1995年~2001年:「DA.YO.NE」~「クリスマス・イブRap」

 

95年、EAST EXD × YURIの「DA.YO.NE」がヒットを記録した。この時、私は「ラップ」という歌唱法があることを知った。その時、私がラップというものに対して抱いたイメージは「メロディは無く、リズムに合わせてしゃべるような感じ。メロディのある通常の歌唱法とはまた違った練習方法が必要なのだろう。それに、ラップだと歌詞の文字数も多くなるから覚えるのが大変そう」、ざっとこんな感じだった。

 

その後、ラップを聞く機会といえば、安室奈美恵の「Chase the Chance」のラップパートや、globeの曲のマーク・パンサーのラップパートであったため、私のラップに対するイメージは「曲中に箸休め的に組み込まれるものであり、EAST ENDのようにラップがメインのグループは特殊なケースである」という感じだった。勿論この考えは誤っている。当時既にキングギドラやMICROPHONE PAGERといったラップグループがアンダーグラウンドシーンに存在していた。しかし当時子供だった私にそのようなアンダーグラウンドな音楽に触れる機会はなかった。

 

それから3年以上経った99年3月、再び「ラップがメインの曲」に出会った。Dragon Ashの「Let yourself go, Let myself go」だ。前述の通り、ラップグループが世に多数存在していることを知らなかった私は「こんなのEAST ENDのまねじゃん」などと考えてしまった。

何にせよ最初はこの曲をあまり良いとは思わなかったが、この曲がオリコンチャートで急上昇するうちに、だんだんこの曲がかっこよく思えるようになった。まず、グループ名に「ドラゴン」というゲーム的なワードが入っていることが新鮮だった。また、よく聞くと曲中に同じサウンドが終始ループしている。さらに今までは、ラップを曲中の箸休め的なものだと思っていたが、この曲では逆に「歌」が間奏として挿入されていてこれがとてもかっこいい。(「雲の切れ間に、見え隠れする未来~」の部分)

こうして「Let yourself go, Let myself go」は私が初めて好きになったラップの曲となった。

 

それからそのすぐ後に、Dragon Ashは「Grateful Days」と「I ❤ HIP HOP」の2枚のシングルを同時リリースしこちらもヒットを記録した。2曲とも確かにかっこいいと思ったが、心のどこかで「Dragon Ashなのだからかっこいいのだろう」という思いがあり、心からこれらの曲を好きというわけではなかった。(ちなみに今現在は2曲とも大好きである)

2000年3月には「Deep Impact feat. RAPPAGARIYA」をリリースしたが、私はこの時はすでにラップやDragon Ashへの興味は薄れていた。

 

そのまま時は過ぎ2001年7月、Steady&Coのデビューシングル「Stay Gold」がリリースされた。Steady&CoはDragpn AshのKjとBOTSが、RIP SLYMEのILMARI、スケボーキングのSHIGEOと結成したユニットである。最初はこの曲についても特段何も思わなかったが、まるで明け方(あくまで自分がそう感じた)のようなクールなサウンドとHOOKがだんだん好きになった。(よく考えれば、ラップの曲は後になって好きになるケースが多いかも)

2001年秋になるとSteady&Coが2ndシングル「春夏秋冬」をリリースし、またILMARIの本所属であるRIP SLYMEも「One」をリリースした。特に「春夏秋冬」の方はSHIGEOのハイトーンなラップが良いなぁと思った。こうして再び自分の中でラップというものに関心が高まりつつあった。

 

そして2001年11月のある晩、ラジオから山下達郎の「クリスマス・イブ」と思わしきイントロが流れてきた。「もうそんな季節か。でも少し早くはないだろうか?」と思いながら聞いていると、イントロの後に始まったのは達郎の歌声ではなくラップだった。この想定外の展開に曲が流れている間ずっと聞き入っていた。ラップという音楽はこんなこともできるのか。今まで聞いたラップの中でも一番衝撃的だった。これはKICK THE CAN CREWの「クリスマス・イブRap」という曲で、後日TVでたまたま観たこの曲のPVも何だかかっこよかった。

 

