「日々の固執」

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己の内の偏執狂的世界 ❤

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第三十五回記念
四国こんぴら歌舞伎大芝居
昼の部


義経千本桜
すし屋


 鮓屋弥左衛門 役 






《 下市村釣瓶鮓屋の場 》

時計 11:00   幕が開くと、市川中車先生のお役 鮓屋弥左衛門氏 が営まれる釣瓶鮓屋の家屋セットが目前に広がりました 拍手

セットは上手から、塀とその上に繁る葉、手前に障子、後方に押し入れとその下に鍵つき引戸、隣に暖簾、前に行灯、暖簾左横に飾り皿等が並んだ棚、その前に帳簿をつけるセット、さらに前には桶が並んでいます。
そして左側に単独の格子戸、外は農村景色と最下手に木。
家屋セット内の床は一段高く、セット外のお舞台手前側の床には畳柄の敷物が敷かれています。
家屋下手柱には『つる屋``すし』の看板。


時計 11:19   中車先生 の 鮓屋弥左衛門氏 が店に帰ってこられます。

揚げ幕よりご登場拍手
初老をうかがわせるおかおをなさっていました。

羽織内の背に何か大きなものを隠し、腰を折られおぼつかない足取りにて花道を進まれます。
お年を召した男性風情が流石でした キラキラ

花道中央すぎで、辺りを窺うような何か思案するような険しいご表情で升席内にお顔を向けられました。
弥左衛門氏の心情をお見事にご表現でした拍手


格子戸まで進まれ戸を開けようとなさいますが戸は開かず、何度かガタガタと引く素振りを見せられ、「今戻った。誰かいるか。はよぉここを開けてくれ。ここを開けてくれ。」と年配らしい声色にて台詞。

待つ間も険しいご表情で辺りを窺い下手端まで様子を見に行かれ、その間に扇雀丈の弥助が格子戸を開けられましたが気付かず、格子戸に置こうとした手が空を切り前のめりになられ「開けるなら開けると言ってくれ」と、声を荒らげることなく台詞。

「これ一つ、茶をもってきてくだされ」と茶を頼み、一人になると「ふぅ~~」と息を吐き戸を閉め、下手向きに座り羽織を脱ぎ背の荷物をおもむろに解かれました。

客席を向き荷物の風呂敷を解くと、生首が!
キッっと正面を睨むような険しいお顔を見せられ直ぐ様風呂敷を閉じられました。

右手で膝上を叩き立ち上がると、後ろに並ぶ桶を取りに行かれました。

桶にそっと両手で生首を入れ、羽織を後ろに片付けられた後、両手で重たそうに桶を持たれて見得。
桶を元の位置に戻し「はぁはぁ」と荒い息遣いをなさいました。

弥助氏の「はいお茶」に前のめりで「びっくりするわい」と驚かれ、湯飲みを手にし一口飲まれた後、格子戸へお茶

戸を開けお手を外にだされ、茶で左手を洗う仕草の後、辺りを窺い戸を閉められました。

「まず~まず~」と膝をつき、左手を使用人弥助のふりをする平維盛に差し出されました。
扇雀丈は弥助から維盛となり中央に座られました。
中車先生 は下手寄りの畳敷物上に正座を。
(維盛の父に恩のある 弥左衛門氏 源氏の追っ手から維盛を匿っています)

とうとう源氏に維盛の存在を知られ、源頼朝の家臣梶原平三景時から維盛の首を差し出せと言われた弥左衛門氏 は、道端の死骸の首を維盛と偽り差し出そうと考え、持ち帰ってきたその経緯を長台詞にて語られます。

中車先生 の 弥左衛門氏 は、両手を床につけられ、静に重々しく語られました。

「弥助~弥助~」で背を伸ばされ、「存じましたるところ」で機敏に肩を動かされ、「邪ち深い」で首と肩を振られ、「上市村へおこしなされてくだせぇませ」では頭を下げらました。

