早速行き詰まってたりするんですがとりあえず書いたものをちょこちょこ置いていこうと思いますのよ。
キャラクターとか設定とかもそのうちまとめて上げます。
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カツーン…カツーン……。
薄暗い建物にヒールの足音だけが響き渡る。懐中電灯を手にした女は、長く長く続く廊下にある全ての扉を開けて中を見渡しては鍵を締め、という一連の動作を機械的にこなしていた。
カツーン…カツーン……ガラン。
つま先への衝撃と共になにか重い金属の転がる音がして、女はその場にしゃがみこんで音の主を探した。
「そん、な……!?」
懐中電灯が照らし出した大げさな錠前を見て息を飲み込んだ後、すぐに目の前の扉へ灯りを移し、鍵の外れた無防備な扉を勢いよく開け放つ。
「門が……どうして……」
煌々と光り輝く馬鹿でかい扉は、力なくその場にへたりこむ女をあざ笑うかのようにぽっかりと大きな口を開けていた。
「~♪」
昨晩やっていたラブコメドラマの主題歌を口ずさみながら、時折オーブンを覗き込む。今にもこぼれだしそうなほどに膨らんだカップケーキがお行儀よく並んで回っているさまは、鼻歌と相まってさながらメリーゴーラウンドのようだった。
ブゥゥンとうなり続けていたオーブンは「チン」という軽快な合図と共にぴたりと止まり、それに釣られて鼻歌も止んだ。
オーブンを開くとたちまち辺りは甘い熱気に包まれる。
蒸気ごと思い切り吸い込んで、鉄板をテーブルに上げた後、小さく「よし」と呟いてサキは調理室を出た。
図書室で待機していた親友を連れ、元来た渡り廊下をゆく。
「今日は何読んでたの?」
サキの問いかけに、赤髪ショートでボーイッシュな少女、ナオがムッとした様子で続ける。
「本読む暇なかった。数学のハゲが夏休みの宿題かってくらい課題出しやがって。確かにちょっと学校休んでたけどさ、それくらいでこんなに課題出すことないだろって感じ」
「ちょっとって……。ナオと会うの、かれこれ一ヶ月ぶりくらいだよ」
「もう六月だもんね。でもサボりじゃないよ。五月病は立派な病気」
なんて雑談を交わしながら部室棟に入ると、既に廊下中に甘い香りが充満していた。匂いを嗅ぎつけた美術部員たちが美術室から顔を出し、「今日は何作ったの?」とサキに声をかけていく。今日はカップケーキだよと、サキは笑顔で答えてやる。
サキたち料理研究部の部室である調理室は、部室棟2階にある。すぐそばには音楽室があり、放課後は大抵吹奏楽部が活動しているが、今日は静かだ。ナオが騒がしいのを嫌うから、料理研の活動日は吹奏楽部が休みの日を狙って設定してある。
「久々の活動なのに凝ったもの作れなくてごめんね」
「何でもいいよ。早くサキのお菓子食べたーい」
サキからひょいっと鍵を奪い取り、調理室へ押し入ったナオの勢いがすぐに衰える。
「……犬?」
テーブルの上、本来であればそこにサキお手製のカップケーキが置いてあっただろう場所で、ナオの方にお尻を向けてうごめく犬のような何かがいた。遅れて教室に入ってきたサキは言葉を失い、顔を引きつらせる。
「犬、には、見えなくない……?」
何の変哲もないカップケーキが彼女らを非日常に導くことになるなんて。サキには予想できなかった。いや、予想しようもなかったのだ。