年が明けて2002年となり、私はこの曲のCDを買った。こうして「クリスマス・イブRap」は私が初めて買った日本語ラップのCDとなり、その後私が本格的に日本語ラップにはまる最初の一歩となった。

 

最近、つやちゃん氏による「わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論」と言う本を読んだ。この本はフィメールラッパーの歴史を、幅広いタイプのMCをピックアップしながら掘り下げていく内容だ。巻末には200を超える作品のレビューを収録しているが、単に「女性MCの作品」だけではなく、プッチモニ、川本真琴など「ラップ的要素のある作品」という観点も含めて幅広い作品を取り扱っている。

この本にあやかってというわけではないが、今回はMCバトルなどフリースタイルシーンで活躍するMCについて書きたいと思う。

 

かつてはB-BOYが参戦するイメージが強かったMCバトルだが、近年のバトルブームによって年齢、ビジュアル、職業問わず様々なタイプのMCが参戦するようになった。それに伴い女性のバトル参戦も増え、いわゆるB-GIRLではない人も普通に参加する時代となった。

まずは女性MCによるバトルの中で、個人的にベストバウトだと思う試合をいくつか紹介したい。

 

①しあ vs まゆちゃむ/戦極女帝杯第一章(2017.3.25)

まゆちゃむの強さを再認識する試合であり、しあの知名度を上げた試合でもあると思う。まゆちゃむは、じょうやミステリオを輩出した西宮サイファーから出てきたMC。関西弁を程よく織り交ぜたラップスタイルで、一見軽いようでパンチのあるDISが特徴。

一方のしあは福岡出身でまゆちゃむと同じ年。どぎついDISや面白いことはせず、ラップスキルで戦うタイプのMCで、HIP HOPの精神を感じる。これがしあの初バトルだったのかは分からないが、この試合でしあを知った人も多いのではないかと思う。

この試合はまゆちゃむが勝利。この後もまゆちゃむは勝ち続け「戦極女帝杯 第一章」を優勝しました。

 

②Yasco. vs MCビキニ a.k.a 藤田恵名/戦極女帝杯第一章(2017.3.25)

上記①と同じく戦極女帝杯での試合。藤田恵名はシンガーソングライター兼グラビアアイドルであり、ラップスキルよりも若干キレ気味なフローを武器にバイブスでもって行くタイプのMC。バイブスだけではなく趣向を凝らした押韻を織り交ぜる才能を持っています。本試合でのパンチラインは「Yascoさーん、ラストチャーンス!」だと思います。これだけ短い語数で、客を沸かす押韻を成立させるのはさすがです。相手のターンの時も茶化すような動きをするなどパフォーマーだなぁと思いました。

ちなみに意外なのが、藤田さんはspeenaが好きだったみたいで、元メンバーのドラマー・ひぐちしょうこさんとの2ショットを昨年Twitterで公開していました。1srアルバム「much much more!!」もよく聞いていたらしく、LIVEでは「ジレンマ」のカバーも披露したことがあるみたいです。

 

③AILI a.k.a 立仙愛理 vs SHOICHIRO/Dis4U part2(2022.2.23)

「元AKB異色のシンデレラ」のキャッチコピーを持つAILI a.k.a 立仙愛理のデビュー戦。AKBグループとしては過去にも須藤凛々花や中田花奈などフリースタイルのできるメンバーはいたが、公式のバトルに出たのは立仙が初めてではないかと思います。

ラップスキルでいえばやはり対戦相手のSHOICHIROの方が上ですが、立仙愛理の自らバトルに乗り込んできた感が、HIP HOPと初期衝動を感じます。アンサーも「ちょっと近づかないでもらっていいですか?」や「ごめんなさい、YouTubeはやってません」などなかなか上手い切り返しも見せています。延長にもつれ込んだ末、ラストの「じゃあ私は小指立てちゃおうっと」がかなりのパンチラインだったのか見事に勝利を収めます。その後も積極的にバトルに参戦し、Belly Black MC BATTLEも主催しています。

 

④KT vs AILI a.k.a 立仙愛理/戦極vs凱旋 MCBATTLE LAST VISION(2022.7.17)

