kiyokoのブログ

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私が今までやってきたのは、コツコツ真面目にと
常に明るく、美味しいものを提供するということでした。


なので、その男のやり方は私から見れば「詐欺」に近い
と感じていました。


ただ、昔からある「蕎麦やの出前持ちの話」

店が暇になったら、とにかく中味が「空」でも
出前持ちを持って、ウロウロ忙しそうにしてたら
見ているお客さんが、あの店流行っていそうだな・・・と
注文が入ってくる話。


今は人気のドラックチェーン「マツモトキヨシ」も

小さな薬やさんだったころ、店の前にサルを飼って
客寄せをしたり、さも在庫があるように
大量の薬の空箱を展示して
いかにも、取引が大きいという演出をしていた。


なんて話を思い出すと、今回のストーリーも
なんら変わらないような、気もしてきました。


すでに、常連客がドンドン増えてきたら
今度は、次なる手段を考え 男は行動しました。


実は、男は東京でとんかつを修行してたときに
ある店が、「チョコかつ」を看板商品にしていたと
話をしてて、うちの店でも作ることにしていました。

でも当時は、「チョコかつ」なんてメニューに入れても

怖がって、誰も注文なんてしてくれません。


それどころか、美味しいとんかつのイメージが壊れるから
やめた方がいい!という声ばかり。


そんな中、男は今度はチョコかつを持って 

地元の某テレビ局に持参したのです。


それも、アポなし・・・いきなりです。


今だったら、テレビ局に勝手に入ることはできないのですが


当時は、そんなことをする人が誰もいなく・・・・


某テレビ局の、報道まで ドンドン入っていき

「清まるです!よかったら、これ食べてください」と

大胆に宣伝してきたのです。


「できれば、何かの番組で取り上げていただければ、光栄です」


なんて、言葉も言ったとのこと。


そのテレビ局の報道担当者たちは、怪訝そうな顔をして


「出て行ってください」と、追い払われた始末でした。



ところが、ある日 そのテレビ局から電話がかかりました。


「清まるさん、先日のチョコかつ 取り上げてもいいですか?

時間は、少しですが・・・面白いと思って」


私は、びっくりしました。


夢にまで見た、テレビ出演が いともあっさり決定です。


とはいっても、私が出演したいという夢ではなく

せっかく店を出したら、テレビに出られるくらいになりたいと

いう小さな夢です。今回も、「チョコかつ」を紹介という

十秒くらいの、ほんの小さな宣伝でした。




実は、お好み焼きのときには

テレビ局に取り上げてもらいたがために、

何度も何度も、アンケートを出して

テレビ局にアタックしていましたが、

見向きをされることはありませんでした。


その後、テレビで小さく取り上げてもらえたお陰で

うちの店は、予想もしなかった方向へと快進撃を始めて

行きました。


世の中は、自分が考えていることだけが すべてではない。


私は、その後イメージしたこともなかった現実をドンドン

経験するようになってしまいました。


お好み焼きを5年以上もやっていたところに

いくら美味しいとんかつを始めたところで

お客様に、知ってもらうのには時間がかかります。

1番の心配は、仕入れした1本4~5キロはある

ロース肉が、古くならないうちに捌けるがどうかでした。


お好み焼きだったら、100グラム単位で仕入れることも


出来るし、足りなくなったらスーパーで買い足すことも


出来ます。でも、美味しいとんかつには美味しいロース肉


を使うことが、大前提でした。


リニューアルオープンしても、来るお客様来るお客様全員に


「とんかつも始めました。美味しいので、ぜひ1度食べてみてください」


と、言っても言っても・・・・反応は、今ひとつ。


私は、「やっぱりね。いくら腕がよくっても信頼なんて、すぐに


できっこないじゃない。」と、売れない心配をよそに


心の隅では、ちょっと安心する気持ちもありました。


私は、実家が代々続いた 酒店で「信用や、信頼」は


長い時間をかけてつくるもの・・・と、教わってきました。


なので、その男が自信たっぷりに自分のとんかつが売れるという


態度が、少し気に入らなかったのだと思います。


「ね、やっぱり簡単じゃないでしょ。昨日だって、今日だって1人前も

売れないじゃない。たぶん、無理よ。肉のロスが恐いから、やっぱり

やめようよ。あなたには、無理。」


そんな話をしていたら、一組の男女が店に入ってきて お好み焼きを注文しました。


その男は、私に耳打ちしてきました。


「お好み焼きを焼いてる時間、少し手が空くから 僕の携帯に電話をしてくれないか?


話は、しなくていいから。僕がその電話に出たら、掛けた電話は切って普通に仕事をして」


なんか、意味はわからなかったけど、電話をかけるだけなら・・・と思い、掛けてみました。


ルルルルルル・・・・男の電話のボリュームは、かなり大きく店内を響きました。


「はい、とんかつのご注文ですね。いつもありがとうございます。いえいえ、

肉がいいだけですから。本当ですか?ハハハハ・・・・・。


はい、十人前ですね。ありがとうございます。大丈夫です。では、


ご予約の時間に作っておきますね。」


あれ?私が掛けた電話は、切ったはずなのに 誰と話してるんだろう?



