人は誰でも、何か一つは人より秀でたものをもって生まれてくるという。私の妄想では、生まれる前の世界で、それぞれの魂が、まるでレゴのパーツのように選ぶのである。顔はこれ、体はこれ、寿命はこれ、能力はこれ、国はここ、親は子の人たち・・・

そんな中、私は生まれる前、見た目や能力において、１つもキラキラしたものを選ばなかったようだ。（こちらの世界でキラキラしたものは、あちらの世界では地味で、こちらの世界で地味なものが、あちらの世界ではキラキラしているのかもしれないけれど。）

あちらの世界の私はきっと、「どことなく、いとおかし（なんかいいよね）」をテーマにこちらの私を組み立てた。そして、伝家の宝刀に「あきらめるべき時に、ちゃんとあきらめる力」を選んだように思う。美貌でも、エンタメの能力でも、運動神経でも、リーダーシップでもなく、こういうものを必殺技に選ぶところが実にいとおかしな私らしい。

さて、子どもたちを育てながら、過剰な期待をしないようにしている。地味な親から派手な子を期待されたら、共に苦しかろうと思うから。よって、期待値を０にすることを心がけている。そうすると、何かがちょっとできるだけでも「素晴らしい」と本気で伝えられるのだ。ところが最近初めて、息子に０を期待して、－１５が返ってくるようなことがあった。その時、０が、実はとても偉大で大きな数であることを知った。そして、その－は彼のせいでなく、親の怠惰にも非があることを自覚した昨晩、私はあまりうまく眠れなかった。

子どもたちの中にはたくさんの種があって、でもその種は何の種か分からず、どうやって（何を機に）その種が育つのかも分からないのが子育てというもの。なんというミステリーだろう。栄養あると思って食べさせているものが、実は毒だったと発見されるかもしれないし、かわいがっていることが、実はプレッシャーだったと告白されるのかもしれない将来が、親には待ち受けているのだ。

そろそろ眠らないとまずいという朝方、私は伝家の宝刀を取り出した。

「ないものは、仕方がない。できないことも、仕方がない。ないものはある人に、できないことはできる人に、尊敬し、助けを求め、お任せしよう。自分だけでなんとかしようとせずに。」

すっと体から力が抜けた。短い睡眠時間だったけれど、すっきり早起きをして、私は今、これを書いている。

(オルセー美術館のレストラン。通りがかりにハッと目を奪われた美しさ。時計の鐘が鳴るようなイメージ。そして、混雑しているのに、アメリカに比べてとても静かなことに気がつき驚いた。アメリカのレストランはうるさい。声を張り上げなければ、互いの声が聞こえないほどに。声が小さい私には、フランスの方が生きやすいかもしれない。)

０が大きい数であることを知った夜。