「あ……」
モー子さんと二人で、書類の整理を黙々と片付ける春の日の午後。
たまたま点けていたTVの、生放送の番組に敦賀さんがゲストで登場した。
とたんに観覧席から上がる『キャー!!』と言う黄色い悲鳴。
(相変わらず人気者だよね…)
まだショータローと一緒に住んでいた頃にも、おんなじような場面を見てショータローが怒って家を出て行ったことがあったなぁ…と、ふと思い出す。
(あの時は『敦賀蓮のバカーーっ!』って叫んだりしてたけど…)
今は全然違う気持ちで見ていることが、不思議で、面白くて……
つい「ふふっ」と笑ってしまった。
「……あんた、なに笑ってるの?」
「え…あぁ、昔はあんなに敦賀さんと嫌い嫌われ合ってたなぁって、思い出したらおかしくって。」
「……?まあ、今は好き好きオーラ出まくってるからねぇ。」
〈ドザザザザッ!!〉
「あ!あんた何やってんの!?モーッ!!せっかく終わった資料がーっ!」
モー子さんの突然の一言にビックリして、思わず手に持っていた資料を落としてしまった。
モー子さんは怒りながらも慌てて資料を拾い集めてくれる。
「す…『好き好きオーラ』って!敦賀さんは尊敬する大先輩よ!?『好き』とかそんな浮わついた気持ちじゃないの!」
「そんな、力一杯否定しなくても…(敦賀さんが可哀想だわ)」
「だって、モー子さんが変なこと言うから~~っ!」
顔が心なしか熱い。声がついつい裏返っちゃう。
そんなふわふわした自分が嫌で、モー子さんと一緒になって床に散らばった書類をかき集め始めると、モー子さんは私の顔をじっと見つめてきた。
「……な、なぁに?モー子さん。私の顔、変?」
「……ねぇ。キョーコ、ここは素直になって考えてみて?
敦賀さんに会うと、どんな気持ちになる?」
真剣な顔で聞いてくるモー子さんにつられて、いつもならこういう時『敦賀さん』ってワードが出てくるだけで逃げ腰になる私も、真剣に考えてみる。
敦賀さんに会えたら……
それだけで気持ちがぱあっと明るくなれる。
「………う、嬉しい。」
「そう。じゃあ、敦賀さんとたくさん話す時間が出来たら?」
『今日はどんなことがあったの?』
いつも私の話をいっぱい聞いてくれるよね……
敦賀さんと話せるだけでも、何気ない小さなことが特別に思えてくるの。
「………嬉しい。」
「そう。じゃあ、あんたも敦賀さんも忙しくて、なかなか会えない日が続いたら?」
実は今まさにそうなんだけど……
映画のロケで事務所へもなかなか寄らないみたいで、たまに入るラブミー部への依頼が敦賀さんとの今の接点だったり。
実は少し寂しいと思っていたの。
「………寂しい。」
「そう……。そういうのって『好き』って言うんじゃないかしら?」
……好き?
私が、敦賀さんを?
「でも……敦賀さんには好きな人いるし、私なんかが好きだなんておこがましい気が…」
「は!?なにそれ?(どう考えたって彼の想い人はこの子なのに)」
「それに私、もう恋なんてしないって誓ったもの!だから敦賀さんなんて……」
急に『坊』として敦賀さんと話した時のことを思い出して、何故だか胸が痛くなった。
……何でだろう、もう恋なんてしないのに……
すると、モー子さんは「はぁ」とため息をひとつ吐いて、ゆっくり私に問いかけてきた。
「ねぇ…あんたは、私があんたのこと嫌いだったら嫌いになるの?」
「まさか!例えモー子さんに嫌われようとも、私はモー子さんの親友やめないもん!」
「でしょう?それと一緒よ…
敦賀さんが誰を好きであっても、一番大事なのはあんたの気持ちよ。あんたが誰を好きか…それが今のあんたにとって大事なことなんじゃないかしら。」
私が誰を好きか……
でもそれじゃ、邪魔にならないかしら?
