私たちは、どこまでいっても人と人との複雑な網の目のなかで生きています。そこから逃れようなんてことは野暮です。そしてアイデンティティとは、「私自身」とは、そんな他者との関係性の中で生まれてくるものです。この人が好きな私、この食べ物が嫌いな私、この人とこういう関係を持つ私、そういう細かい関係が塵みたいに積もって確固たる「私」が出来上がってゆく。
そしてだからこそ、私たちは「他者性」というものを疎かにしてはいけない。面倒くさい対人関係を避け、ネットにこもったままのあなたはいつまでも迷子のままです。あなたの周りにいる人間、あなたの仲の良い人間、あなたと仲の悪い人間、それらすべてがあなた自身の鏡だと思って、思いやりを持って接することです。ほんの何畳かの一間の中で、静坐しお互いの額を向き合わせて仁義の為に語り合った、いつしかの西郷隆盛、勝海舟の気持ちにさえなれば、あなたの眼の前の悩み事など、ほんの戯言にしか過ぎないでしょう。