※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。
今回も蓮キョ両方の目線が出てきます。
両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。
お気をつけください。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
シャワーを借りた後、簡単な朝食兼昼食を食べた段階で、すでに外は暗くなっていた。
完全に夕飯状態だ。
どうやって帰宅しようかと悩んでいたところ、「送って行くよ」という蓮の申し出があり、キョーコはあっけなく自宅へと送り届けられた。
気持ちが悪いくらいあっさり帰された事に拍子抜けしたキョーコは、家へと帰ると真っ先に蓮の物とは比べ物にならない、質素なパイプのシングルベッドへと身を沈めた。
ギイっと大きな音を立てて、キョーコの体に痛みを与える。
「いっ……」
布団に沈めた顔が歪む。
一緒にダイブしたチェーンのバッグは、蓮が買い与えた服には似合わない。
昨夜の黒いワンピースに合わせたものだったのだから当然なのだが…
スタッズが放つ鈍い輝きをぼんやり眺めながら、ふとキョーコは疑問に思った。
蓮は何故、自分の好みをここまで知っているのだろうか。
裾の揺らめきが品よく見える膝丈の白いフレアスカート。
それによく合うベビーピンクのニットのアンサンブル。
用意された夕飯も、テレビの情報番組で「いいな」と思いながら見ていたパン屋のクロワッサン。
一体どういう事なのだろうか。
服装については、いつもシンプルな洋服を着ている自分を見ていたら、何となくはわかるかもしれない。
それでもここまで合致させる事は難しいだろうけど…
それに、パン屋の件は本当にごく一部の人間にしか話していないはずだ。
知っているのはゼミが一緒の数人、それといつもお世話になっている事務の社くらい。
(……まさか、ね)
ゼミの女子達も蓮には黄色い歓声を上げるが、自分を売り込む為にわざわざキョーコなんぞの名前を使う必要がないだろう。
一方の社は、事務でナンバーワンの人気を誇るお兄さんだ。
一年生の時に履修登録でわからない事があって以来、色々と声をかけてくれる気さくな人柄がキョーコも好きで、会えば挨拶を交わし、軽い会話もする。
蓮と確か年齢もそう変わらないはずなのだが、それにしてもあの二人の間で自分の話題が出るとは思えない。
(あ…そうか、そうよ……)
ふと、蓮の車で通った道が、麻布近辺だったことを思い出した。
番組で見ていたパン屋も確かその辺り。
―――きっと近所で有名だから、だから買ってきたんだわ。
あの手の情報番組とかには疎そうだけど、きっとホストのバイトの時に女の子に言われたのよ!
(そうよ!きっと……そうに決まってる……!!)
ストンと腑に落ちた、ある意味こじつけ的な理由。
だけど、これだけ自分の事を知られているのに、自分は蓮の事をほとんど知らない。
学校でちらりと見かけて、噂で聞くレベル以上の事はわからないのだ。
自分ばかりがあれこれ調べあげられてるみたいで嫌だわ、なんて思うと、自然と頬が膨れるのだが……
(だけど……いつか見た事がある気がする…あの笑顔………)
自分を翻弄するその最後の一突きの時にさらりと呼んだ、『キョーコちゃん』と言うあの声。
シャワーを浴びた後、蓮が揃えてくれていた一式を着込んでダイニングへ立ったキョーコを迎えてくれた、優しい笑顔。
別れ際、暗い車内で一度だけ強く握られた大きな手。
遠い昔、それらに出会った事がある気がした。
「違う違う…楽しい思い出に入ってなんて来ないで……!」
だって、コーンは妖精の国へすぐ帰るって言ったんだもの。
敦賀先生は人間だもの………
その昔、たった一日、たった数時間だったその出会いをちらりと思い出す。
よく考えれば、蓮の『クオン』としての姿はその彼に似ていた気もする。
だけどその彼…コーンはとても優しくて、温かかった。
そして、彼はすぐに帰らないといけない場所があると言っていた。
蓮は帰国子女であると聞いたことはあったが、一度日本に来てからはずっと日本に住んでいるという。
彼であるはずがない…
「そうよ、先生ったらあんなに破廉恥で失礼だなんて…コーンと比べたらバチが当たるわ…」
明日はバイトもある、支度をちゃんとしておかなければ…
そうは思うものの、身体が重たくて動かせない。
(それもこれも、全部先生のせいなんだから………)
だるくて動く気にもなれない意識は、徐々にベッドの中へと沈み込んでいく。
キョーコはそのまま目を閉じると、静かに眠りについた。
***
一方キョーコを自宅アパートへ送り届けた蓮は、自宅でワインを開けていた。
貰い物のワインは希少価値の高い年代物だと聞いていたのだが、今日はなんだかちっともおいしく感じる事が出来ない。
ワインに詳しい人が見たら怒り出しそうなくらい乱暴にグラスへ注ぐと、香りを楽しむこともせずにぐいっと一気に飲み干す。
(………くそっ)
カツンと高い音を響かせて、ワイングラスはガラステーブルへと置かれた。
その隣には、数通のエアメールと向こうで卒業した大学のパンフレット。
分厚い研究論文のうちのひとつは、過去に師と仰いだ教授の物。
蓮の論文には赤い線が引いてある。
どうやら教授的に気に入った部分、気になる部分に線を引いて色々と書き込んでいるらしい。
日本に来てから十数年。
来日時の機内の中では「見返してやる」「認めさせてやる」と強く誓い、それを糧に生きてやろうと思っていたのだが…
あの日出会った少女と再会して以来、いつの間にか少女をそっと追いかける事の方が大事になっていた。
やっと認められたのは嬉しい。
だけど、今彼女から離れたくない。
揺れる蓮の心はワインボトルのように深く昏い色で、何かを透かして見せる事は出来ない。
明日は最上さん、バイトだったな…
自分の講義の事よりも、考えるのはまずキョーコの事。
珍しく酔えない事に苛立つ蓮は、ワインよりもウィスキーが飲みたくなり、新しいグラスを取りにキッチンへと向かう事にした。
←やる気~スイッチ僕のはここにあるんだよ~♪
************
やっと仮面更新です。
ちょっと無理矢理ですが、徐々に二人の初対面時の情報はチラ見せ……出来てるといいな。
ふふふ…次のHENTAI蓮さん大暴走まですっ飛ばすぜー!