すると、お好み焼きを注文したお客様が 突然話しかけてきました。


「とんかつもやってるの?へぇ~、どこで修行したの?」


「なんか、美味しそうね。今度注文してみるから」


私は、拍子抜けしました。その男が、一言二言しゃべっただけで、お客様は


とんかつに興味を持ち始めました。


それからは、男の快進撃です。


その男は、お好み焼きのお客様が来るたびに、私に電話を掛けさせました。


私も、やっとカラクリに気がつきましたが


この電話のお陰で、お客様がとんかつを知って、食べたお客様が


「美味しかった」と、お礼を言ってくれている。


悪いことだと思っていたけど、実際は誰も怒ってはいない。



気がつけば、お好み焼きのお客様を上回る、常連様がドンドン増えていきました。


わずか、数ヶ月の出来事でした。


その男のやり方は、真面目にコツコツやってきた私には


想像もしなかったことでした。その後、男は次なる行動に出ました。


次回は、その行動を書いてみますね。

その後和解したミシンの営業マンは、毎日のように顔を出し常連客へと

変わっていきました。


ただ、9坪の小さなお店で対面式のお店だと常連様は

家族のように変化をしてしまいます。


仕事が終わって来店されるので、「お疲れ様」「お帰りなさい」と

店側の私が接すると、「ただいま」と返ってくるようになり・・・

そのうち、メイン商品の「お好み焼き」に飽きてくると

あれが食べたい、これが飲みたい、この店にも置いて欲しいと要望も

だんだんエスカレートしていきます。


お客様の要望は、出来る範囲でお応えするようにはしていますが

すべて出来るというわけでは、ありません。


1、在庫をたくさん抱えなければならない商品。

  

2、仕入れた材料の賞味期限が短いもの。


3、資金がかかりすぎる、サービスの提案。


10人いらしたら、みなさんの意見や嗜好は違うものです。


なので、私はお客様の要望が出たときには とりあえず話しを聞いて

1~3に問題がなく、なお且つお店が発展するようなら取り入れて

いくようにしていました。


ある日、その営業マンはぽつり・・・・と、私に言いました。


「とんかつ屋したら、いいのに・・・・」


意味がわかりません。なんで、とんかつ屋なの?あなたミシン屋なのに


飲食なんて、わからないでしょう?


「ごはんも、炊き方が悪いし・・・お好み焼きは時間がかかりすぎる」


せっかく和解した、営業マンにまたもや勃発しそうな状況になりそうです。


ただ、意味を確かめてからでも遅くないので とりあえず営業マンに聞きました。


どういう意味ですか?私だって、とんかつくらい作れます。


それに、とんかつを出しているレストランなんて、たくさんあるから


とんかつの方がいいという意味がわかりません。


すると、営業マンはニコニコして こう言いました。


「もし、よかったら僕に調理をさせてくれる?」


「お米も、ここに今あるのでいいし・・・・材料も・・・」


そういうと、勝手に冷蔵庫を開けて食材を確認したら


「とりあえず、ハンバーグでも作るから」と、狭い厨房に入ってきました。



ちょ、ちょ・・・・ちょっと待ってください。その営業マンは100キロも


超えてるかと思われる巨漢な身体をねじ込んで、お米を洗い始めました。


そして、今度は残り物のひき肉を調理・・・


私から見て、どうやっても同じにしか見えないのに、その営業マンの

自信たっぷりの態度に、もし大したことなかったら二度と信用しないと

心に決めて、とりあえず料理の完成を見届けることにしました。



「どうぞ」その営業マンは、うちのお好み焼きの皿にハンバーグを盛り付け

ご飯を茶碗に、つぎました。


どう見ても、普通のハンバーグとごはんです。


私は、先にごはんを一口食べました。。。。


あれ?いつもと違う。もっちり、弾力があり よく見ると艶が違います。


ハンバーグは、普通の合い挽きでしたが これまたしっとりとした仕上がりで


上等な肉のような、歯ざわりと滑らかな口当たりです。



私は、ちょっとゾクっとしました。


「あなた、何者なの?うちの店を乗っ取るつもり・・・?」


「こんな料理を作れて、素人なわけないじゃない」


「しかも、とんかつとは全然関係ない」



営業マンは、私がじょじょにヒートアップするのを見ながら

ニコニコしています。



「ごめん、ごめん、実は僕松山市に来るまで生まれも育ちも東京で ずっととんかつ屋

にいたんだ。なので、調理は慣れてるし材料の扱いも知ってる。東京には、美味しい

とんかつ屋がたくさんあるけど、松山には少ないから とんかつやれば、お客様が

喜ぶんじゃないかと思ったんだよ。もし、よかったら本格的なとんかつの揚げ方、肉の

カット教えるけど・・・どう?あ、給料いらないから僕を雇ってよ。必ず繁盛店に

するから。」


その後、その営業マンはとんかつも披露。文句のつけようのない腕です。


その営業マンの口は、信じていなかったけれど とんかつの味だけは本物と確信しました。


それから、とりあえずはとんかつ屋も兼業することにしました。

最初は、設備投資もできないからフライパン1個、肉の筋きり、牛刀、ロース肉1本を

仕入れてのスタートです。



でも、いきなり兼業しても お客様は「お好み焼き屋」と思ってるから


メニューに「とんかつ始めました」なんて書いても、誰も注文してもらえません。



その営業マンは、次なる行動を始めました。



今となっては、私には絶対できなかった巨悪の手口を使い、とんかつファンを

じょじょに増やしていきました。


その手口は、今でも不本意だと感じています。


ただ、それがあったから美味しいとんかつを知ってもらったのも事実。



次回は、その手口について書いていきますね。