2012年1月2日、gihyo.jpにてソーシャルネットについて記事を書きました。

2012年のソーシャルネットコミュニケーション
http://gihyo.jp/lifestyle/column/newyear/2012/sociallife

ここでは、ユーザ視点での2011年のネットコミュニケーションの振り返り、そして2012年の展望について述べています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
この中で、あえて触れなかったことに「共有(シェア)」の概念があります。これについては2011年ならではというよりは、Web 2.0の概念が登場して以降、各種ソーシャルネット/サービスのコンセプトにも含まれていて、ユーザ体験としてもあたりまえのものになってきたように思っています。
ということで、今回のエントリではこの「共有(シェア)」について書いてみます。

■2011年の特徴は「ノンバーバル」「ロケーション」「ライト」コミュニケーション
先ほどの記事中で,僕は2011年のソーシャルネットコミュニケーションの特徴を、

・ノンバーバル
・ロケーション
・ライト


の3つで紹介しました。そして、その先にあるものとして「直感的なコミュニケーション」、それを実現するソーシャルネットとして「Path」を紹介しています。

Path
https://path.com/
馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-Path

このPathというサービスは、現在友人数を150名までに限定している、スマートフォン向けのソーシャルネットサービスです。

■Pathが実現していること、していないこと
ここで、2012年1月時点でのPathの機能をみながら、Pathが実現していること、実現していないことについて、ユーザの立場で紹介してみます。

――実現していること
・写真の紹介
・Pathフレンドとのつながりの表示
・位置情報の表示
・音楽情報(おもに外国)の紹介
・つぶやき
・おやすみ/おはようの意思表示

――実現していないこと
・URL(パーマリンク)の埋め込み
・データの2次展開

これだとちょっとわかりづらいと思うのですが、たとえば、自分で撮影した写真に対してPathフレンドのタグ(情報)や位置情報を付けて、それを他のフレンドに伝える、あるいは音楽情報を紹介する、おやすみやおはようのあいさつをすることで自身の生活を(少しだけ)見せる、こういったことがPathでできることです。これはいわば、ユーザのライフログを紹介する機能です。
一方、実現できていない機能として、URLの埋め込みやデータの2次展開を取り上げました。これは、あるユーザをきっかけに知った情報を、他のユーザに改めて伝える仕組みがないことになります。すなわち、狭義の意味で共有(シェア)ができないのがPathの特徴です。

■Web 2.0の概念が生まれた時はどうだったのか?
さて、ここでちょっと昔を振り返ってみます。
2005年9月にTim O'Reillyが公開した論文「What Is Web 2.0」で、Timは、それまでのWebをWeb 1.0、その先のWebをWeb 2.0としてさまざまな比較をしています。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-Web1.0to2.0
引用:What Is Web 2.0
http://oreilly.com/web2/archive/what-is-web-20.html

詳細はこの論文をご覧いただくとして、この中で僕が今でも素晴らしいと思っているのが、

・オープンであること
・サイトの枠組みを超えたシンジケーションの重要性


そして、

・ユーザ自身の参加

という概念です。
参加という概念については、同じくその年に開催された2005 JavaOne Conferenceのキーコンセプトにもなっていました。この年のJavaOneは、Java言語が生まれてちょうど10年回を迎え、節目を祝うイベントにおいて「これからは参加の時代(participation age)だ」と、開発者に向けても大々的にユーザ参加型時代の幕開けを宣言したのを強く覚えています。そして、まさに7年後の今、その次代を迎えているわけです。
少し話がそれましたが、今から7年前、Web 2.0の概念が登場してからは、このようにユーザ同士が双方向かつ自発的にコミュニケーションを行い、そしてそこから生まれる(先が読めない)化学反応的な事象・現象がWebサービスの本質になってきているんではないかと僕は思っています。そこのキーになるのがユーザの「参加」であり、情報の「共有(シェア)」ではないかと。

■Facebookのタグ付の概念、クラウドが実現していること
で、今回のエントリの主題である共有(シェア)に話を戻します。

今、共有(シェア)を最も実現できているサービスの1つとしてFacebookがあると思います。Facebookでは、そのままズバリ「シェア」というボタンを用意して他人が紹介している情報を、自分のTimelineにコピーして広げていく機能を用意していたり、また、写真のタグ付についても、フレンド登録している友人同士であれば、自分の写真に対してフレンドのタグ付をすることにより、自動でそのフレンドの写真欄に表示させることが可能です。

