本文は、４月２８日の日経新聞の要旨及びそれに関するコメントです

要旨

茂木敏充外相が27日の閣議に報告した2021年版の外交青書は中国を抑止していく方針を鮮明にした。20年版にあった「『日中新時代』に向けて日中関係を新たな段階に押し上げていく」など関係強化の文言は削除し「安全保障上の強い懸念」と初めて記した。こうした背景には中国の領海侵入により尖閣諸島周辺の緊迫が高まる現実がある。

中国関係は特に大きく変わっている。まず、中国の軍拡や領海侵入に関して「強い懸念」と表現を強めた。また、初めて「中国海警船舶の活動はそもそも国際法違反」と批判した。さらに、中国海警局を軍に準ずる組織にする海警法の施行は「日本の深刻な懸念を中国側に引き続きしっかり伝えていく」と強調した。

コメント

・外交青書は日本外交の立ち位置を示し、直近の国際情勢と日本外交の動きを記録するために外務省が毎年作成するものだ。21年版は初めて米中関係を独立した項目で取り上げるなど、中国を強く意識した内容になった。（Fig.１）

Fig.１　２０２１年版外交青書の要点

・中国については、上記以外に、新疆ウイグル自治区の人権状況にも「深刻な懸念」と明記した。中国政府が香港の統制を強める香港国家安全維持法は「日本を含む国際社会からたびたび重大な懸念が示された」と言及した。

・韓国については「重要な隣国であり北朝鮮への対応を始め地域の安定には日韓、日米韓の連携が不可欠だ」と記し、従来の見解をほぼ維持した。その一方で、元従軍慰安婦問題で韓国の地裁が日本政府に賠償を言い渡した判決は「国際法と日韓両国間の合意に明らかに反するもので断じて受け入れられない」と訴えている。

・竹島については日本固有の領土と明記されている。これに対して韓国側からは同日中に抗議の声が上がっている。

・北朝鮮は拉致問題を引き続き「最重要課題」とし、核・ミサイルの問題とともに包括的に取り組むと従来通りのスタンスを維持した。

・ロシアについても「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続き交渉に粘り強く取り組む」と従来通りのスタンスを維持した。

政府、外交青書にて中国に対して「安全保障上の懸念」と初めて明記―関係強化の文言削除―