バイクからランへのトランジッションはトイレに立ち寄った以外はトライスーツを着ているので着替えの必要も無く、シューズの履き替えくらいなので大きなタイムロスは生じずスムーズに移行完了。
ボランティアから差し出されるドリンクで給水し、頭から水をかぶって体を冷やし42㎞のランコースに飛び出します。
走り出し直後はバイクで酷使した足が他人の足のようで思うように動かず、加えて直ぐに激坂の歓迎を受けるのでいきなりの苦戦を強いられますが、コース脇のギャラリーからの大きな声援が背中を押してくれます。
登り切った先のホットコーナーでは世界各国の言語が飛び交い、日本語の応援が耳に届くと元気百倍、思わずペースが上がってしまいそうになりますが、まだまだランは始まったばかりなのでここは冷静に適正ペースを模索しながら慎重に歩を進めます。
1㎞程走るとようやく足の筋肉もランの動きに慣れてペースも安定して来ますが、17年前とコースが変わっているのでどこまで行くのか第1折り返し地点が分からず、折り返して来る選手の様子を伺いながら抑え気味の安全走行に努めます。
時間の経過と共に気温も上昇し、バイクと違って風に当たらない分、強い日差しがジリジリ降り注ぎ多くの選手が苦悶の表情を浮かべ、私もその例外ではありません。
の つもりでしたが…
クオリファイ・レースではペースの落ちて来た選手を面白いように抜き去る事が出来ましたが、流石にKonaまで勝ち上がって来た選手はそう易々と抜かせてはくれません。(≧∀≦)
ここからは相手と競うより自分に負けない事に全力を注ぎます。
自分のペースを堅持し一人また一人と徐々にではありますが先行する選手をパスしながらバイクコースと同じクイーンKまでたどり着きます。
クイーンKは平坦ではあるものの景色の変わらない精神的な辛さも加わるタフなコース、選手のエネルギーを容赦なく削ぎ落として行きます。
私とて既に体力に余裕は無く、気力を振り絞ってどうにか歩かずに走り続けられている状態で、
約1マイル毎のエイドステーションを目標に重い足を何とか動かし進み続けます。
ツアーに帯同してくれたバイクメカニックのメイストームさん一行がコース上で応援してくれたポイントだけは少し元気を装いました。(笑)
この後もしばらくハイウェイを走った後に、ようやく第2折り返しのエナジーラボへの取付道路へと入って行きます。
取付道路は若干下りが続き少しだけ楽になりますが、折り返すと登りになり天国から地獄へ…
ここまで来ると疲労も蓄積され歩きたい衝動に駆られますが、ペースは落としても絶対歩かないと自分に強く言い聞かせ、エイドで配られたネッククーラーで体を冷やしながらほとんど気持ちだけで前進運動を続けます。
行きで応援してくれたメイストーム一行は帰りもパワーを与えてくれました!
陽も落ちて多少気温は低くなりますが、まだまだ熱い戦いは続きます。
1マイル 約1.6㎞毎のエイドステーションでは水やスポーツドリンク、スポンジやエナジージェル、フルーツやクッキーなどもありますが、
水を頭から被り、スポンジをウエアの肩に入れ、スポドリかコーラを飲んで、とにかく体を冷やしながら脱水に気をつけながらやり過ごします。
時計は持たないので時間経過は分かりませんが、ランのザックリ予想タイム3時間45分からはかなり遅れている事は自分でも感じていました。
でも動き続ければゴールが近づいてくる事を信じて走り続けるしかありません、最後まで諦めずに最善を尽くす為にこの場にいるのです。
自分だけには負ける訳にはいかないのです!
スタートしてかれこれ11時間は経過しているのでしようか?
満月に一番近い土曜日に開催されるこの大会ですが、辺りは徐々に暗くなりつつあります。
街灯もほとんど無いハイウェイではエイドステーションの灯が頼りです、その灯を一つずつ通過してついにあの懐かしいコナの街明かりが見えて来ました。
街に近づくと応援の人も増えて来て、見ず知らずの外国人に対しても惜しみない声援をかけてくれます。
大声援のホットコーナーを曲がるとフィニッシュまでは1マイルあまり、ギャラリーの数も一気に増えてコースの両側から「Good job!」「Looking good!」などの声が疲れた体にパワーを与えくれます。
力を振り絞って諦めずにやって来たフィニッシュゲートまでの残り数百メートルは、
まるで役者がスイム3.9㎞、バイク180.2㎞、ラン42.2㎞の三つの舞台を最高のパフォーマンスで演じ切った最後の花道のように観客の声援も最高潮に達します。
選手一人一人が主役なのです。
17年前と同じ場所にフィニッシュゲートはあります。
でも、今通過しようとしている自分はあの時とは違う自分です。
健康で記録を目指していたあの頃とは違い、生きる為にこのトライアスロンをやっています。
そして生きている証としてこのゲートをくぐる事が出来るのです。
応援してくださった全ての方々に感謝しながら、そして頑張った自分を褒めながら…
レースは終わりました。
成績はザックリ予想の11時間からは程遠い結果となりましたが、悔いはありません。
今の自分にとって出来得る間違いなく最高のパフォーマンスだったと思えるからです。
今回のレースは自分に自信を与えてくれました。
癌を患っても気持ちをしっかり持って上手に向き合って行けば何でも出来るんだと!
念願だったコナのIRONMANレースは完走する事が叶いました、次は「癌根絶耐久レース」の完走です。
IRONMANより長丁場のレースとなるのは承知の上での参戦です。
絶対完走します! (^_^)v
番外編 もう少し続くかも⁈ (笑)