生成AIに仕上げを任せた履歴書を、Z世代の面接官が無言でスクロールしていた。僕は顔で笑って心で泣いていた。「サブスク地獄ですね、経歴」と彼は言った。転職10回目の履歴をそう表現されたのは初めてだった。


「で、志望動機は?」


「VIO脱毛の予約が取れなくて……」


「はい?」


間違えた。リモートワークに慣れすぎて、脳内会話と外部音声が混線しているのだ。ゆる起業を目指していたはずが、気づけばメタバース内でキノコを売っていた。現実世界の通帳はすでに残高表示がグレーだ。


「あなた、誹謗中傷対策、ちゃんとしてますか?」

それも質問なのか。僕の中のマインドフルネスが崩壊した。


面接の帰り道、自販機の前で立ち止まる。お茶じゃない、コーヒーも違う。僕は迷いなく、110円の透明なボトルを選んだ。炭酸水。無味、無臭、無限の可能性。


シュッという音が、今日唯一の希望の音だった。


部屋に帰ると、また無限スクロールが始まる。タイパ重視の動画たちが、僕の集中力を破壊しながら流れていく。音楽はすでにサジェスト任せ。好きなものなんて、もはやない。


「でも……炭酸水は裏切らないよな」


僕はひとりごちて、ボトルを傾ける。喉に刺さるような感触。泡の数だけ、選ばなかった人生が弾けて消えるような気がした。

外はもう暗い。画面には「生成AIでポエムを書いてみた」という動画が再生されている。


「これ、俺のことじゃん」


ひとつ息を吐いて、僕はまた応募フォームを開く。新しい仕事の条件はただひとつ――炭酸水の支給があるかどうか。それだけだ。