第9章【9:隠者(The Hermit)】でフールは、静寂の中に身を置き、内なる声に耳を澄ませることを学びました。
『自分自身の真実は、自らの心の奥にある』――
その気づきは、彼の旅路を新たな次元へと導きます。

そして今、フールを待ち受けるのは、個人の内省を超えた“大いなる流れ”との出会い。

 

【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】が、彼を未知のサイクルへと誘います。

 

 

 

 

隠者からもらったランタンの灯りを頼りに、フールは深い雪道を進んでいった。

あたり一面は白銀の世界。静寂の中、時折吹雪が視界を遮り、道を見失いそうになった。

『このまま進んで大丈夫なのだろうか?』

不安が胸をよぎる。
しかし、フールは今までの旅で学んだことを思い返した。

『内なる声に耳を澄ませ、自分を信じ進め』

その言葉を胸に、一歩ずつ雪を踏みしめ前へと進んだ。


幾日もの険しい雪道に心が折れそうになったある日、
フールはついに山を越え、晴れ渡る青空の下へとたどり着いた。

 

深呼吸をして空を見上げたその瞬間――
風がざわめき、空がめまぐるしく渦を巻くように色を変えていった。
足元の大地までもが回転しているかのような、不思議な感覚に包まれた。

目の前に現れたのは巨大な車輪――。

その周囲には見慣れぬ動物や神秘的な存在たちが静かに佇み、黙々と知識の書を読んでいる。
車輪には神聖な文字や記号が刻まれ、上には青いスフィンクス、下には黄色い蛇と赤い冥界神アヌビスが絡みつくように身を任せ、絶えず回転を続けている。


フールは、その光景に言葉を失い、ただ立ち尽くした。
胸には、驚き、畏怖、そして言いようのない困惑が渦巻いていた。

 

「これは、何を意味するのだろう……?」


徐々に車輪の回転が速くなり、周囲の空間が歪み、時間が加速していくかのような感覚に襲われた。
 

その時――轟音と稲妻が走り、雷鳴が響いた。

時間と空間がねじれる中、どこからともなく声が響きわたった。


「すべては巡り、変化し続ける。
抗うことなく、その流れに身を委ねよ。
流れを掴む者は、新しい可能性へと導かれるだろう。」

 

その言葉は、フールの心の奥底に深く響き渡った。

 

『抗うことなく、その流れに身を委ねる…難しいことだな』と、
フールは揺らぎ行く世界の中で考えた。

 

『人は変化を恐れる。見えない未来への不安と過去への執着――そう簡単に受け入れられるだろうか?』

 

フールは目を閉じ、深呼吸をし、以前の自分を振り返った。 
かつての自分は、変化を恐れ、常に安定を求めていた。

 

この先、変化を恐れ、過去に囚われるのか、
それとも変化を受け入れ、未来へと進むのか。


フールは胸の奥で何かが動き出すのを感じた。


人生には予測できない変化がある。
それは試練であると同時に、次の扉を開くチャンスでもあるのだ――。

 

《タロットカード
【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】
とはどんなカード?》

タロットカード 【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】の写真

 

広い青空の中央にオレンジ色の車輪。

車輪には謎の記号と、『TARO(タロット)』『YHVH(神の名)』といった神聖な文字が刻まれています。


上部には青い剣を持ったスフィンクス。
左側には黄色い蛇。
右下には赤っぽい冥界神アヌビス。

 

そして、車輪を囲むように四つ角にはグレーの雲をソファーに、熱心に本を読んでいる黄色の四大聖獣(鷲、獅子、牡牛、人間)が配置されています。

 

とても不思議な雰囲気を持ったカードですが、私が特に気になったところは、

 

・四隅の四大聖獣:翼を持つ鷲・人間・牡牛・獅子と蛇が同じ黄色であること。

・雲が白ではなくグレーであること。

・スフィンクスがなぜ剣を持っているのか?