2022年にバトルシーンに立仙愛理が現れた後、SONOTAが登場し、その後にKTのようなMCが出てきたのは予想外の流れでした。

KTは元子役という特殊なバックボーンを持ち、現在は友人と共に「ルイとKT」というユニットを組んでいます。初の公式戦である「第17回 高校生RAP選手権」では大きなインパクトを残し、その後、数々のバトルにゲストバトラーとして呼ばれるようになりました。

そして2回目の公式戦ではまさかの立仙愛理との試合が実現しました。対戦カードが決まった時は、KTのキャラの強さに飲まれて立仙が不利ではないかと思ったが、実際にバトルが始まると立仙はいつもと異なるフローといつもより攻撃的なスタイルで意表を突きます。一方、KTは「愛理さんかわいい」と褒める感じとなり、結果立仙の勝利。KTが本来の実力を出し切れなかった感じもありますがこの組み合わせだけでも名試合だと思います。Dr.COYASS(MIC BANDITZ)もTwitterで「アイドルとJKがガチのバトル。すごい時代になったな。」とコメントしていました。

 

⑤Z.I.O-RAMA vs ノロイ/戦慄MC BATTLE Vol.18(2011.6.18)

最後に紹介するのは少し時を遡り2011年。戦極MC BATTLEの前身である「戦慄MC BATTLE」の後期の試合です。ノロイはNAOMYと交友のあるMCで、本格的にラップをやっていたわけではなさそうですが、そのキャラの強さはある意味で元祖KTと言えるかもしれません。この試合の一番のパンチラインはノロイの「お~い!」でしょう。

戦慄が「戦極」になってからも戦極 第一章までは出場していたと思います。現在はもうバトルには出ていませんが、もしKTと対戦したらどんな試合になるだろうと興味があります。

 

これまで「CINDERELLA MC BATTLE」や①②で紹介した「戦極女帝杯」など、女性MCのみのMCバトルが何度か開催されました。勿論MCバトルに女も男も関係ありませんが、女性のみの大会は盛り上がるものがあります。最近はそういった大会は行われていませんが、もし開催されることがあれば下記のようなメンバーで開催してほしいです。(レジェンドから今はバトルに出ていないMCも含めて幅広くチョイスしてみました)

 

1.RUMI

2.COMA-CHI

3.NAOMY

4.萌黄

5.MC JU-NE a.k.a おずーず

6.MCりぼん

7.うたまろ

8.まゆちゃむ。

9.しあ

10.ワッショイサンバ

11.ayakeru

12.MIRI

13.加藤真弓

14.MCビキニ a.k.a 藤田恵名

15.めーちゃん(明石芽依)

16.ニコラシカ(紅野モモ)

17.PARAKEET(増山鈴乃音)

18.coco.

19.ノロイ

20.ReiⒸhi

21.ちゃんみな

22.KIYO(宮本清花)

23.リルデビ

24.MOAI

25.セルラ伊藤

26.Yasco.

27.ズキ子(DJ HAZUKI)

28.CESIA

29.Keyed

30.ゆりやんレトリィバァ

31.胡桃そら

32.risano

33.長瀬

34.浅葉爽香

35.AILI a.k.a 立仙愛理

36.SONOTA

37.KT

38.彼岸

39.小鳥遊うる

40.クロユリa.k.a blacklily

 

97年~99年:「帝国の影」からの「エピソード1」

 

私がスターウォーズに出会ったのは97年。それは映画ではなくニンテンドー64用ゲームの「帝国の影」だった。もちろん、その時から「スターウォーズ」という映画があること自体は知っていた。しかし、実際に観てみたいとまでは思わなかった。

 

97年の春にニンテンドー64ソフトの「スターフォックス64」が発売された。当時近所の中古ゲームショップに、プレステや64などが自由に遊べるスペースがあったのだが(ただしソフトは選べない)、元々スーファミの「スターフォックス」が好きだったので、よくその店に「スターフォックス64」をプレイしに行った。しかし初夏になると「スターウォーズ 帝国の影」が発売され、自由にゲームできるコーナーに置いてある64のソフトが「帝国の影」に変わってしまった。残念に思いながら「帝国の影」を遊んでみたが、スターウォーズのことはよく知らないし、あまり面白いとは思えなかった。