「由緒ある」で右手を伸ばされ、「すし商売」で正面を向かれ、別の台詞時に再び斜めを向かれました。
「お恥ずかしござりまする」で深々と頭を下げられました。

維盛の台詞に、下手を向かれ手拭いで涙を拭かれました。

そこへ娘のお里が明るく入ってきます。
弥左衛門氏 はお里に笑顔を向け立ち上がられると「おお娘、よう留守していやったのお」と下唇を下げられ手招きするような仕草で台詞 おいで

「ここでゆるりと、オレとババとは」
「はなのおがの~て~」で正面を向き左眉上げられ見得❗❗
両手の人差し指を立てニンマリニヤリ
指を客席から娘へ向けると、家屋セット内に上がり上手を向かれました。

時計 11:31    上手の障子部屋へとニンマリ顔にて捌けられました。


その後は、虎之介丈演じる維盛妻と幼子が、一夜のお宿にと偶然訪ねて来たことからお里は、恋する弥助が実は維盛であることを知り、泣く泣く危険の迫る三人を上市村へと逃がします。

この一部始終を隠れて見ていた勘九郎丈演じる兄の権太が、金品目的で三人を源氏に差し出そうと、止めるお里を振り切り、父 弥左衛門 の帰宅前に母からせびったお金を入れた桶(父帰宅により咄嗟に隠した)を持ち、三人の後を追って揚げ幕へと捌けられました。
(途中、黒衣さんが床の畳仕様の敷物と格子戸を片付けられました)


お里は慌てて「とと様!かか様!」と。

時計 11:59    障子部屋より「これ(「おお」の日も)娘、何事じゃいな」と両手を前に出し背をやや丸め年齢を感じさせる流石の姿勢でご登場でした。
下に下りお舞台中央にてお里の話を聞かれます。

三人を上市村へ向かわせた話の際、「でかした、でかした、でかしたの」と両手を開きお顔前へ。

しかし息子権太の企みを知らされると、「何!兄が後を追うていった」と目を見開かれました。

「それやってなるものか~」と裾をまくり右足を踏み鳴らされ見得❗❗

「ばば脇差しを」と刀を要求し、息子を止めにいく準備を。
脇差しを何度も口にされ、弥左衛門氏 心情が伝わりました…

「兄を連れ戻す。案ずることはない」とおっしゃい、懐から手拭いを取り出され鉢巻に。

出発しようという頃、梶原の家臣数名が花道よりやってきます。

弥左衛門氏 はヨタヨタと庭先の家臣を避けて進み、すっぽん付近にてお手を揃え頭を下げられました。

その後両手をお顔前にかざしおののかれつつも、並ぶ家臣達をジグザグに振り切り花道を進まれました。

しかし梶原の登場に観念され、花中央辺りで右袖を直すと正座にて頭を下げられました。

家臣の台詞に「さ、さ、さ、それはー」と。
家臣と共に、「さぁ、さぁ、さぁ」の掛け合いからの梶原の「おいぼれ返事はどうだ~」。

追い詰めらお顔をしかめられました。

「先刻、首打ちましてございます」と少しお身体を起こされ、梶原を見やり台詞を。

「お通りくださいませ」と左足に手をつき立ち上がられると、持ち帰った首を見せる為花道を戻り家屋横で止まられました。

鉢巻と着物の捲りを直され、首を入れた桶を両手で運んでこられました。

開けようとすると、中身は息子権太に渡したお金だと思っている妻が、中は自分の大事なものが入っていると慌てて止めますが、弥左衛門氏 は自身の帰宅前に行われていた妻と息子とのやり取りを知らない為、「維盛様の首を入れてある」と揉めます。