 

詳しく見ていきたいと思います。

 

《タロットカード
【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】
を包む“色”と“叡智”の象徴》

タロットに描かれる色は、単なる装飾ではなく、それぞれが役割を持ち、メッセージを語りかけています。
【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】のカードでは、特に“人生のサイクル”・“転換点”・“偶然に見える必然”が色彩やアイテムによって強調されています。

 

テーマカラー

●青(大空)

 広がり・冷静さ・果てしない可能性。精神の安定を象徴。

 

●オレンジ(中央の車輪)

 運命のエネルギー、生命の循環。チャンスの輝き。

 

●黄色(蛇・四大聖獣)

 知識・霊性・活力といった内なるエネルギーを象徴。
 生命力の循環を示す色。

 

●グレー(雲)

 精神性の高みや、世俗を超越した場所を示唆。

 

●赤に近い濃いオレンジ(冥界神アヌビス)

 生命力や変容のエネルギー。
 青空や雲とのコントラストで強く浮かび上がり、視覚的に迫力を与える色。

 

カードに登場するアイテムとその意味

●青空(青)

 広がりの可能性。運命の大きな舞台を象徴。

 

●中央の車輪(オレンジ)

 永遠の循環、宇宙の摂理。富やチャンスといった人生の浮き沈みを象徴。

●雲(グレー)

 高次の次元への境界を象徴。

●四大聖獣(黄色)

 新約聖書に登場する「四福音書記者」の象徴。
 それぞれ“知性(人間)”・“霊性(鷲)”・“力(獅子)”・“安定(牡牛)”を象徴。

 

●蛇(黄色)

 下降する存在。運命の下降や変化、物質的な世界への引力を象徴。

 

●アヌビス(赤〜濃いオレンジ)

 冥界の導き手。死と再生を象徴し、変容のエネルギーを象徴。

 

●スフィンクス(青)

 古代エジプトやギリシャ神話で“謎をかける存在”として描かれる守護者。
 タロットでは「試練」「答えを導く知恵」を象徴し、
 車輪の頂点で公平な裁定者としての役割を持つ。

 

《【10:運命の輪】の謎を解き明かす》 

スフィンクスと剣:

  1. 知恵と謎の守護者
    剣を持っているのは、知恵をただ知識として蓄えるだけでなく、鋭く真理を切り分け、見極める力 を表しています。
     
  2. 運命の裁定者としての役割
    車輪の頂点に座るスフィンクスは“運命の輪”の支配者。
    剣はその象徴であり、流れに翻弄される存在ではなく、変化の法則を見通し、公平に裁定する立場を示しています。
     
  3. 次のカード【11:正義(JUSTICE)】への橋渡し
    剣=真実を量る象徴であり、次章【11:正義(JUSTICE)】への布石でもあります。
    つまり『運命の変化の後には、必ず真実を秤にかける時が来る』という流れを暗示しているのです。 

なぜアヌビスは大きく描かれている?

  1. 色彩のコントラスト
    アヌビスは赤みの強いオレンジ〜茶系で描かれています。背景の青空やグレーの雲に対して暖色は強く浮き上がるため、自然と視線が引き寄せられます。
    一方、スフィンクスは青空と同系色のブルーで溶け込み、対比が弱い=控えめに感じられます。
  2. 動きの表現
    スフィンクスは静かに頂点に座っているのに対し、アヌビスは「昇っていく」動きが描かれています。動きのある対象は静的なものより目に入りやすいです。
  3. 構図上のバランス
    スフィンクスはカード上部で小さく描かれ、しかも空の広がりの中に置かれているため余白が多い。
    アヌビスは車輪のすぐ隣に大きめに配置され、しかも蛇と対になっているため“主役感”が強まります。
アヌビスが大きく見えるのは意図的な描き方であり、“変化のインパクトを強く印象づけるための象徴”なのです。