しかし遊んでいくうちに「帝国の影」は一人称のアクションだけでなく、宇宙船やスピーダーバイクなどバラエティに富んだステージが用意されており、各ステージの最後には個性的なボスキャラが待ち受けているなど、だんだんこのゲームに魅力を感じるようになった。特にステージ4の「ガルの宇宙港」は気が遠くなるぐらい広大なステージで、このステージのボスであるボバ・フェットというキャラクターが好きになった。

こうしてSWを知らないながらも、純粋に”ゲームとしての面白さ”を「帝国の影」に見出した私は、数ヶ月後にこのゲームを家でやりたいがために64本体を買うまでになった。64の本体とソフトを買ってからは毎日のように遊んでいたが、ゲームというものは飽きが来るもので、翌年にはほとんどやらなくなっていた。

 

「帝国の影」と出会ってからから2年ほど経った99年7月。世の中では新作映画「エピソード1」の公開が話題になっていた。2年前に「帝国の影」にはまっていた私は、少し気になったものの「是非観てみたい」とまでは思わなかった。

ある日、下校中にクラスメートが自販機の缶コーラを指さして「これが誰だか分かる?」と私に質問した。クラスメートが指さす缶コーラは、エピソード1の公開を記念したデザインのペプシコーラで、そこには金髪の少年の顔がプリントされていた。「SWって子供のキャラクターも登場するんだ」と頭の中で思いながら私は「分からない」と答えると、クラスメートは「アナキン・スカイウォーカーだよ」と言った。私は反射的に「え、それってダース・ベイダーじゃないの?」と答えていた。

SWの映画をよく知らない私がなぜそんな言葉がとっさに出てきたのかというと、実は「帝国の影」の取扱説明書の巻末には丁寧にも「スターウォーズ用語一覧」が付いていた。その用語一覧には一通り目を通していたので、ダースベイダーが「元ジェダイで本名はアナキン・スカイウォーカー。ルークの父。」と言う情報は知っていた。(ただしゲーム自体にはベイダーは登場しなかったので、ベイダーがどんなビジュアルなのかはよく知らなかった)

そして次の瞬間新たな疑問が頭に思い浮かんだ。「なぜ新作映画にベイダーがアナキン少年の姿で登場するのか?」

この頃の私は”シリーズものの新作”というと、「既存作品の後日譚を描いた続編」という発想しかなく、「既存作品の前日譚を新作映画で出す」という発想自体がなかった。

漠然とした疑問を持ったまま数日が過ぎ、別のクラスメートから「エピソード1を観に行こう」と誘われた。友達同士で映画館に行ったことはなかったし、スターウォーズ映画に少なからず興味はあったので誘いを受けることにした。

こうして映画を観る当日を迎え、「エピソード1」は始まった。冒頭で年配の男性と若者の男性による二人組が登場し、どうやらジェダイ騎士の師弟のようだ。師と思われる男が、若者を「オビ・ワン」と呼んでいた。このオビ・ワンという名前も例の「帝国の影」の用語一覧に載っていた名前で、用語一覧には「タトゥイーンも住む元ジェダイの老人で、ダース・ベイダーとの戦いで命を落とした」と書いていた。しかし、スクリーンに移っているオビ・ワンは若者の姿だ。これでようやくことが掴めてきた。エピソード1は旧作の過去を描いた作品なんだと。

そう思っているとすぐに、タイヤのような姿をしたデストロイヤー・ドロイドがごろごろと転がってきた。デストロイヤーの猛攻に対して、2人のジェダイは光弾をブラスターで弾き返している。このアクションシーンを観ただけで、これからの映画の展開が楽しみになってきた。物語は進み、アナキン少年も登場した。アナキンが参戦するポッドレースのシーンはとても迫力があった。そして一番すごかったのが、ジェダイとシス郷ダース・モールとの決闘だ。ダース・モールのダブルブレードライトセーバーがとても格好良かった。

映画を見終えた私はすっかりSWファンとなり、SWにハマる最初のきっかけとなった。今でもこの「エピソード1」はスターウォーズ映画の中で一番好きな作品である。

K-SAMA☆ロマンフィルムというバンドをご存じでしょうか?本日はこの通称Kロマについて書こうと思います。(この前のRubiiの記事と少し話の構成が似ていますが、いっそ続編的な感じで読んで頂ければ幸いです)

