野良猫ゲンの物語⑪ やっと治癒した喜びと複雑な感情
ゲンの傷口は、1年と1か月かかってやっとふさがった。世話している女性たちも病院関係者も感無量。「やっとだね、ゲン、よかったね~」何度も語りかけては頭や背中をなでる。ゲンは甘えて膝に乗り、さらによじ登るようにして抱っこをせがむ。1週間前からエリザベスカラーを外してるので行動がのびのびしている。抱っこしたまま手をにぎにぎするようにフミフミ。体重6キロ以上の体で、大きな太い手で子猫のような仕草。本人は子猫の気分なのかもしれない。甘えさせてくれる女性にべったりと満足そう。野良猫だったことなんか忘れたかもしれない。今や飼い猫の気分で甘えているゲン。喜ばしい限りだけど、病院通いが終わったら、ゲンはこのあとどうなるのだろう・・今度は別な心配が大きくなってくる。ゲンは誰かの飼い猫になれるのだろうか、貰い手がいなかったら野良に戻されるのだろうか・・みんな何とかしてゲンを助けたかったのだけれど、自宅に迎えることは不可能。自宅にはすでに複数の猫がいて、キャパオーバー。飼ってあげたいけれど無理な状況で苦しい胸中。少し落ち着いたら譲渡会に参加して里親を探そうか、みんなでゲンを囲んでそんな話をするのでした。