馮富久のブログ - Tomihisa Fuon's Blog-TimBray

この写真は、現在GoogleのDeveloper Advocateを務めるTim Brayとの2ショット写真です。フレンド登録してもらっていることもあり、タグ付した結果、僕の写真欄だけではなくTimの写真欄にも同じ写真が表示されています。これがクラウド時代の写真の共有(シェア)の姿ですね。

僕のページの写真
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=85626770965&set=t.719430965&type=3&theater
Timの写真一覧ページ
https://www.facebook.com/timbray/photos

このように、1つの情報を複数のユーザで共有(シェア)するというのは、Facebookをはじめ最近のソーシャルサービスの特徴の1つと言えるでしょう。他にも、mixiのmixiチェック、TwitterのRTなんかもこれに相当するんじゃないかと。

そして、共有(シェア)することで、たとえば企業のマーケティング戦略だったり、ブランディングだったり、あるいはECなどの商品販売展開などが、より活性化するのではないかと思います。このあたりについてはまた別エントリでぜひ書いてみたいです。

■共有(シェア)することの意味――情報のポジティブな押し付け
で、そもそもこの共有(シェア)することの意味ってなんなんでしょう? 僕自身は、シェアをするのは、その情報だったり写真だったりを、自分のフレンドたちにも知ってもらいたいという、「情報のポジティブな押し付け」だと思っています。当然ながら、フレンドの中には共有(シェア)された情報に対して「あまり興味ないな」「そんな情報知りたくないよ」と、自分が思う逆の感情を持つ方いらっしゃるかもしれません。
ですからそういったことを踏まえてソーシャルネットコミュニケーションを図っていくことが、この先のソーシャルネットライフを楽しむコツになるのかな、なんて思っています。

余談ですが、僕の場合、基本的にはソーシャルネットに載せている情報は、世界中の全員に見られるかもしれないと思ってアウトプットしています。ですから、共有(シェア)することについても、されることについても抵抗がないです。
それでも、たとえば自分がネガティブと感じる情報の共有(シェア)はしたくないですし、相手がクローズドで公開している情報のシェアは絶対にしません。こうしたところは、まさにソーシャルネット時代のコミュニケーション作法とも言うべきポイントで、できることならメディアや教育機関などを通じて、大枠のルールが作れるといいなと思っていて、この先、何年かかけてでも取り組んでみたいことの1つです。

まとめになりますが、先のgihyo.jpのまとめにも書いたとおり、僕は「ソーシャルネットの醍醐味はサービスの機能ではなく、人と人とのつながりから生まれるコミュニケーション」だと思っています。また、今回紹介した「共有(シェア)」という考え方も、醍醐味において非常に大切なポイントの1つと思っています。
ただ、それは自分自身が思えることであって、ソーシャルネット全体であてはまることではありません。そのあたりを漠然と考えていたときに、ちょうどPathを使いながら「共有(シェア)」についていろいろと思い浮かべ、また、何人かのフレンドが「他のソーシャルネットとPathの差別化ってどうするんだろう?」というつぶやきをしていたのを見て、今回のエントリを書いてみました。

■サービス側の制限を利用することもソーシャルネットを楽しむコツ
最後までちょっと話が散漫になってしまいましたが、もう一度Pathに話を戻します。
Pathというのは、スマホ時代の、ノンバーバル・ロケーション・ライトコミュニケーションをうまく実現しているサービスの1つだと感じています。と同時に、Pathの場合、サービス側で共有(シェア)を制限する仕様になっています。もし「フレンドに向けて情報を公開したいけど、できることならその先を広げたくない」と思うユーザにとっては、今現在のPathの仕様、ソーシャルグラフの形成というのはぴったりはまるのかも、と思っています。

ps
あと、共有(シェア)については、複数のサービスにまたがるマルチポストからの考察についても書きたいと思っていて、それはまた別の機会に:-)

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略/レイチェル・ボッツマン