はい、これまた大定番のモンスターが二人登場です。

 前述のストーカー作「ドラキュラ」よりずっと早く発表されたこの二作にはある奇妙な伝説があります。
 
 1816年、詩人のシェリーと愛人のメアリ・ゴドウィン、詩人のバイロン、バイロンの主治医であったジョン・ポリドリはスイスのレマン湖畔にある別荘に来ていました。
 しかし、あいにくの天候不順で雨に降りこめられた彼らは、退屈しのぎに怪談話を始めました。
 人間退屈すると怖い話をしたがるのは洋の東西を問わないようですね。
 怪談話は次第に盛り上がり、神経質なシェリーなどは一時錯乱状態になったとも言われています。そこでバイロンがそれぞれ一篇づつ怪奇な話を書いてみようと提案しました。
 そして生まれたのがこの二つの作品だというのです。
  この夜のあと、なぜか彼らに不幸が次々と襲いかかりました。シェリーの本妻はこの年自殺し、メアリ・ゴドウィンはシェリーと結婚します。しかし、メアリの子供たちは次々と夭折。
 このあと数年でポリドリは自殺。次にシェリーは事故死、バイロンは病死してしまいます。
 「ディオダディ荘の怪談談義」と呼ばれる有名なエピソードです。

 ジョン・ポリドリの短編「吸血鬼」はバイロンのアイデアがもとになったと言われていますが、出版社は当時すでに有名な詩人であったバイロン作として本を出しました。著作権などなかった昔の話です。
 ロンドンの社交界でオーブレー青年はルスヴン卿という貴族と知り合いになり、共に大陸に旅行することになります。しかし、ルスヴン卿には奇妙な影がありました。彼にかかわるものは皆破滅してゆくのです。
 吸血鬼の伝承のあるギリシャの辺境でルスヴン卿は山賊に撃たれて倒れます。彼は死ぬ間際、オーブリーに「一年と一日、自分の死を秘密にしてほしい」と言い、オーブリーは誓約を交わしてしまいます。
 ロンドンに戻ったオーブリーが出合ったのは…。死んだはずのルスヴン卿の姿でした!

 メアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」についてはみなさんもよくご存じだと思います。奇怪な姿の人造人間が恐怖を巻き起こします。
 時代はちょうど近代の科学が発達し始めたころで、ガルヴァーニの生体電気の発見などが話題になっていました。
 科学者フランケンシュタイン博士は人工的に生命を作り出すことを研究し、死体をつなぎ合わせて創った人体を生き返らせることに成功します。
 しかし、これは神を恐れぬことでした。
 フランケンシュタイン博士が作った「人間」はしだいに理性を得、言葉も話すようになります。しかし、彼はおぞましく醜い外観のために人に恐れられました。「怪物」と呼ばれた彼は自分を作った博士を呪います。
 自分の創造物に追い詰められてゆく博士。それは神の領域を侵した人間への厳しい罰なのでしょうか。

 この二つの有名な物語にまつわるこれまた怪談めいたエピソード。いや~~~なんかぞくぞくしませんか?


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