うざがられたりしないかしら……
「でも、迷惑になるんじゃ…」
「迷惑かどうかは敦賀さんが決めること!あんたがどうこう言うことじゃないわ。
ねぇ……もう少し、敦賀さんに対しても素直になっていいんじゃない?
私は好きよ?あんたの素直なところ。だからもっと素直になったら、私はもっとキョーコのこと好きになると思う。」
「モー子さん………」
いつもはクールなモー子さんが、少しだけ頬を赤くして『好きよ』って言ってくれる……
敦賀さんへの私の気持ち……
素直になったら、どうなるの?
―――心の鍵を開けてみようかな?
「うん………うん。ありがとう、モー子さん。
私もモー子さんのこと、大好きよ。」
―――それが、恋のはじまり。
心の鍵を開けたとき、あなたへの想いが溢れてきたの。
ちょっとしたことでも嬉しくなれたり。
ドキドキしたり、ワクワクしたり。
それはまるで魔法のように、私の全てを支配した。
だけど全然嫌じゃない。
だって、あなたが『好き』だから―――
************
一番初めにこれをシリーズ化しようと思ったときに考えた、このシリーズの『はじまり』。
言うなれば『まほうシリーズ・act0』てところでしょうか。
原作で恋愛否定しまくっているキョーコが、どうしたらここまで恋に前向きになるんだろうか…
ふと考えたときに思い付いたのです。
「やっぱ素直になるには、モー子さんの一声かな?」と……
本当は書かずにバックグラウンド扱いにしておこうと思ったのですが、以前から『まほうシリーズが大好きなんです!』とよくお声をいただきまして……
(申請の際、半数以上の方がこれをあげてくださいました。そしてビターも意外に人気。)
なので、試しに文章にしてみました。
すべての魔法のはじまりなので、ちょっと長いです。
きょこ自覚編って感じなので、蓮出てこないです(あう!)
なので、イメージ壊れた方もいらっしゃるかな?
でもこれが『まほうシリーズ』蓮キョのスタート地点です。
夏のふたりも終わって、また企画外のまほうを続けたいと思っていますので、よろしければ今後もこの二人を可愛がってやってください。
モー子さんと二人で、書類の整理を黙々と片付ける春の日の午後。
たまたま点けていたTVの、生放送の番組に敦賀さんがゲストで登場した。
とたんに観覧席から上がる『キャー!!』と言う黄色い悲鳴。
(相変わらず人気者だよね…)
まだショータローと一緒に住んでいた頃にも、おんなじような場面を見てショータローが怒って家を出て行ったことがあったなぁ…と、ふと思い出す。
(あの時は『敦賀蓮のバカーーっ!』って叫んだりしてたけど…)
今は全然違う気持ちで見ていることが、不思議で、面白くて……
つい「ふふっ」と笑ってしまった。
「……あんた、なに笑ってるの?」
「え…あぁ、昔はあんなに敦賀さんと嫌い嫌われ合ってたなぁって、思い出したらおかしくって。」
「……?まあ、今は好き好きオーラ出まくってるからねぇ。」
〈ドザザザザッ!!〉
「あ!あんた何やってんの!?モーッ!!せっかく終わった資料がーっ!」
モー子さんの突然の一言にビックリして、思わず手に持っていた資料を落としてしまった。
モー子さんは怒りながらも慌てて資料を拾い集めてくれる。
「す…『好き好きオーラ』って!敦賀さんは尊敬する大先輩よ!?『好き』とかそんな浮わついた気持ちじゃないの!」
「そんな、力一杯否定しなくても…(敦賀さんが可哀想だわ)」
「だって、モー子さんが変なこと言うから~~っ!」
顔が心なしか熱い。声がついつい裏返っちゃう。
そんなふわふわした自分が嫌で、モー子さんと一緒になって床に散らばった書類をかき集め始めると、モー子さんは私の顔をじっと見つめてきた。
「……な、なぁに?モー子さん。私の顔、変?」
「……ねぇ。キョーコ、ここは素直になって考えてみて?
