■“仕事旅行”という旅
皆さん,仕事旅行って知ってますか。

その名の通り,仕事の旅行をするというもの。
って,説明になっていませんね(笑)

詳しくは以下サイトをご覧いただくとして,さまざまなテーマの仕事を,旅という形でパッケージ化して体験できるというサービス。

仕事旅行
http://www.shigoto-ryokou.com/

今,インターネットやWebを通じて,活字,画像,映像,さまざまな情報を得られるようになった中で,こういう形で入口はインターネット,その先の実体験を提供するサービスっていうのはすごく良いと思います。

さて,前置きが長くなりましたが,昨日,代休を取って行ってきました。仕事旅行。
僕が選んだ旅はこれ。

枕職人になる旅
http://www.shigoto-ryokou.com/detail.html?jid=74

もともと会社の同僚と行く予定だったんですが都合がつかず,一人旅に。

■馬橋からみんなの快眠を届ける!
まず,上野から常磐線に乗って馬橋駅まで。駅から降りて徒歩5分ほどのところに今日の旅先である「和幸寝装有限会社」さんがありました。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-和幸寝装

ぱっと見,普通の一軒家のこの場所が,日本最大数の種類の枕を製造している枕工場なんです。

さて,入口に近づくと,軒先には社長の大畑さんが気さくに迎えてくれて,さっそく旅のスタート!

■旅の流れ
旅の流れは以下のとおり。

- オリエンテーション
- 仕事の説明
- 仕事体験(商品枕)
- 休憩時間
- 仕事体験(商品枕,マイ枕)
- 旅の終わり

この内容を約3時間半で体験します。

ナビゲートしてくれたのは,ここ和幸寝装の社長,大畑勝豪さん。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-社長の大畑さん

■枕の素材や道具,さらには商品づくりの体験まで
旅の中では,実際に枕が出来上がるまでの説明とともに,枕の素材だったり,枕を作るときに必要な7つ道具,専用の機械などなど,枕製造に関わるモノ・コトをすべてご紹介いただきました。

一つ一つの作業を丁寧に。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-一つ一つ丁寧に

枕づくりにはいろいろな道具があるのですが,ここでいくつかご紹介します。

まず,これ。曲面を縫えるミシンです。通常のミシンと異なり,縫う材料が宙にある状態で操作できます。カバンや帽子の縫合に利用されるのを活用しているそうです。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-曲面を縫えるミシン

こんな感じで使われます。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-曲面ミシンで縫います

枕の型紙。一般的に4つのサイズになるそうですが,和幸寝装さんではそれ以外にも市販サイズとは異なる形の枕やクッション,そして抱き枕を製造しており,その鍵を握っているのがこの型紙です。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-型紙

個人的に面白い!と思ったのがこれ。
曲がる定規。定規といえば直線のイメージですが,これはゴムでできていてぐにゃぐにゃ曲がります。
「この定規を使うことでさまざまな形の枕を効率的にきちんと計測できるんですよ」by 大畑社長。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-7つ道具の1つ,曲がる定規

枕づくりは道具だけではできません。材料も大切です。
枕といえば,外側の袋と中身でできていることは知っていたのですが,ここはその外側の復路と中身の種類がとても豊富で。
その組み合わせで644種類の枕を用意しているとか。すげーーー!

ただ,大畑社長は「もちろんもっといろいろな組み合わせで種類は増やせるんですけど,そうすると今度はご購入いただく方が迷っちゃいますからね(笑)」と。

いや,644種類でも十分迷いますって!(笑)

話を戻して。和幸寝装さんで用意している中身の素材は全部で30種類。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-枕の中身は全部で30種類

これは加工前の綿。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-綿(加工前)

ミニボール。これはあとで体験させてもらいましたが,今までに体験したことのない寝心地でした。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-ミニボール

蕎麦殻。和風の旅館にある枕などでよく使われているとのこと。
たしかに修学旅行のときの枕投げとかこれだった気がする!
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-蕎麦殻

これは羽根。羽根って水鳥の羽を使うそうなんですが,「水鳥の場合,水の冷たさからカラダを守るようにできていて保温性が高いんですよ」と。大畑さんの知識は本当にスゴイ。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-羽根

これはひのき。とても良い香りがしました。
「枕に入れるとヒーリング効果もありますね」と。なるほど!
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-ひのき

他にもラテックスや低反発ウレタンなどなど,本当にたくさんの素材がありました。

さらにケースも。
市販の場合,S(35)M(43)L(50),そしてダブル(120)の4種類が一般的とのことで,それに高さが高中低とあるので,本当に人それぞれのカラダ・好みに合った枕がつくれる環境が整っていました。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-ケースも様々なサイズ・形が