四大聖獣と蛇が同じ黄色である理由

世界の根源的なエネルギーの象徴である“四大聖獣”と下降する存在の“蛇”が同じ黄色でえがかれていること。その理由は・・・

  1. 同じ「生命エネルギー」の源流
    蛇は下降=物質的な方向へ、四大聖獣は上昇=精神的な方向へ。
    行き先は違っても、その力の根源は同じ“生命エネルギー”であることを黄色が示しています。
  2. 光と影は表裏一体
    黄色は“光・叡智・活力”の色。
    四大聖獣が持つ知恵や力と、蛇が象徴する誘惑・堕落・物質への引力は、実は同じエネルギーの“裏と表”。
    どちらに使うかで意味が変わる、というメッセージが込められています。
  3. 運命の輪の中での中立性
    車輪は上昇と下降を常に繰り返すもの。黄色を共通色にすることで“下降もまた循環の一部”であり、善悪で単純に分けられないことを示しています。

    つまり、この黄色は“上昇も下降も同じ生命の力から生まれている”ことを示しているのです。

 

また、このカード番号“10”そのものが、重要な象徴です。
“9”で一度の探求が完結し、“10”で新しい流れが始まります。
1(始まり)と0(無限)がひとつになることで、個の意志と宇宙の循環がつながり、次のサイクルへの転換を告げているのです。

詳しくは、導きの灯り〜数字が語るもの(大アルカナ) 編で書く予定ですのでお楽しみに♪

 

 

《タロットカード
【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】
正位置の解釈》


【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】の正位置は、文字通り、運命の輪が上向きに回転している状態を示します。

これは、あなたの人生に好転の兆しが見え、チャンスが巡ってくることを意味します。

  • チャンスの訪れ:偶然に見える必然の出来事。
  • 流れに身を委ねる:変化を恐れず受け入れる時。
  • 人生のサイクル:物事が一区切りし、新しい段階が始まる。
  • 幸運の兆し:周囲との関係性が調和しやすい。

🌿 日常へのヒント

  • 変化を拒むのではなく“流れに任せる”を意識する。
  • チャンスが来たら勇気を持って掴む。
  • 今の出来事を“偶然ではなく必然”と捉える。

運命の輪が好転する時、それは突然やってくるかも知れません。 
偶然の出会い、新しいチャンス——最近、何か予期せぬ変化を感じていませんか?
それは、運命の流れがあなたに“今こそ動く時”と囁いているのかもしれません。

 

《タロットカード
【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】
逆位置の解釈》

【10:運命の輪(Wheel of Fortune)】の逆位置は、運命の輪が下向きに回転している状態を示します。これは、あなたの人生に停滞や混乱が生じ、思うように物事が進まないことを意味します。

  • チャンスを逃す:変化を恐れて動けない。
  • 同じパターンを繰り返す:学びを活かせず堂々巡り。
  • 予測不能のトラブル:思い通りにならない状況。
  • 自分の力では抗えない運命:執着を手放す必要。

🌿 日常へのヒント

  • “なぜうまくいかないのか”ではなく“そこから何を学ぶか”に目を向ける。
  • 執着を手放すことで、新しい流れが生まれる。
  • 今は焦らず静観し、再び回るタイミングを待つ。
「なぜこんなに滞っているのだろう?」と感じることはありませんか?
運命の歯車がうまくかみ合わず、すべてが思うように進まない時間があるものです。
運命の輪は、いつか必ず動き出すもの。
焦って無理に動こうとするよりも、流れを待つことが大切です。
 

《まとめ》

人生は常に変化し、その流れを完全にコントロールすることはできません。

しかし、運命の輪が上昇する時には積極的にチャンスを掴み、停滞する時期には学びと準備の期間と捉えることで、人生のサイクルを味方につけられます。

運命の流れに身をゆだねる勇気を持つことで、思いがけない幸運や出会いが訪れるでしょう。

 

《次回予告》

流れに身を委ねたフールが出会うのは、公平さと真実を量る秤。
――【11:正義(JUSTICE)】

 

それは、すべての出来事が、あるべき場所に収まる物語。