みんなドン引き確定だけど、負けないもん!
(次の次くらいが別館になると思われるので、パス思い出しておいてください←)
スキビ☆ランキング ←お気に召していただけたのなら、ぽちっとしていただけるとありがたいのです。
完全パラレルです。
今回も蓮キョ両方の目線が出てきます。
両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。
お気をつけください。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
シャワーを借りた後、簡単な朝食兼昼食を食べた段階で、すでに外は暗くなっていた。
完全に夕飯状態だ。
どうやって帰宅しようかと悩んでいたところ、「送って行くよ」という蓮の申し出があり、キョーコはあっけなく自宅へと送り届けられた。
気持ちが悪いくらいあっさり帰された事に拍子抜けしたキョーコは、家へと帰ると真っ先に蓮の物とは比べ物にならない、質素なパイプのシングルベッドへと身を沈めた。
ギイっと大きな音を立てて、キョーコの体に痛みを与える。
「いっ……」
布団に沈めた顔が歪む。
一緒にダイブしたチェーンのバッグは、蓮が買い与えた服には似合わない。
昨夜の黒いワンピースに合わせたものだったのだから当然なのだが…
スタッズが放つ鈍い輝きをぼんやり眺めながら、ふとキョーコは疑問に思った。
蓮は何故、自分の好みをここまで知っているのだろうか。
裾の揺らめきが品よく見える膝丈の白いフレアスカート。
それによく合うベビーピンクのニットのアンサンブル。
用意された夕飯も、テレビの情報番組で「いいな」と思いながら見ていたパン屋のクロワッサン。
一体どういう事なのだろうか。
服装については、いつもシンプルな洋服を着ている自分を見ていたら、何となくはわかるかもしれない。
それでもここまで合致させる事は難しいだろうけど…
それに、パン屋の件は本当にごく一部の人間にしか話していないはずだ。
知っているのはゼミが一緒の数人、それといつもお世話になっている事務の社くらい。
(……まさか、ね)
ゼミの女子達も蓮には黄色い歓声を上げるが、自分を売り込む為にわざわざキョーコなんぞの名前を使う必要がないだろう。
一方の社は、事務でナンバーワンの人気を誇るお兄さんだ。
一年生の時に履修登録でわからない事があって以来、色々と声をかけてくれる気さくな人柄がキョーコも好きで、会えば挨拶を交わし、軽い会話もする。
蓮と確か年齢もそう変わらないはずなのだが、それにしてもあの二人の間で自分の話題が出るとは思えない。
(あ…そうか、そうよ……)
ふと、蓮の車で通った道が、麻布近辺だったことを思い出した。
番組で見ていたパン屋も確かその辺り。
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あの手の情報番組とかには疎そうだけど、きっとホストのバイトの時に女の子に言われたのよ!
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だけど、これだけ自分の事を知られているのに、自分は蓮の事をほとんど知らない。
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(だけど……いつか見た事がある気がする…あの笑顔………)
自分を翻弄するその最後の一突きの時にさらりと呼んだ、『キョーコちゃん』と言うあの声。
シャワーを浴びた後、蓮が揃えてくれていた一式を着込んでダイニングへ立ったキョーコを迎えてくれた、優しい笑顔。
別れ際、暗い車内で一度だけ強く握られた大きな手。
遠い昔、それらに出会った事がある気がした。
「違う違う…楽しい思い出に入ってなんて来ないで……!」
だって、コーンは妖精の国へすぐ帰るって言ったんだもの。
敦賀先生は人間だもの………
その昔、たった一日、たった数時間だったその出会いをちらりと思い出す。
よく考えれば、蓮の『クオン』としての姿はその彼に似ていた気もする。
だけどその彼…コーンはとても優しくて、温かかった。
そして、彼はすぐに帰らないといけない場所があると言っていた。
蓮は帰国子女であると聞いたことはあったが、一度日本に来てからはずっと日本に住んでいるという。
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そうは思うものの、身体が重たくて動かせない。
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だるくて動く気にもなれない意識は、徐々にベッドの中へと沈み込んでいく。
キョーコはそのまま目を閉じると、静かに眠りについた。
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その隣には、数通のエアメールと向こうで卒業した大学のパンフレット。
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蓮の論文には赤い線が引いてある。
どうやら教授的に気に入った部分、気になる部分に線を引いて色々と書き込んでいるらしい。
日本に来てから十数年。
来日時の機内の中では「見返してやる」「認めさせてやる」と強く誓い、それを糧に生きてやろうと思っていたのだが…
あの日出会った少女と再会して以来、いつの間にか少女をそっと追いかける事の方が大事になっていた。
やっと認められたのは嬉しい。
だけど、今彼女から離れたくない。
揺れる蓮の心はワインボトルのように深く昏い色で、何かを透かして見せる事は出来ない。
明日は最上さん、バイトだったな…
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珍しく酔えない事に苛立つ蓮は、ワインよりもウィスキーが飲みたくなり、新しいグラスを取りにキッチンへと向かう事にした。
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