三菱一号館美術館で「冷たい炎の画家 ヴァロットン展」を観た! | とんとん・にっき

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三菱一号館美術館で「冷たい炎の画家 ヴァロットン展」を観てきました。


2014年3月6日に開催された「ザ・ビューティフル―英国の唯美主義1860-1900」の、青い日記帳×「ザ・ビューティフル」展“ブロガー・特別内覧会”で、初めてヴァロットンの名を知りました。その時の「ヴァロットン展」のチラシには、以下のようにありました。


スイスで生まれ、19世紀末のパリで活躍したナビ派の画家、フェリックス・ヴァットロンの日本初個展。油彩画とともに、白と黒のコントラストの木版画によって、20世紀以降の芸術に影響を及ぼしました。独特の市展と多様な表現を持つヴァットロン作品は、斬新で現代的であると同時に、まるで解けない謎のように重層的で、観る者に様々な感情を抱かせます。本展は、パリのオルセー美術館およびローザンヌのフェリックス・ヴァットロン財団の監修による国際展覧会として世界巡回を経たのち、2014年という日・スイス国交樹立150周年の記念すべき年に当館にて開催します。当館所蔵のヴァロットンのグラフィック・コレクションを含む約120点の油彩・版画により、冷淡な表情の裏に炎のような情熱を秘めた芸術家像を浮かび上がらせます。


今年の4月末、フランスへ8日間、行ってきました。最終日の4月29日(火)、オルセー美術館へ行くことができました。ヴァロットンの作品は、「ボール」など、まとめて4点ほど観ることができました。その時に購入した図録には、「月光」(1895年頃)、「シャトレ劇場の4階桟敷」(1895年頃)、「ボール」、別称「公園の片隅、ボール遊びをする子供」(1899年)、「夕食、ランプの効果」(1899年)が載っています。図録に載っているヴァロットの解説を、以下に載せておきます。


フェリックス・ヴァロットン「外国人のナビ」

ローザンヌに生まれたフェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は1882年にパリに出て、アカデミー・ジュリアンに入る。1885年、彼は始めて絵画を発表し、「理性の本」の作成を始める。これは彼の作品を系統的に列挙したもので、死ぬまで彼はこれを続けることになる。生活費を得るために彼は絵画修復家になった。彼はトゥールーズ・ロートレックやヴュイヤールと知り合い、木版画の制作を始め、フランスはじめ外国の雑誌の編集者からも注文を受けるようになる。やがて彼は「ラ・ルヴュ・ブランシュ」誌の主要なイラストレーターになった。この雑誌の経営者はナタンソン兄弟で、彼らはこれを前衛芸術発表の場にしようと考えた。これを機にヴァロットンは広くナビ派の面々と知り合いになり、1892年にその運動に加わった。彼が特に親しかったのはヴュイヤールとボナールである。技術的に新しい試みを多く行った「外国人のナビ」はまた、絵画と同じくらい木版画も制作しており、油絵には木版の影響がかなり見られる。彼は厳しい目で主題を扱い、往々にして不安感を与えるほどフォルムを極限まで単純化し、面をマス(塊)として扱い、色の広がりで量感を示している。「彼は辛辣さを楽しむ」とジュール・ルナールはその「日記」に記している。「ボール」では、影を先行させながら、小さな赤いボールを追って走る子供のシルエットが、地平線もなく不安を感じさせる広い空間の中にポツンと小さく描かれている。「シャトレ劇場の4階桟敷」では、ほとんど空席の観客席がやはり空白感を与えており、遠近法もデフォルメされている。1899年に彼はアレクサンドル・ベルネームという大画商の娘と結婚し、それまで辛辣に批判し続けていたブルジョワ階級の仲間入りすることになる。こうして彼の絵画はナビ派から離れ、冷たく風変わりな写実主義へと変わってゆく。

(「オルセー美術館 絵画鑑賞の手引き」より)


その後、日仏会館・フランス事務所・日本研究センターで「ヴァロットン―冷たい炎の画家」に関連した講演があるというので、行ってきました。講師は、フェリックス・ヴァロットン財団名誉学芸員のマリナ・デュクレイさんでした。たまたまその日は「ヴァロットン展」のオープニングが行われた次の日、三菱一号館の高橋館長は、初めの挨拶で次のように話されました。


ヴァロットンはナビ派と共に活躍していたが、なぜか忘れられていった画家。この展覧会はヴァロットンの日本初の回顧展。オルセー美術館およびフェリックス・ヴァロットン財団の監修による国際レベルの展覧会として、グラン・パレ(フランス・パリ)、ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)を巡回。パリでは31万人が熱狂し、評価がガラッと変わった画家。マリナさんはローザンヌのヴァロットン財団で、展覧会に関わってきた人、マリナさんのカタログは、書籍のグランプリを取った。


マリナさんの講演要旨は、下記の記事に書いておきましたのでそちらを参照してください。

日仏会館で「ヴァロットン―冷たい炎の画家」を聞く!


