信じられないほどの大量の鮮血が溢れ出して吹き荒れている中、チェーンソーを手にした俺が歩いている。ニヤニヤ笑いながら、こう呟いていた。


「俺にチョコくれる奴はいないのか。この広い日本でええ。いないのか」


血柱の向こうに、グラビア女優たちが水着姿で恐怖に震えて待ち構えている。俺は、ホップ、ステップ、ジャンプの要領で飛んだ。


「死ねえええやあ!」


ザクリザクリと沢山の女の子の首や細いウエストがもげる中で、一人の女性がチョコを手にしていたではないか。俺はそいつの手からチョコをもぎ取る。


「まさか、これは俺にくれるのか」

「あなたみたいな殺人鬼がファンなんです」

「ありがとう」


 食べた途端、それが青酸カリ入りだったことがわかる。俺は口から白い泡を吐いた。


「はぐおおおお」

「あたいが好きなわけないだろ。そこで死んでいるのはみんなあたいの親戚だよ」

「そうか。じゃあ。七五三だったんだな」

「ああ。そうだよ。みんな楽しくやっていたのに」

「ごめんな」

「うるせー。死ね」


というと、女は蹴り付けるが、俺はチェーンソーで、その足をきりさいた。


「がぎゃー」

「人を呪わば穴二つだよ」

「ぬがおおおお」


しかし、俺の体はもってくれず、三回転くらい捻れて、俺は鮮血を吐いて倒れた。




 気がつくと、俺は病室に寝ていた。看護婦たちが俺を囲んでいる。


「あれ?どうしたんだ」

「あ、気が付きましたね」

「俺は人を殺している夢を見ていたんだ」

「そうなんですか」

「ああ」


ベッドの脇にはチェーンソーが置いてあった。


「あれ?俺の仕事道具がある」

「そうですよ。あなたのバレンタインデーへの怒りが、異世界を作り上げたのです」

「ここは、俺の作り上げた異世界だというのか」

「ええ。そうです。あなたは、ここで無限に女性を殺し続けないといけない。女性はそれでも絶対にチョコをあげません。たまにくれてもそれはほとんどの確率が青酸カリ入りです」

「待ってくれ。ほとんどということは、ひょっとすると、レアガチャ的な確率で本物のチョコをくれることがあるのか」

「かもしれないです」

「あっひょー」


と、俺はベットから飛び出して、チェーンソーを振り続けた。すると、ある女性がチョコを渡してきたので、中身も見ずに食べる。


「ほ、本物だぎゃ!!!」


俺の頭が裂ける。全ての衝動が止んで静かになったのだ。




 目を覚ますと、また、俺は病室にいた。美人な看護婦が俺を見ている。


「どうやら。夢治療。うまく行ったみたいですね」

「あれは、あの夢は治療プログラムだったのか」

「ええ。そうです。そして、あなたは一ヶ月、寝ていました。今はホワイトデイです」

「あぐはっ」


 病室のドアが開いて、チェーンソーを持った十人近くの地味な女が俺に向かって駆けてくる。美人の看護婦は笑顔でこういった。


「モテモテね」

「ビジュー!」


 今度の鮮血は俺の番だ……。