ずっと前になるのですが…
明け方カジノ帰りのチカさんから『子供にメロメロな蓮様が、幼稚園戦争に参戦する姿を見たい!』とリクを頂いたことがありまして←多分ご本人がお忘れになるほど前の話orz


結果、結婚後の蓮キョシリーズになりました。
リクの筈なのにシリーズにしちゃって、ごめんなさいチカさん…!)

いきなり式から始めてるマック。
幼稚園戦争…えらい先の話になってますが、のんびり亀更新にお付き合いいただければと思います。

週1で更新していきたいと思ってます。


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆My Sweet Home page1 『ホームラン』゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆




小さな小さなガラス張りのチャペルの前の、小さな広場に人が集められる。
白いタイルが貼られたそこは、爽やかな風が吹き抜ける深い緑の生垣に守られた、二人を祝う人だけのプライベートな空間。

『挙式だけは極々僅かな人達だけで行いたい』
そう願った二人の希望に添うように、広場にいるのは彼と彼女の大事な人のみだ。

「それでは、新郎新婦の御登場です。皆様拍手をお願い致します。」

神父がチャペルの入り口から、新郎新婦の登場を告げ、先に数段ある幅広い白の階段を降り始める。
その後に続いたのは、純白の衣装に身を包んだ蓮とキョーコだった。

つい先程終わったばかりの式を見守っていた人達は、日の光よりも眩しく笑いあう二人に盛大な拍手を贈る。
ガラスのチャペルも光を浴びてキラキラと輝き、二人を更に眩しく演出した。

「では、ブーケトスを行います。未婚の女性の方はどうぞ前へ。」

数段ある階段の中腹には広めに作られた段があり、そこはどうやらブーケトスをしたり、写真撮影をする際に使用するらしい。
二人がその段まで降りたところで、神父から声がかかる。

僅かな知り合いの中には、未婚の女性は少ない。
張り切って前に出たのはマリア一人。
あとは、マリアに引っ張られて渋々出てきた奏江・千織・逸美だけだった。

「さぁさ、お姉様!マリアに蓮様みたいな素敵な恋人が現れるように、ブーケを投げてくださいな!」
「ふふっ、はぁーい!」

いつまでも可愛らしい妹のような存在に、式の間中緊張していたキョーコの心がほんわりとした。

もちろん蓮と一緒だし、式も終わって緊張は解けているのだけど…
これは夢の出来事のような、そんなふわふわとした気持ちがしているのだ。

「キョーコ、後ろ向き気を付けてね。」
「大丈夫よ、だって蓮がいるもの。それより、ちゃんとみんなのもとまで届くかしら?」

隣に立つ蓮に声を掛けられると、広場に背中を向けながらもキョーコはちらりとマリア達を見た。

段の一番下まではわずか数メートルしかないが、後ろ向きで投げるとなると、方向が狂ったりあまり飛ばなかったりする。
大切な人のみのこの空間、誰の手にブーケが渡ってもいいのだが、自分のすぐ後ろに落ちてしまうような事だけは避けたかった。

(大丈夫、大丈夫よ。私……)

キョーコはふぅ、と一つ小さく息を吐き、手に持つラウンド型のブーケに目をやる。
大小様々な白い花で纏められたそれは、一目見て気に入った可愛らしいプリンセスドレスによく似合っていた。

「はい、では新婦のタイミングでどうぞ、投げてくださいね」

優しく神父に声をかけられたキョーコは、蓮と目を合わせると、背後にいる大事な友人達の未来を願ってブーケを投げた。

(…受け取ってくれた人が幸せになりますよう、にっ!!)

きゃーっと言うマリアの声が聞こえ、キョーコは誰が取ったのかと後ろを振り返る………

と。自分の投げたブーケが、緑の生垣を越えて隣の敷地へと飛んでいくのが見えた。

「キョーコ!!あんた何やってんの!?」
「お姉様~!マリアはここですのよ~?」
「まぁ、京子さんらしいって言うか…」

「そうね、私たち結婚できないのかしらね~」


下で待機していた面々からは、次々文句が飛んできて、キョーコはあわあわとしてしまう。

「ごっ、ごめんなさいー!!まさかこんなに飛ぶものだとは思わなくって…!」

必死に掌を合わせ『ごめん』のポーズをする可愛らしい花嫁に、見守る人達からは笑みがこぼれる。
キョーコの隣にいた蓮は、クスリと笑うと背後からキョーコをぎゅうっと抱き締めた。

「うん、これもいいんじゃない?元気なキョーコらしくて。」
「えぇ!?でもこれはちょっと恥ずかしすぎるんだけど…」

背後からでも、身長差のお陰でキョーコの表情は蓮にもわかる。
恥ずかしがるキョーコは頬を抑えているが、耳まで真っ赤になっていた。

そんな、赤く染まる外耳の上部に軽くキスをすると、ひゃうっと可愛い悲鳴が漏れる。

「いいんだよ。今日から新しい俺達が始まるんだから、誰も真似できない、素敵な毎日を綴っていこうよ。」
「…ブーケトス・ホームランは『素敵』の部類に入るんですか?」
「もちろん。」

どちらかと言えば『失敗』の部類に入る出来事を『素敵』と言われ、キョーコは不思議そうに腕の中から蓮を見上げる。


くりくりとした目が、ちょっと困ったように寄る眉が、少しとがらせた唇が。

まるで小動物のようで、蓮の心を鷲掴む。

そんな些細な仕草すら愛しむ蓮は、溶けんばかりの笑みでキョーコに告げた。

「愛があれば、全てが特別に輝くんだよ。
…だから、これからもよろしくね?俺の愛しい奥様。」




************

ちなみに、ブーケトスをホームランしたのは実話。
あれ本当によく飛ぶんですよね……←