この点について大畑さんは,「人間ってたいてい1日に6時間とか8時間とか寝るじゃないですか。つまり1日の中で1/3~1/4は睡眠なわけです。80年生きていたら25年ぐらいは寝ているわけですよね。であれば,もっと寝ることに意識を持ってもらえるよう,一人ひとりにピッタリの枕を提供できたら,ほんとうに嬉しいですよね。そして,一人でも多くの人に今よりも良い睡眠体験を提供したい。これが枕づくりの醍醐味だと思っています」と,寝ることの大切さに加えて,寝るという体験をより良くしたいという思いが伝わるコメントをいただきました。

そして,それを支えているのが,ここにある道具であったり,素材であったり,何より大畑社長自身,そして一緒に働いている職人さんであったり。

これだけではないのですが,こういう普段は表には出てこない部分を少しでも体感できたことは,本当に良い経験になりました。

さてさて,道具紹介に戻って。

今度は,外側の袋に中身を入れる道具です。
ここは電源を使う機械的なものから,昔ながらのジョウロなどを使って手動で動くものまでいろいろあります。これは素材に応じて使い分けられていました。

これは蕎麦殻入れ。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-蕎麦殻入れ装置

綿入れ。綿を加工してから封入します。電気を利用してかなりの勢いで入っていきます。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-綿入れ装置

これはポリエステル系のものを入れる装置。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-枕の中身を入れる装置

工場内にはこういう注意書きも。
というのも,こちらの工場は2階建てなのですが,時期によっては2階に相当量の素材が備蓄されるので,柱はとても大切なんです。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-注意書きも

■いよいよ枕づくりを体験!
ひと通りの説明をしていただいたあとは,いよいよ枕づくり。
今回は実際にオーダーの入った枕製造のお手伝いを。
体験させてもらったのは,

- 低反発タイプ枕
- 蕎麦殻タイプ枕
- 綿タイプ枕
- 綿タイプ抱き枕

です。

一番大変だったのは低反発ウレタンタイプの枕づくり。これ,手作業でないと詰められない素材で,床に座りながら素材をひと掴みひと掴み,地道にじっくりと。全部で4つほど体験しましたが腰が痛くなりました…

写真は蕎麦殻タイプの枕をつくっているところ。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-枕づくりを体験!

和幸寝装さんが凄いなーと思ったのが,中の分量へのこだわり。中に封入する素材というのは,枕の高さや柔らかさなど,体の感触に大きく影響する要素なのですが,この部分もオーダーに応じて容量が調整できるようになっています。しかも,手作業でやっているがゆえに微調整できるよう,秤を使って作っています。

$馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-誤差±5%まで

と,ここだけなら機械でオートメーション化できるんじゃないの,と思うのですが,さまざまな形,さまざまな素材,和幸寝装さんでなければ作れない種類,また,これまでの製造経験をもとに,最適な分量というのを決めていられる点が,モノづくりの醍醐味であり,それを体現している和幸寝装さんの凄さだと思いました。

これらが今回僕が作った枕です。実際に寝る人がいることを考えると,本当に丁寧に作らなければと思い,綿や蕎麦殻を詰めていきました。でも,低反発ウレタンを詰めるのはけっこう疲れた(^^;
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-僕が作らせてもらった枕(どなたかに届きます)


■旅の醍醐味!マイ枕づくり!
最後に。
旅の〆はマイ枕づくり。

今回,いろいろな素材や形があることを教えてもらった中で,サンプルの枕で試し寝もさせてもらって決めたのが,

粒綿
50×70


というもの。
個人的に,ラテックス素材とかいろいろ気になった中で,まずは今晩からすぐに使えるもの,これからの快眠を!ということでこれにしました。

自分自身で機械を使って綿詰めを。この膨らみがすごい!
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-マイ枕に粒綿を!

分量も通常にはないサイズで790gの粒綿で,かなり,ほわほわ,ふかふかにしてもらいました。

ちなみに出来上がりがこれ。

カバー無し。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-できあがり(カバー無し)

カバー有り。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-できあがり(カバー有り)

■旅を終えて~モノづくりへのこだわり
さてさて。約3時間半の仕事旅行が終わりました。

感想は「本当にとても良い旅行だった!」です。

やっぱり体験の価値というのは,物質的な価値や情報の価値とはまた違って,その瞬間・その場所だけで得られるもので,本当に貴重だなと思いますし,これからもいろいろな体験をしたくなります。

さらに今回ご対応いただいた和幸寝装の大畑社長,従業員のLanさんとも,とても丁寧に,優しく接していただけ,アットホームな雰囲気の中,自分が知らなかったモノづくりの世界を観ることができました。本当にありがとうございました!

大畑さん,Lanさんと記念写真。手にはマイ枕。
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-大畑社長,Lanさんと。手にはマイ枕

長々書いてしまいましたが,ご都合のつく方にはぜひ体験してもらいたい旅行です。

僕もまた枕づくりもしたいですし,他の旅行にも行ってみたいと思います :-)