 

あれは2004年の初夏頃だったかな。ラジオを付けると、留守電による悩み相談みたいなコーナーがやっていて、中学生ぐらいと思われる女の子が少しきわどい感じの相談をしていた。「何なんだ、この番組は・・?」。留守電のメッセージが終わると、番組の女性パーソナリティが艶のある声で悩み相談に答えている。「誰なんだ、この人は・・?」。回答が終わると、「ぬ・す・み・ぎ・き」というタイトルの曲が流れた。バラード調ながらも妖しい雰囲気のその曲は、ポップスにしては今まで聞いたことがないようなきわどい詞だった。「何なんだ、この曲は・・?」。曲が終わり番組を聞き進めていくと、パーソナリティはK-SAMA☆ロマンフィルムというユニットのK-SAMAという人であることが分かった。

翌日このユニットについて調べてみると、池袋を拠点に活動している「エロポップバンド」というジャンルのB級音楽ユニットであることが分かった。メンバーはK-SAMA(Vo)、Rott(Sax&ダンス)、真ノ介(Sax&作曲)の3人編成。B級といってもメジャーデビューしている。これはあとから知ったことなのだが、メジャーデビューEPは全曲インディーズ時代の曲で構成されている。新曲を出さずにあえてインディーズの既存の曲を収録したのは、それだけ1曲の純度が高かったからなのもしれない。

 

独特のアンダーグラウンド感に興味を持った私は、次週以降もラジオを聞くようになった。ある日、番組中に流れた「PINKのイソギンチャク」という曲も衝撃的だった。この曲もポップスなのにピーという修正音が入っている。ハードコアな日本語ラップとかなら曲中にピーが入るのは珍しくないが、ポップスでもピーが入る曲があるということに驚いた。

Kロマが単なる下ネタユニットに終わっていなかったのは、メンバー3人がそれぞれの役割で素晴らしい仕事をしていたからだと思う。まずコンポーザの真ノ介のどことなく懐かしい感じのするメロディと、様々なサウンドアプローチが絶妙な音楽センスを感じる。そしてK-SAMAのダイヤモンドボイスとも呼ばれるずば抜けた歌唱力。Rottが「K-SAMAは死ぬほど歌が上手い」と言っているのも頷ける。さらに、Rottのある種の体当たり的なパフォーマンスがよりアンダーグラウンドな世界を作り出している。

 

秋になるとニューシングル「美・ちっくん」が発表された。この曲はメジャーデビューEPと違って、完全な新曲として作られたのかなと思っている。この曲も良いのだが、むしろカップリングの「黄けん色な火戯び」と「K-レンジャー」が素晴らしかった。「黄けん色な火戯び」は詞の中で描いている時間帯はおそらく夜だと思うが、当時この曲を聞くとなぜだか、「昼間の浜辺できらめいている海」を思い浮かべた。(実際は別にそういう内容の曲ではないのだがメロディ的にそういう景色を連想したのかもしれない)。

 

それからもラジオは聞き続けたのだが、毎週欠かさず聞いていたわけではなく、気付いたら番組は終わってしまっていた。その1年後ぐらいにKロマは解散したのだが、それを知ったのも大分後になってからだった。解散を知った時に、最後に出たシングルのタイトルが「背徳LOVERS」だということも知ったのだが、そのタイトルには見覚えがあった。そう、前回のシングル「美・ちっくん」のカップリング曲だった。前回のシングルのカップリング曲を、次のシングルとして出すというユニークな出し方がKロマらしい。(ちなみにこの最後のシングルのカップリング曲は「K-中毒」であり、こちらはインディーズ作品からの再収録だ。この曲ではなんとK-SAMAがラップをしている!)。こうして自分の中でのKロマ一次ブームは終わった。

 

Kロマが解散してから7年ぐらいが経った2012年。YoutubeでKロマの曲が上がっていたので、久々に聞いてみるとやはりKロマはすごいと感じた。その翌年ぐらいに、元メンバーはどうしているのか調べてみたことがある。Kロマの情報はWikipediaには載っていないため、限られた情報の中で色々調べてみると、真ノ介とRottの2人は”PRiVATE:I's”というユニットで活動していることが分かった。しかしK-SAMAの近況は分からなかった。

