※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。

今回は開き直った准教授目線が初めて来ます。
以外と普通っぽくて、肩透かし食らう方が出るのを心配…


両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。

お気をつけください。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



昼前にやっと目を覚ました彼女を、再び夢の国へと送り出してしまった蓮はシャワーでしっかり濡らした頭をがしがしと掻きながら、出掛ける準備を始めた。

普段スラックスが多い脚には細身のジーンズを通し。
背広で隠しがちな鍛えた体躯は、白いざっくりとしたニットを被せて再び隠しにかかる。

一瞬、コートを羽織るかどうか迷ったが…
ただ隣接するスーパーへ行くだけだ、地下通路を通ろうと考えていた蓮はそのまま自宅の鍵を手に取る。

と、そこでインターフォンが鳴った。
マンションの入り口に付けられたカメラから飛ぶ映像には、小柄で可愛らしい容姿の女性が映り込む。


「蓮ちゃーん、こんにちはーっ。」
「今開けますね、テンさん。」


ひらひらとカメラに向かって可愛らしく手を振る女性は、蓮がオートロック解除のボタンを押すと画像からすぐに消えた。
蓮は鍵をそのままテーブルに置き、紅茶を淹れる為にキッチンへと向かう。

彼女が普段から長居もせず、自分の家で茶を飲んでいく事もないのはわかっている。
しかし、それでも用意をするのはもてなしの気持ちであると、蓮は思っていた。


それはきっと、蓮が社交的な母に似たからだろうが…


暫くして玄関ドアのチャイムが鳴った。
訪問客が予めわかっているので、鍋をコンロに置いたまま何も確認せずにドアを開けに向かった。


「んもうっ、蓮ちゃんったら!いきなり用事言いつけるのはやめてって、いつも言ってるでしょうっ!?」
「す…すみません、テンさん……」


ドアを開けるなり、いきなりヅカヅカとたたきに入り込んできて怒り出す女性に、蓮は少々引きながらも申し訳なさそうな顔を作って見せる。


「もーっ、私だって忙しいのよ?これが蓮ちゃんからの頼み事じゃなかったら、仕事中抜けなんてしないんだから!はいコレ!」
「くす…本当にテンさんには感謝しています。」


自分の胸へと押し付けられた紙袋を、蓮はにっこりと笑いながら受け取った。
ハイティーンから20代の女性をターゲットにしたブランドのショッパーは、キョーコへ着せる為に朝一テンに連絡を取り用意をお願いした物だった。


「ノンノン!いい男の頼み事は断らない主義なのよ♪…でも、蓮ちゃんが女の子の洋服をお願いするのは久し振りねぇ。最近は貢いでもらうばっかりじゃなかったの?」
「何ですか、その言い方は…まるで俺が貢がせてばかりの悪い男みたいじゃないですか。」
「ふふっ。クラブで夢を女の子達に見せてあげるのは愛だ!…が、ダーリンの口癖ですものね?」


テンの本職はスタイリストだが、蓮の叔父であるローリィ宝田の自称・愛人である。
そしてローリィは、蓮の所属するクラブ『LME』のオーナーだ。
蓮の『クオン』としてのウィッグやスーツは、テンが用意している。
また、新しくついた客や常連客の誕生日などには、テンに相談し、こうして色々と入り用な物を調達してもらう。

蓮とテンはそういう関係にあった。


「そう言えば…またそろそろ髪を染める日、決めましょう?年末は仕事が立て込んでるのよ。」
「わかりました、俺はテンさんの都合に合わせられますよ。」
「そう?助かるわぁ!…でも、やっぱり勿体ないわよね。きれいな金髪なのに…」


残念そうに蓮の黒鳶色の髪を見つめるテン。
そんなテンに、蓮は溜め息をついた。


「いいんです…日本であの色は目立ちます。」
「まあ、そうだけど……あ、でも向こうへ行った時にはどうするの?そのままで通すの?」
「………」


蓮の事情を粗方分かっているテンは、今蓮が一番触れて欲しくない話題を出してしまう。
蓮はピクッと小さく体を反応させ、そのまま黙り込んでしまった。


「…そう……まあ、私が必要になったら連絡ちょうだい?一応『敦賀蓮』のウィッグも作り始めてるから。」
「……ありがとうございます。」
「いいのいいの!これも私の仕事だから♪」


察しのいいテンは、蓮が抱える葛藤をそれなりに推察し、明るく喋りながら玄関のドアノブへと手を掛ける。

日本に来てからもう十年以上の付き合いだが、年長者のその心遣いは温かく、嬉しい。
蓮はテンに軽くお辞儀をした。


「じゃあ、また都合のいい日をメールで流すわね?またねー!」


パタンと目の前で扉が閉まると、蓮は大きく溜め息を吐き、廊下の方へと向き直る。

IHの最新式のコンロは、きっと吹き零れたお湯を感知して止まっているだろう。

廊下の先に見えるリビングの扉…
いつも通りテンが上がり込んでくることがなくて良かったと、蓮は少しホッとしていた。

昨夜、彼女を無理矢理大人にしたその場所の空気は、出来ればまだまだ現場保存しておきたい……
例え誰であろうと、今は二人きりの部屋に立ち入って欲しくない。



「………早く思い出して、キョーコちゃん……」


ショッピングバッグの取手の白いリボンが、自らの掌でぐしゃぐしゃになるのを感じながら、蓮は広い廊下へ言葉をポツリと投げ掛けた。




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初の蓮さんターン。
何かが色々と隠れてそうで隠れていないですね…!
(ラブレボもそうですが、基本隠す気ない女…それがマックです←)

もう、桃描写は収集つかなくなることが判明したので、要になる所以外で出すのはやめます…
自分羽目外しすぎorz
今回のところは、再び沈んだきょこたんで察してください←



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