転がるように二人で入ったアパートの玄関の先が

 青く光り輝いていた。

 その廊下幅いっぱいにステンレスの洗面台が、深夜の静けさと

 寒々とした月の光で青く光る。

  ・・ 静かにね、、・・・

 志保の後から入ったその部屋にも真冬の冷たい光が差し込んでいる。

 すべての畳が見渡せる、何もない部屋だった、窓のカーテンさえも無く

 すぐ裏山の雪の白さと木々の黒さが見えるだけ。

  ・・何も無いの、、でも広いでしょう?

 天井から下がった照明のスイッチを入れながら志保が言う

  ・・ストーブは?

  ・・帰ったらね、すぐ布団にもぐって本読んでるからいらないの、、

 押し入れから小さな電気コンロと薬缶を取り出して

  ・・これでも少しは温まれるし、、お茶入れるね。

 その光景の色も幸せの薄い色だった、そんな感傷に陥らないよう

 俺の頭は次の日曜日をどうしたら休めるか仕事の予定と残りの

 図面の枚数を考えていた。

  ・・ これはね、今度の休みに映画行くのに買ったの!初めてこんなの

     買っちゃった、見るもの決まった?

 カーテンや石油ストーブとかを買いに行こうと思うが、当日まで言わないでおこうと思う。

 雪道を二人ほつれあいながら歩いてきて俺の酔いも冷めていた、二日後までに描く

 図面を頭の中で時間数を計算すると今日から書かないと間に合わない。

 壁にぶら下がった一枚の真新しいワンピース、紺色の濃淡が月の光を思い出させる。

  ・・日曜まで決めておくから、、帰るね。

 未だ夜の世界に入ったばかりの危なっかしさを醸し出してる志保の後ろ姿を見ながら

 廊下に出ると又吹雪始めたらしい、黒い中に玄関の明かりだけが寒そうに付いていた。

 

    

   

 この曲は俺が志保に出会う前の年の発売だそうだが、数十年ぶりに聞くとなんだか

 馬鹿のように仕事ばかりして、真面目に遊んでた時代を思い出す。

 なんて、こんな昔のことを想い出しても一人で静かに飲める酒場も無くなってしまった

 ススキのは分からん原語の飛び交う街と化してしまった。

 静かな地下の小さなスナックに居た志保ちゃんを想い出しても偲んで飲める店も

 今いる街にはありそうもないな・・・