ヤマトタケル(日本書紀:日本武尊、古事記:倭建命)

の女性性、あるいは背景として大和朝廷初期における

性同一性障害の存在可能性について


 ヤマトタケルさん。彼は『古事記』と『日本書紀』に記される伝説上の英雄。八岐大蛇退治をした人、あるいは草薙の剣で炎を切り裂いた人。典型的な貴種流離譚パターン。生まれは景行天皇の皇子。まさに貴種。

 彼の行った業績には非常に興味深いものが多々あるけれど、今回はトランスジェンダーに焦点を当て、記してみたい。

 そもそもともが彼に出会ったのは青池保子『イブの息子たち』のキャラクターとして。BLBoys Love)もの。えっ 腐女子? それで?

 長身、長髪、イケメンの美青年として登場する。性格はいたってストイックで誇り高い。けれど、男色のエロガッパ、バージルに見そめられ、結局おとされてしまう。 。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。

 歴史的に見ると確かに彼が女装した記述が見られる。基本的に身の丈2メートルはあろうという彼、大の乱暴者。しかし彼は、16の時、女装する。目的は敵の熊襲建を油断させ、近づくため。


 すなわち、『日本大百科全書』の記述に基づくと、「16歳の皇子はおばの倭比売(やまとひめ)の衣装で女装して熊襲建に近づき、これを殺す」となる。

 その後は男性として活躍し、尾張国で国造之祖美夜受比売と婚約する。すなわち、基本的には男性として生を全うする。しかし、女装するという発想を持つこと自体、彼の心に女性性があったのではないか。多感なティーンエージャーの時代。

 あるいは、こうとも考えられる。すなわち、彼の物語自体は創作である。大和朝廷の56世紀の日本での勢力拡大を背景とした神話である。この中で男性が女装するという記述が見られる、これすなわち、すでにこの時代に性同一性障害者が存在していたという傍証にならないだろうか。

 彼の物語は多くの浪漫を含んでおり、思うだに切ない。記するところは多けれど。この文脈のもとでは、これ以上はおそらく蛇足、ここで筆を置きたい。


 最後にともの好きなうた。

ヤマトタケルの辞世の歌 (『古事記』)


やまとは 国のまほろば

たなづく 青垣 山ごもれる


やまと うるはし


2011/11/18 とも