見かねた家臣達から家族三人は取り囲まれ、客席に背を向け右手を上げ降参されます。

そこへ権太が維盛の首とその妻、子供を捕らえたと戻ってきました。
それに対し 弥左衛門氏 唇を噛みしめられました。

権太と梶原のやり取り中は、下手にて客席に背を向けた土下座体制で待機なさっていました。

梶原は褒美として頼朝の陣羽織を権太へ与えました。

権太は、梶原達が維盛妻と子供を連れて去った花道を涙浮かべ見つめながら台詞。


権太の「おたのもうしやっせ~」の後、弥左衛門氏 が背後から顔を歪ませ左背に切りかかられました。
続いて切りつけた左腰に刀を当てたまま、後ろへと倒れる権太に立て膝でかぶさるご態勢へと。

「大事の大事の維盛様を殺し、御代様をよう鎌倉へ渡しよったなー」
顔を客席に向け頭と肩を震わせ渾身の台詞。

「よい身代わりとあの(桶)中に入れておいたのだ。これ見よりー」と右手を振られ、桶を取り開けられます。
「こりゃ金!?こりゃどうじゃー!?」と驚かれ手を震わされました。

生首の桶と権太が隠したお金の桶が権太によって取り違えられていたのでした。

権太の経緯話を聞く際は胡座に。
権太の「中には首~」に「あぁ」とお身体揺すられ驚きを。

「御代、若君をなぜ鎌倉へ渡しよったんじゃい

「あれは権太ろうの女房と倅だーーー」
弥左衛門氏 は「ええ!!」と目を見開き手を震わせのけ反られました。

客席から鼻をすする音が聞こえます。
権太の悲痛すぎる場面 感涙

権太の指示で母親が下手で笛を吹き、実際は生きている維盛達を呼びつけます。
その間に中車先生 は、桶を元の位置に戻し、客席に背を向け右肩を袖に戻されました。

維盛達三人が下手から来ると、お立ちのまま迎え入れ、虎之介丈の御代が上手へと通りすぎると、腰をかがめ年配らしく座られました。

お舞台中央で息絶え絶えの権太を囲んでの、息子と父それぞれの想いを台詞に乗せる場面。

並びは下手から、中車先生、後方に娘お里、息子権太、女房。

下手に背を向け権太の方を向き、胡座の膝上に握り拳をつくり息子を見つめられます。
首筋の血管が浮いていらっしゃり、渾身のお舞台が垣間見えます…

権太台詞に合わせ、肩で息、のけぞる、頷く、膝の着物掴む、口を開け腕を震わせ泣く、といったお動きにて心情をご表現でした。

権太の「(妻子)思っては泣き、縛っては泣き」に声をあげ泣かれました。
「邪心でもこえられたものじゃねー。ち、ち、ち、血を吐きましたーーー」
に手拭いをあて泣かれました。
客席も涙涙涙感涙

権太への父親としての心情を涙ながらに手元の手拭いを振り伝えられます。
「(善心を)常に持ってくれぬのじゃー」
「広い世界に嫁というのもただ一人。孫というのもただ一人」から、顔や肩を大きく動かし泣かれながら台詞。


維盛の台詞には、正面を向かれたり口を動かされたりとご反応を。

「これも鎌倉のうっての奴らの…」
両手で目元を押さえた後下を向かれ、もう一度押さえて泣かれ、思い出したかのよう陣羽織を差し出す様に両手に持たれて台詞。
左足から立ちあがり背を曲げ維盛の前へと陣羽織を持っていかれるとまた元の位置へと。
下を向き苦悶の表情で維盛の話に耳を傾けられます。

陣羽織には袈裟と念珠が入っていました。
頼朝から維盛への出家したら命助けるの意でした。
「敵ながら頼朝はあっぱれな大将」と維盛。

皆で目を押さえ泣く。

維盛が出家するにあたり、弥左衛門氏 「女中の供は年寄りの~」から回し台詞で「親子の名残~」と手を差し伸べられました。

権太と手を握り、抱き合い泣く。

維盛が立ち上がると、草履を用意した後、正座にて下を向き頭を下げられました。


権太が息をひきとる際、手拭いをくわえ顔前にて指を組み頷くように泣かれるのでした。


時計 12:38   幕引き。