 

そこからまたさらに7年以上が経ち2021年現在。世の中はコロナ禍の時代となった。それまでの間に、K-SAMAが現在は独自に活躍されているということや、2019年後期に行われたイベントでメンバー3人が久々に集結し、再結成というよりは即席ユニットのような形で、「ぬ・す・み・ぎ・き」や「ダイエット天国」を披露したということを知った。

そして今年の3月末に、奇跡的とも思えるようなニュースを耳にした。なんと、Kロマの復刻ベスト盤「ぬ・す・み・ぎ・き・R〜密室伝説〜」が発売されるというのだ。このアルバムは、ラズウェル細木氏を発起人とする"Kロマ☆アルバム制作委員会"による自主制作でCD+DVDの2枚組だ。ジャケットアートはインディーズ作品の「ぬ・す・み・ぎ・き」のジャケットアートに、ラズウェル氏による女医さんのイラストを追加した形だ。このラズウェル氏のイラストはKロマの作品にぴったりのあやしい雰囲気を醸し出しながらも、どことなく可愛らしさも感じられなんだか不思議なイラストである。

CDはこれまでにリリースされた曲と、未発表デモ音源の全17曲が収録されている。「ま~ぶるPINK」や「K-レンジャー」はもともと好きだったのだが、アーバンなテクノと懐かしい感じのメロディが融合された「密室」や、昭和ポップスのメロディを感じる「ダイエット天国」など、他の曲も良さも再発見できた。デモ音源の方は「血と薔薇」の壮大な感じが素晴らしかった。

DVDはMVや過去のLIVE映像がメインだが、特筆すべきは「オフロノソコ」や「ネコニナリタイ?~心中カフェ...瞳閉じても変わらない~」などCDには未収録の曲が入っている点だ。「DVDにのみ収録の曲」というリリース手法が、過去のKロマイズムを引き継いでいる気がする。

ブックレットでは当時の関係者達の言葉が綴られており、とても読み応えのある内容だ。ひび則彦氏の「このアルバムがリリースされることにより、また新たな伝説が始まるのではないかと期待しています。Kロマの次回作を心の中で予約しました。」という言葉を読み、Kロマの復活を望んでいるのは自分だけではないことが分かり嬉しかった。

でも実際にKロマが復活する可能性はどれぐらいだろう。実現したとしても一昨年のような即席ユニットという形になるのだろうか。もし復活が叶った時には、今回の復刻アルバムのCD&DVDに収録された未発表音源の完成版をリリースしてほしいと個人的に思っています。

2016年12月に「ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー」が公開された。この作品は映画第1作「エピソード4 新たなる希望」のオープニングロールで語られた「反乱軍スパイがデス・スターの設計図を盗み出した」という出来事を映画化した、スターウォーズ初のスピンオフ映画である。

私もSWファンとしてこの作品を観た。今回はこの「ローグ・ワン」に対する感想や思ったことを書きたいと思う。但し、これから書くことはあくまで私の個人的な感想であることをあらかじめ申し上げておきたい。

 

では早速「ローグ・ワン」を観た感想だが、一言でいうと「SF映画としての完成度は高い。しかし、スターウォーズの世界観が出せていない」というのが正直なところである。映像技術もアクションシーンも申し分ない。しかしスターウォーズの世界観が出せていないのはなぜか。その要因の1つは登場キャラクターにあると思っている。キャシアン・アンドーや科学者ゲイレン・アーソは、SWのキャラクターとしては少し印象が違う気がするし、ベイズ&チアルートのコンビについては特にそれを感じる。ボーディも元帝国軍パイロットには見えないし、K-2SOも帝国用ドロイドにしては少し不格好だ。オーソン・クレニック長官については何とかSWらしさは感じるものの、ターキン総督と並んでしまうとやはり威厳が全然違う。ソウ・ゲレラもせっかく実写化するのであれば、もっと「クローン・ウォーズ」の時と似せてほしかった。出演俳優は実力のある俳優ばかりなのだが、どうしてもSWのイメージとは少し違うように思えてしまう。

