「お帰りなさい、敦賀さん…っ!」

急いで帰宅すると、遊びに来ていてくれたキョーコが、パタパタと廊下を走って出迎えてくれる。

「早く早く!今夜はとっても綺麗な満月なんですよ?」

抱き締めようと伸ばした腕を逆にとられ、『さあさあ』と部屋の中へと引っ張られる。

「そんなに急がなくても、お月様は逃げないんじゃない?」
「そうですけど、でも少しでも一緒に早く見たいんですもん。」

『一緒に』

彼女から聞くその言葉が嬉しくて、ついほわりと口元が緩む。

今夜は十五夜。
一緒に月見をする約束をしていた。

テラスまで出てみれば、どこから持ってきたのか薄がそよそよと風に靡き、白い綺麗な丸がミニテーブル上の皿の上にコロコロとたくさん盛られている。

「凄いね…用意して待っててくれたの?」
「はい!だって、楽しみにしてたんですもの。」

ニコニコと花が綻ぶような可愛らしい笑みを、振り向きざまに見せてくれる彼女がいとおしくて。
背後からぎゅうぎゅうと抱き締める。

「最近忙しくてごめんね。」
「……っ、し、仕方ないですよ。お仕事ですもの。」

耳元で吐息を吹きかけるように詫びを入れると、擽ったかったのかキョーコの肩がピクリと震えた。
久し振りに抱き締める柔らかな体に、甘くて清潔感のある香りに。
ここしばらく休まることのなかった気持ちが安らいでいく。

「……あのー、敦賀さん。今日は秋刀魚も焼いたんですよ?ビールもしっかり冷やしたんですよ?だから、先にシャワー浴びて…」
「ん、でもまずは一緒に見ようよ。お月さま………」

そう言って顎に手をかけ上向かせ、彼女の瞳に映り込んだ満月を眺める。

「敦賀さん?月…見えてます?」
「うん。とっても綺麗だよ。」

澄んだ瞳に映り込むクリーム色のそれを見ながら、そっと唇を掠め取った。


それは、心が安らぐ魔法。


同じものを一緒に眺める時間は、本当に心にも体にも大切な時間なんだ。




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家宅捜索をした結果、無事にめろきゅんテイストを発掘することが出来ました。
(よし!やっと通常公開の話がかけたぞっと!)

昨日が満月だったと、いつも癒しをくださっているsateさんに教えていただきまして…
一つ通常ネタも思い付いてましたが、「ここはやっぱりまほうシリーズよね!」と、いそいそと仕上げました。

普段はこんな感じの蓮キョを書いています。
アディクションの二人が通常と思わないでください(´▽`;)ゞ
あれは登場人物全員がブッ飛んでます(爆)


sateさんー!
ネタ提供ありがとうございましたー!
お礼にこちら、煮るなり焼くなりお好きになさって結構です。