■Face with Tears of Joy
先日,イギリスのオックスフォード辞典が選ぶ今年の言葉(Word)が発表されました。

The Oxford Dictionaries Word of the Year is… an emoji
http://blog.oup.com/2015/11/oxford-dictionaries-word-of-the-year-2015-emoji-face-tears-joy/

なんと,選ばれたのはこちら。

泣き笑い

Face with Tears of Joy」という名称の(って呼ぶことを初めて知りました)絵文字です。今年の言葉に絵文字……,このニュースを見たとき,まさに21世紀だなーという印象でした。

でもこの流れ自体はたぶん日本やアジアでは(流行語大賞に絵文字そのものが選ばれないにしても)すでに進んでいると思っていて,これって,ソーシャルネットにおけるコミュニケーションの話にも通ずると思います。

以前2012年の元旦に,2011年のソーシャルネットコミュニケーションの特徴は「ノンバーバル」「ロケーション」「ライト」の3つであると紹介しました。

2012年のソーシャルネットコミュニケーション
http://gihyo.jp/lifestyle/column/newyear/2012/sociallife

絵文字っていうのはまさにここで挙げている「ノンバーバルコミュニケーション」の核となるものです。日本では3.11以降,オンラインコミュニケーションにおいては,Twitterのような手軽なツールとmixiをきっかけとしたソーシャルネットコミュニティの存在がとても大きな影響を与え,そして,LINEとLINEスタンプが登場したことで,身近で親密でノンバーバルなコミュニケーションというスタイルが一気に確立されたように思います。

個人的にはこの背景には,良くも悪くも元々から存在している日本語特性による曖昧さがあるからかな,と(それとツールで言えばガラケー時代の絵文字の存在も)。

この辺の話題については,このブログでもちょいちょい書いていて,とても興味があるところ。

・ソーシャル再考:いいね!の意味,感情表現の濃淡
http://ameblo.jp/tomihisa18/entry-11509611997.html
・時代の変遷とオンラインコミュニケーションとインターフェース
http://ameblo.jp/tomihisa18/entry-11769752669.html

で,話を戻して。

今回のオックスフォード辞典の発表で,個人的に興味深かったのが,この絵文字,ノンバーバルなコミュニケーションが,アルファベット26文字からコミュニケーションをつくってきたイギリスで注目を集めたという点です。

言語学の専門家ではないので想像の部分が大きいですが,イギリスやアメリカのような欧米文化は,単語の種類の少なさによる明確な表現(加えてさまざまな宗教の存在や国の形成背景)によって,Yes/Noをはっきりというコミュニケーションが主流だったと思う中で,一般的に絵文字が使われてきているというのは,絵文字による「ノンバーバルコミュニケーション」自体がグローバルに変わってきているんだなと思った次第です。

(もちろん,UNIXなどのエンジニア圏内では昔から :-) や ;-) といったものは使われていましたが,これは限定的なエリアなので一般ではないと思ってます)

先ほどのプレスリリースによれば,2014→2015年での絵文字の使用率は3倍以上になったとのこと。

数字

そして,イギリス国内で最も使われた絵文字が先ほどの「Face with Tears of Joy」で,使用された絵文字のうち20%以上を占めるとか。

それでも,日本のLINEスタンプほどの多様性がないところは(たぶん)イギリスだからだと思いますが,2011年当時の日本でもLINEが出る前はスタンプ文化ではなく絵文字文化だったわけですし,リリース直後もスタンプの種類は今ほど多くなかったわけだし,この先5年で,欧米のノンバーバルコミュニケーションが絵文字からスタンプへ,そしてもっと多様化する可能性が大きいと思っています。

そうなると,これまでは言語の壁に悩まされていた日本人が,今度はこういったノンバーバルコミュニケーションからいろいろな面で得をすることも増えたりするのでは?とも思っています(そう単純にいかないにしても)。実際,若い人たちのあいだでは国境の壁を越えてスタンプでのやりとりとか始まっているそうですし。


と,まずは外国のニュースから感じた,ノンバーバルコミュニケーションのグローバル化について書いてみました。


■アーキテクチャが創り出すソーシャルネットコミュニケーション
それから。

先日,僕が参加しているWebSig24/7のモデレーターMTGにアジャイルメディア・ネットワークの徳力さんをゲストにお迎えしてフリーディスカッションを行いました。詳しい内容は近々WebSig24/7のサイトに上がる予定でして,そこで話したのはこれまでのブログやソーシャルネットの変遷,さらに2015年の炎上案件を題材にしたメディア(記事・コンテンツ)とその配信の話などなどを。

このときはコンテンツを中心に話を進めましたが,余談ではこの先のネットコミュニケーションの形成には,今のコンテンツとそのやりとりが大事という話も出て。それをどのようにしていくかはアーキテクチャ次第という徳力さんのコメントがとても興味深かったです。

どういうことかというと,Facebookがすごいところは,ポストした内容に対して「いいね!」というポジティブな反応しかできないアーキテクチャになっていることが,今のような世界観が生まれているというもの(もちろん,コメントを利用したネガティブ合戦・炎上案件もありますが)。

今回,イギリスで絵文字がその年の言葉に選ばれたのも,絵文字を使ったコミュニケーションができるというアーキテクチャの存在が大きいわけですし,これからコミュニケーションインフラを開発・運用する立場の人にとっては,ますます重要でもあり,取り組み甲斐のあることじゃないかと思っています。

今は絵文字・スタンプという視覚要素だけですけど,その付加機能として,そのうち相手に対する反応スピードとかを何かしらで表現する機能が出たら,ノンバーバルコミュニケーションはもっと多彩に,多様化していきそう。なんかヒトとやり取りすのが難しくなりそうだけどw

それと,ユーザの立場から考えると,こういうのは言葉によるコミュニケーションを一定年数経験してきた人が,その経験を踏まえているからこそできる(生み出せる)ことでもあり,将来,今の子どもたちがより良いネット社会を体験するためには,今のうちから自分たちのようなネット黎明期を知っている世代もより良いネット社会・コミュニケーションを創っていかなきゃなーと思った次第です。

最後の方は妄想というか自分勝手な想いではありますが,いずれにしても,こういうニュースを観て,次の時代のソーシャルネットコミュニケーションへの興味が高まってきました。あとコミュニティにも。

2015年はもうそろそろ終わるけど,2016年はまたソーシャルネットをテーマにイベントやったり,いろいろ取り組んでみたいと思います。

まずはmixiコミュニティ再活性化計画を目論んでいます :-)


p.s.
余談ですが,最近はFacebookの海外スタンプもだいぶ多彩になってきたように感じていて,このスタンプなんかは,ポジティブな雰囲気はアメリカっぽく,それでいて,細かな感情表現は日本っぽいなーという印象でけっこう気に入っています。

スタンプ