敦賀さんに会うと、どんな気持ちになる?」
真剣な顔で聞いてくるモー子さんにつられて、いつもならこういう時『敦賀さん』ってワードが出てくるだけで逃げ腰になる私も、真剣に考えてみる。
敦賀さんに会えたら……
それだけで気持ちがぱあっと明るくなれる。
「………う、嬉しい。」
「そう。じゃあ、敦賀さんとたくさん話す時間が出来たら?」
『今日はどんなことがあったの?』
いつも私の話をいっぱい聞いてくれるよね……
敦賀さんと話せるだけでも、何気ない小さなことが特別に思えてくるの。
「………嬉しい。」
「そう。じゃあ、あんたも敦賀さんも忙しくて、なかなか会えない日が続いたら?」
実は今まさにそうなんだけど……
映画のロケで事務所へもなかなか寄らないみたいで、たまに入るラブミー部への依頼が敦賀さんとの今の接点だったり。
実は少し寂しいと思っていたの。
「………寂しい。」
「そう……。そういうのって『好き』って言うんじゃないかしら?」
……好き?
私が、敦賀さんを?
「でも……敦賀さんには好きな人いるし、私なんかが好きだなんておこがましい気が…」
「は!?なにそれ?(どう考えたって彼の想い人はこの子なのに)」
「それに私、もう恋なんてしないって誓ったもの!だから敦賀さんなんて……」
急に『坊』として敦賀さんと話した時のことを思い出して、何故だか胸が痛くなった。
……何でだろう、もう恋なんてしないのに……
すると、モー子さんは「はぁ」とため息をひとつ吐いて、ゆっくり私に問いかけてきた。
「ねぇ…あんたは、私があんたのこと嫌いだったら嫌いになるの?」
「まさか!例えモー子さんに嫌われようとも、私はモー子さんの親友やめないもん!」
「でしょう?それと一緒よ…
敦賀さんが誰を好きであっても、一番大事なのはあんたの気持ちよ。あんたが誰を好きか…それが今のあんたにとって大事なことなんじゃないかしら。」
私が誰を好きか……
でもそれじゃ、邪魔にならないかしら?
うざがられたりしないかしら……
「でも、迷惑になるんじゃ…」
「迷惑かどうかは敦賀さんが決めること!あんたがどうこう言うことじゃないわ。
ねぇ……もう少し、敦賀さんに対しても素直になっていいんじゃない?
私は好きよ?あんたの素直なところ。だからもっと素直になったら、私はもっとキョーコのこと好きになると思う。」
「モー子さん………」
いつもはクールなモー子さんが、少しだけ頬を赤くして『好きよ』って言ってくれる……
敦賀さんへの私の気持ち……
素直になったら、どうなるの?
―――心の鍵を開けてみようかな?
「うん………うん。ありがとう、モー子さん。
私もモー子さんのこと、大好きよ。」
―――それが、恋のはじまり。
心の鍵を開けたとき、あなたへの想いが溢れてきたの。
ちょっとしたことでも嬉しくなれたり。
ドキドキしたり、ワクワクしたり。
それはまるで魔法のように、私の全てを支配した。
だけど全然嫌じゃない。
だって、あなたが『好き』だから―――
************
一番初めにこれをシリーズ化しようと思ったときに考えた、このシリーズの『はじまり』。
言うなれば『まほうシリーズ・act0』てところでしょうか。
原作で恋愛否定しまくっているキョーコが、どうしたらここまで恋に前向きになるんだろうか…
ふと考えたときに思い付いたのです。
「やっぱ素直になるには、モー子さんの一声かな?」と……
本当は書かずにバックグラウンド扱いにしておこうと思ったのですが、以前から『まほうシリーズが大好きなんです!』とよくお声をいただきまして……
(申請の際、半数以上の方がこれをあげてくださいました。そしてビターも意外に人気。)
なので、試しに文章にしてみました。
すべての魔法のはじまりなので、ちょっと長いです。
きょこ自覚編って感じなので、蓮出てこないです(あう!)
なので、イメージ壊れた方もいらっしゃるかな?
でもこれが『まほうシリーズ』蓮キョのスタート地点です。
夏のふたりも終わって、また企画外のまほうを続けたいと思っていますので、よろしければ今後もこの二人を可愛がってやってください。