男の子は夜が好きでした。お母さんは仕事から帰ってきた時は男の子に優しいからです。修学旅行の夜、友達が本当のことを話してくれたからです。夜は一人でいる時間が長いからです。

 男の子は嘘が嫌いでした。お母さんが男の子に、言うことを聞かせるために嘘をつくからです。友達が前に嫌いだと言っていた友達に、その子の前だといい顔をするからです。嘘があると、本当のことがわからなくなるからです。

 

 男の子は乗り物が好きでした。お金を払うと歩いては行けない、遠い場所に連れて行ってくれるからです。いつもと違う景色を見ることができるからです。新しいものを見ることができるからです。

 男の子は知らないものが嫌いでした。知らないことは恥ずかしいことだからです。自分が子供だと言われているみたいだからです。知らないものはどんなものかわからないからです。

 

 男の子は水が好きでした。必ず下に落ちていくからです。水は嘘をつかないからです。水が下に落ちていくことを知っているからです。

 

 

 男の子は、水に詳しくなりました。水は上に昇りました。

 

 男の子は騙されたと思いました。水に嘘をつかれていたと思いました。水を知らなかったのだと泣きました。

 男の子は水を信じられなくなりました。水が怖くなりました。本当の水が知りたくなりました。

 男の子は先生にお願いしました。

 

 感動しました。嬉しくなり、楽しくなり、幸せを感じたりしました。

 男の子は水に謝りました。自分に怒りました。男の子は、本当のことがわかりたくなりました。

 

 

 それから男の子は嘘に向き合いました。たくさん乗り物に乗りました。

 男の子は知らないことを好きになりました。

 

 

 

 

 

 

おしまいです

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