※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。

やっと蓮が戻ってきました。
そして再びの大ジャンプまでカウントダウンスタート。


桃色描写アリの話ですので、苦手な方はお気をつけください。



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(「VIP専用」って…寝るって…普通に付き合ってる恋人同士みたいな事を提供してるってこと、よね……)


エレベーターから飛び出したキョーコは、もと来た道を歩き出した。


ショータローが「付き合おう」などと言った事は、もうキョーコの思考回路にかすりもしない。

キョーコの頭を占めるのは蓮の事。


教室で自分に施したあの愛 撫を、金を積んでくれる相手には同じ様に施すのかと思うと、無性に腹が立つ。
自分に「下手だ」と散々言ったあの濃厚なキスを、貢いでくれる女には喜んでするのかと思うと、嫌悪感から吐き気までしてくる。


「何よ、なによ…ムカつく……っ!!」


大股で歩くせいで、ピンヒールは優雅な靴音ではなくガツガツとした酷い音を立てる。
羽織っただけのコートはバサバサと大きく膨らみ、ニットワンピースに包まれただけのキョーコの体に、冬の冷たい夜風を届ける。


(何でかわからないけど、でもムカつくの…!)


自分でもよくわからないこの不快感。

だけど一つだけわかるのは、『貢いでくれる見知らぬ女』に施すのと、同じ行為を自分が受けた。
それがたまらなく嫌だと言う事。

蓮にとって、自分は特別でも何でもない。

その事実がキョーコの心をさらに頑なにさせた。


(恋愛なんて、二度とするものですか……っ!!)

「っうぅ…気持ち、悪い………」


もう少しで大通りまで出ると言う手前。
公衆トイレの近くまで戻ってきた所で、気持ちが悪くなってきた。

吐きたい、と言う訳ではない。
だけど苛立ちがおさまらなくて、胃までむかむかとしているように感じる。
酔いが回っているはずはないのに、目の前の景色が少し歪んで見える気がする。

(…少し吐いたら楽になるかな)


入り口を外国人達が固めるトイレに方向を決め、ふらふらと歩き出したその時。
ぐいっと腕を引っ張られ、若干フラついていたキョーコはその人物の胸へとしがみついた。


「ダメだよ、あそこは…君みたいな女の子が行く場所じゃない。」


声に反応してハッと顔を上げると、腕を取り、抱き締めていたのは蓮だった。

今夜の『特別な用件』の相手は、蓮の本当の姿を知っているのだろうか。
現れた蓮は『クオン』の特徴である金髪碧眼ではなく、いつもキョーコが学校で見かける蓮のスタイルだった。


「ほっといて、気持ち悪いの。」
「でも君みたいな子がそんな格好で行ったら、『襲ってください』って言ってるようなものだよ?」
「先生には関係ないでしょ。離して。」
「生徒指導だろ。」
「高校生じゃあるまいし、何よ指導って。」


キョーコは腕を必死に突っ張ろうとするが、抱き込む蓮の腕の力の方が強かった。

この腕が、他のどことも知れない女を抱く……
そう思うだけでキョーコの苛立ちはますます募った。


「先生はさっさと『特別な用件』とやらに行ったらどうなんですか?きっとお相手が待ちくたびれてますよ。」
「ああ、店でさっきエリカちゃんが叫んでたからね…最上さんが来店してたのは知ってたよ。気にしてくれてるの?」
「べっ!…そうですね、二足のわらじは大変でしょうからね。先生の稼ぎの心配をしてあげてるんです。」

別に気にしてる訳じゃない。

そう言うつもりで開いた口だったが、つっぱる力が一向に蓮の腕の力に勝てないので、ここは嫌味をぶつける事でさっさと離れてもらおう。
キョーコはその方法を取ることにした。

しかし、ずっと蓮の腕はキョーコの体を自分に押し付けたまま、離そうとしない。
それどころか頭を優しい手つきで撫でられ、キョーコはついに叫び出してしまった。


「気安く私に触らないで!気持ち悪い…!!」

(他の女を触る手で、私に触れないで…!!)


ウィッグの上をするすると滑っていた蓮の手の動きが、ピタリと止まる。
キョーコは構わず脱出しようともがくが固まった蓮の腕の力は抜けず、ひたすら蓮の胸板を叩き続けた。


「ホストがどういう仕事なのかは詳しくは知らないけど、先生みたいな人嫌い!だから帰るの、離してちょうだい!」


ナツの仮面なんて被っていられない。
ポロポロと本音を溢しながら抵抗を試みる。

蓮の腕から逃げ出せず、ついに頭まで使って三点で突っ張るキョーコは気が付かなかった。

「嫌い」の一言で、蓮の表情が一変したのを………



いきなり拘束を解かれ後ろによろめいたキョーコは、尻餅をつく直前で腕と腰を蓮に支えられ助けられた。

かと思うと、そのまま横抱きに抱え上げられ、大通りの方へと向かわれる。


「何するの、離して…っ!」
「気持ち悪いんだろう?ひとまず楽になれる場所までつれていく。…あんな場所に放置はできないからね。」


抵抗をものともせず軽々と抱えたまま通りへ出ると、蓮は客を下ろしたばかりで動き出す前だったタクシーを捕まえて乗り込み、そのまま自宅の住所を告げてしまった。



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その場所が一番危ないと思います!

六本木のトイレ……
まだあるのかしら。
はしご酒しすぎてダウンした社長を介抱した苦い夏の思い出。
六本木初めてだったし、外人にナンパされても何語かわからないし、時刻は4時だったし。
社会人3か月目の若造には厳しい洗礼でしたorz


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