 

またもう1つの要因として考えられるのは、クライマックスの<スカリフの戦い>だ。この<スカリフの戦い>は宇宙戦と地上戦が同時進行で進むのだが、地上戦の舞台となる惑星スカリフは白砂のビーチであり、「デス・スター設計図を巡る決戦」としては個人的にはイメージしていたものと少し違っていた。

さらに、エピソード4でお馴染みの”オレンジ色フライトスーツの反乱軍パイロット”や”ヤビン基地”も本作に登場するのだが、上記のようにSWらしさを感じない世界に、エピソード4の要素を混ぜ込んでも正直水と油のように思えてしまう。結果として、ストーリー的にはエピソード4に繋がってはいるが、世界観が繋がっていないのである。

 

このように私が「ローグ・ワン」を低く評価してしまう理由としては、ゲーム作品「ダーク・フォース」の存在が大きい、

実は「デス・スターの設計図を盗み出した」という出来事を独立した物語で描くという試みは90年代半ばに既に行われており、それがこの「ダークフォース」だ。

「ダーク・フォース」の概要を簡単に説明すると、「ダーク・フォース」は95年にルーカスアーツ社より発売されたゲームで、プレステ版は97年に日本でも発売された。主人公は元帝国軍の傭兵カイル・カターン。物語は反乱軍の依頼で惑星ダヌータの基地に潜入するところから始まる。カイルが見事にデス・スターの設計図を手に入れた数日後、デス・スターは反乱軍(ルーク)によって破壊された。しかし、帝国のモーク将軍は新たな兵器として新型ストームトルーパーの”ダーク・トルーパー”の製造を進めていく。

以上が「ダークフォース」の概要になるが、このゲームのメインとなるのは”ダーク・トルーパー計画”の阻止であり、デス・スター設計図奪取のミッションはゲームの序盤で描かれているにすぎない。それでもこのゲームで描かれた”デス・スター設計図奪取の任務”は、後の「ローグ・ワン」よりもはるかにスターウォーズの世界観をもってそれを再現していた。

しかしスターウォーズがディズニー傘下になってから「ダーク・フォース」はレジェンズ(非正史)扱いとなってしまった。いっそ「ローグ・ワン」は「ダーク・フォース」のリメイクにすれば良かったのではないかとも思えてくる。(ディズニーが新作映画としてレジェンズ作品のリメイクをすることはまずないとは思うが。) もしくは、3Dアニメ「反乱者たち」に登場したケイナン&エズラらのゴーストチームがデス・スター設計図奪取のミッションに挑むという話にした方が面白くなったと思う。これならジェダイのライトセーバーアクションも観られたでしょうし。

 

ちなみに良かった点が全くなかったというわけではない。まず、ダースベイダーのライトセーバーアクションが現代とマッチしていると感じた。旧三部作のベイダーのライトセーバーの動きは少し遅かったが、本作でのライトセーバー捌きは滑らか且つ速い。これこそがベイダーの真の戦闘能力といった感じだ。また「クローンウォーズ」の時とは少し印象が違うものの、ソウ・ゲレラを実写化したことや、「反乱者たち」の要素をさりげなく登場させているところも良い。

 

最後に「ローグ・ワン」の関連書籍を紹介したいと思います。まず「ローグ・ワン」は小説版とコミック版が出ています。小説版は私も読みましたが、映画では描けなかったキャラクターの設定など深く掘り下げているので、ローグ・ワンのストーリーを深く知りたいという方にはおすすめです。

もう1つはローグ・ワンの前日譚を描いた小説「カタリスト」が出てます。こちらも読みましたが、イメージ的には「エピソード2、3の世界を舞台にローグ・ワンの主要キャラの物語を描く」といった感じでした。ローグ・ワンがあまり好きではない自分にも楽しめるのか少し心配でしたが、予想以上に楽しめました。そこはやはり、レジェンズ時代から多くのスターウォーズ小説の名作を生み出してきたジェームズ・ルシーノ氏の手腕でしょう。これを読んだ後にローグ・ワンを観ればまた少し違った見方ができるかもしれません。