2010年5月に国立新美術館で開催された「オルセー美術館展2010 ポスト印象派」では、ヴァロットンの「ボール(ボールで遊ぶ子供のいる公園)」、「化粧台の前のミシア」、そして「自画像」が出ていました。また2010年8月に世田谷美術館で開催された「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」では、ヴァロットンの「5人画家」、「日没、オレンジ色の空」、「浴女のいる風景」、「水差しとキズイセン」、そして彫刻「肌着を持つ女」が出ていました。いま図録を見てヴァロットンの作品が出ていたのがわかりましたが、その時はまったくヴァロットンの作品のことは気にも留めませんでした。お恥ずかしい。


今回の「冷たい炎の画家 ヴァロットン展」の見どころは、チラシによると以下の3点です。


1 パリで31万人が熱狂。知られざる画家、日本発の回顧展。

本展は、日本発のヴァロットンの回顧展です。オルセー美術館およびフェリックス・ヴァロットン財団の監修による国際レベルの展覧会として、グラン・パレ(フランス、パリ)、ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)を巡回。そして2014年という日本・スイス国交樹立150周年の記念すべき年に、当館において開催します。

2 解けない謎のように重層的な作品群

独特の視点と多様な表現を持つヴァロットンの作品は、100年以上たった今でも斬新で現代的です。胸騒ぎのする風景、不安な室内、クールなエロティシズム・・・。まるで解けない謎のように重層的な彼の作品は、観る者に様々な感情を抱かせます。本展では約60点の油彩と、約60点の版画の計約120点を展観します。

3 当館のグラフィックコレクションから選りすぐりの約60点を公開

当館はヴァロットンの版画作品を187点所蔵しています。ヴァロットンの版画作品は世界中に点在し、まとめて所蔵している美術館やコレクターがほとんどありません。本店では、「アンティミテ」「楽器」「これが戦争だ」など、希少性の高い連作の揃いを含む重要な作品をお楽しみいただけます。


展覧会の構成は、以下の通りです。


1章 線の純粋さと理想主義

2章 平坦な空間表現

3章 抑圧と嘘

4章 「黒い染みが生む悲痛な激しさ」

5章 冷たいエロティシズム

6章 マティエールの豊かさ

7章 神話と戦争



1章 線の純粋さと理想主義




2章 平坦な空間表現






3章 抑圧と嘘





4章 「黒い染みが生む悲痛な激しさ」



5章 冷たいエロティシズム



7章 神話と戦争


「冷たい炎の画家 ヴァロットン展」

スイスで生まれ、パリを生きた。

2つの感性をあわせもつ「外国人のナビ」。

フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、スイス・ローザンヌに生まれ、16歳でフランスに移住し、パリで活躍した画家です。白と黒のみの鮮烈なコントラストで表現した革新的な木版画によって、ヨーロッパにおける創作版画としての木版画復興の立役者となりました。一方、パリでボナールやヴュイヤールなどナビ派の仲間たちと交流し、「外国人のナビ」と呼ばれて数多くの油彩画を残したほか、挿絵、批評、演劇まで幅広い芸術の分野で活動し、20世紀以降の様々な芸術流派にも影響を及ぼした。ヴァロットンの芸術は、単純な線描による正確なデッサンや、浮世絵や写真から影響を受けた大胆なフレーミングと平坦な色面による画面構成、洗練された色彩表現などが特徴です。しかし、その研ぎ澄まされた観察眼を通して描かれた世界には、神秘的な虚構性や抑圧された暴力性が見え隠れし、その多面性と現代性が観る者を魅了します。本展では、肖像画や風景画、毒のあるユーモアが漂う風刺画、男女の怪しい緊張関係を暗示する室内が、冷ややかなエロスをまとう裸婦像、そして神話や戦争を主題にした作品など、個性豊かな作品群をテーマにそって展観し、冷淡な表現の裏に炎のような情熱を秘めた芸術家像を浮かび上がらせます。


「三菱一号館美術館」ホームページ


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