“音楽番組”の価値は低下したのか?~視聴者の声からその影響力を考察

オリコン [10/11 09:40]
全体の84.5%が【YES】。特に女性の割合が高かった
日本の音楽の歴史を振り返ってみると、『ザ・ヒットパレード』、『夜のヒットスタジオ』、『ザ・ベストテン』など、かつて“音楽番組”が絶大な影響力を持っていた時代があった。毎週、テレビにかじりついて観ては次の日に学校などで話題にしたものだ。時を経て、インターネットを介して手軽に情報を入手できるようになったことや、CDマーケットの縮小などにより視聴率が伸び悩んでいることもあり、昨今、音楽番組の終了が相次いでいる。一方で、BUMP OF CHICKENが7月に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で地上波音楽番組に初出演したことが話題となるなど、いまだに大きな影響力を持っていることもうかがえる。では、視聴者は現在の音楽番組の影響力や役割の変化について、どう捉えているのだろうか?

■音楽番組の影響力は“高い”、女性は9割以上がYES
今回、ORICON STYLEでは、インターネットの普及によりメディアも細分化されているなかで、「地上波の音楽番組に出演することの“宣伝効果”は今も高いと思いますか?」というユーザー調査を実施。その結果、全体の84.5%が【YES】と答えた。特に女性はYESが90.4%と9割超えとなり、なかでもインターネットに親しんでいると思われる10代女性は94.4%と、全世代中最も高い結果に。一方、男性はYESが78.6%と、ともに賛成が多いものの、男女間で若干の差異が見られた。
YESと回答したコメントで多かったのが、「ネットは自分で情報を探しにいかないとたどり着けないことが多いけど、テレビはそうではない人にも届くから、まだまだ影響力は大きいと思う」(埼玉県/20代/女性)、「テレビは老若男女、幅広い層が目にするから」(千葉県/30代/女性)、「能動的に情報を得ないといけないWEBサイトやソーシャルメディアと、受動的なテレビでは、テレビのほうが影響力はあると思う」(大阪府/20代/男性)など、視聴者の情報の受け取り方の違いだ。確かにWEBの情報量は多いが、届くのは限定的な層であることが多い”という意見も多く、知らなかったアーティストとの出会いや発見の場としてのテレビの影響力は圧倒的に高い、というコメントが多く見られた。
一方、NOと答えたコメントでは、「ネットの情報のほうが早い」(兵庫県/20代/女性)、「情報量を考えると、ネットのほうが宣伝効果が高い気がする」(北海道/40代/女性)など、圧倒的な情報量の多さ・早さを挙げる人が多かった。また、「きっかけにはなるかもしれないけど、情報発信源としての音楽番組の役割は薄らいでいると思う」(千葉県/40代/男性)など、必ずしも“音楽番組を観なければトレンドを知ることができない”という状況ではなくなってきているため、影響力はあるが以前より弱くなってきているのでは? と指摘するコメントもあった。
■純粋に“音楽の魅力を伝える”という音楽番組の役割

1980年代頃までの音楽番組は、子供から大人まで、家族揃って観ることができるエンタテインメント番組だった。1990年代に入ると『うたばん』や『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』など、バラエティ色の強い番組が次々と登場。司会にお笑いタレントなどを起用し、よりアーティストのキャラクターにフォーカスする番組が人気を集めた。しかし、こうした“音楽バラエティ番組”は2010年代に入ってから相次いで終了し、最近は『ミュージックステーション』や『MUSIC JAPAN』、『LIVE MONSTER』など、トークはありながらも、どちらかといえば音楽の魅力をストレートに伝える番組が目立つ。「ネットでは音楽の情報が多すぎて、何を選んだらいいかわからない。
でも、テレビに出ていると、認められていると感じる」(宮崎県/20代/女性)というコメントにもあるように、情報が溢れている今だからこそ、取捨選択をする上で、テレビという強力なメディアで純粋な音楽の魅力を伝えてほしい、と考えている視聴者が多いのではないだろうか。 こうしたなか、『ミュージックステーション』では、2005年より「Young Guns」というブレイク前の新人を紹介するコーナーを設けている。いきものがかり、Perfume、西野カナ、ナオト・インティライミらを輩出してきた名物企画となっており、出演アーティストが毎回Twitterでトレンド入りするなど注目度も高い。また、過去にはコーナーから派生したWEBのオリジナル番組配信など、これまでなかった野心的な取り組みも実施。
かつての音楽番組のように、番組から新たなトレンドを生み出していこうという気概が感じられる。これからの音楽番組は、単純に流行のアーティストを集めるのではなく、独自の視点を持ってアーティストをレコメンドすることで、いかに他にはない番組の価値を見出してもらえるかが重要。素晴らしいアーティストを“発見”でき、音楽シーンを揺るがすトレンドを生み出す場となれるかがカギといえそうだ。

【調査概要】
集計期間:2014年8月12日(火)~18日(月)
調査対象:合計1000名(自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員10代、20代、30代、40代の男女)
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査