※この話に関しては、本誌の内容が少し被ってくる可能性があります。
お嫌な方はどうぞ読まれないようお願いいたします。
嘘つきなピンクが守るもの。
『最上さんの事が好きだよ。誰よりも誰よりも愛してる……』
その気持ちは嬉しいんです。
だけど、わたし―――
*
甘く苦しい胸の痛みを感じて、私の意識は浮上した。
うっすらと目を開けるとぼやけた視界の先には、タイマーが切れてランプが点滅している扇風機がある。
風が止まってしまったために、上半身にうっすら汗をかいていた。
ぺたりと張り付くキャミソールがちょっとだけ気持ち悪い。
うまく働かない頭から右手へと命令を出し、枕元の目覚まし時計を手探りで持ち上げて見ると、まだ6時前だった。
「あふ……ちょっと早いけど、起きようかなぁ……」
一つ大きなあくびをすると、体を起こす前に「んーっ!」とひと伸びする。
夏も終わりを迎えて季節は秋へと移るはずなのに、名残惜しげに残暑が続く。
ぺたぺたな肌が気持ち悪くて堪らないから、先にシャワーを浴びよう……
この時間ならそれくらいしても、大将と女将さんの朝食と昼食の用意も豪華なのが用意できちゃいそうだわ。
〈ヴヴヴヴヴ……〉
替えの下着を出していると、充電器に一晩かけていた携帯が振動を始めた。
こんな時間に電話をかけてくるのは事務所か…一人しかいない。
ディスプレイを確認すると、やはり後者だった。
「はい、最上です。」
『もしもし、俺だけど…まだ寝てた?』
「いえ、さっき起きたところですよ。」
朝から艶を帯びたバリトンが耳を直撃して、思わず心臓がドキドキと早鐘を打つ。
「敦賀さんこそ早いですね。昨日は遅くなるってメールで言ってませんでした?」
『うん、まあそれなりに遅かったけどね。でも今朝はキョーコの入りが早いだろう?だから夜聞けなかった声を聞いておきたくて…』
電話ってアイテムは何て罪作りなんだろう。
ただでさえこの人の声は、人を惑わすほどの威力があるのに…
こんな言葉を耳元で言われる身にもなって!
心臓がいくつあっても足りないんだから……っ!
「そっ、そんな事言わないでくださいよ!たかだか一晩くらいっ」
『そう?一晩って案外長いよ?キョーコの声が聞けなくて、昨日は淋しかったよ。』
「もぉ…っ、そんな事言わないでください!今日は同じ局で撮影だから、すれ違えるじゃないですか!」
『それはそれで嬉しいけど、そうじゃないんだよ。
…っと、キョーコは1日TVジャパンなんだよね?お昼はどうするの?』
「あ、お弁当を作って行こうと思ってます。敦賀さんの分も作りますよ?」
『じゃあ少し早めに局入りするね。だから一緒に食べよう?』
「そうすると社さんの分も作った方がいいですね、わかりました。」
『うん、ありがとう。愛してるよキョーコ。』
「…そんなに簡単に愛とか言っちゃダメですよ。私達は慎ましい日本人なんです!」
『はいはい、照れ屋さんなんだから(クスクス)じゃあ、またお昼にね?』
「わかりました。それではまたお昼に…」
ぷつりと通話が終了すると、その場にへたりこみそうになった。
あの声…腰に来るんだってば!
本当に電話先でも、耳元でくすくすと笑うのはやめてほしいわ。
(社さんが言うには)私とお付き合いが始まってからの、フェロモン常時垂れ流し状態の敦賀さんは本当に危険なんだそうだ。
社さんが日々追っかけの子をフリーズさせるのに困ってるくらい、みんな本気でメロメロになってるんだもの。
その手のものに免疫のない私なんかは、そのうちカラッカラに干からびて、さらさらと砂になって風に飛ばされちゃうんだわ!
(何て恐ろしいヒトなのかしら…)
そんな尋常でないオーラを持った人が、畏れ多くも恋人だなんて……
本当にこの事が世間様に知れたら、わたしの命なんてあっという間に消されてしまうわ!
「あ、いけない!つなぎ持っていかないとダメよね。」
敦賀さんのお弁当は社さんに渡せばいいと思っていたので、気にしていなかった。
押し入れの中の衣装ケースから、洗ったばかりのショッキングピンクを引っ張り出す。
昔は私の戦闘服。
今は私を守るもの。
カバンの中にそっとしまって、シャワーを浴びるための身支度を始めた。
************
電話の声って、耳元で言われてるみたいでドキドキしますよね。
某所とパステルのお陰で、すっかり1話が長めの傾向になりました←いえこれくらいが普通?
お嫌な方はどうぞ読まれないようお願いいたします。
嘘つきなピンクが守るもの。
『最上さんの事が好きだよ。誰よりも誰よりも愛してる……』
その気持ちは嬉しいんです。
だけど、わたし―――
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甘く苦しい胸の痛みを感じて、私の意識は浮上した。
うっすらと目を開けるとぼやけた視界の先には、タイマーが切れてランプが点滅している扇風機がある。
風が止まってしまったために、上半身にうっすら汗をかいていた。
ぺたりと張り付くキャミソールがちょっとだけ気持ち悪い。
うまく働かない頭から右手へと命令を出し、枕元の目覚まし時計を手探りで持ち上げて見ると、まだ6時前だった。
「あふ……ちょっと早いけど、起きようかなぁ……」
一つ大きなあくびをすると、体を起こす前に「んーっ!」とひと伸びする。
夏も終わりを迎えて季節は秋へと移るはずなのに、名残惜しげに残暑が続く。
ぺたぺたな肌が気持ち悪くて堪らないから、先にシャワーを浴びよう……
この時間ならそれくらいしても、大将と女将さんの朝食と昼食の用意も豪華なのが用意できちゃいそうだわ。
〈ヴヴヴヴヴ……〉
替えの下着を出していると、充電器に一晩かけていた携帯が振動を始めた。
こんな時間に電話をかけてくるのは事務所か…一人しかいない。
ディスプレイを確認すると、やはり後者だった。
「はい、最上です。」
『もしもし、俺だけど…まだ寝てた?』
「いえ、さっき起きたところですよ。」
朝から艶を帯びたバリトンが耳を直撃して、思わず心臓がドキドキと早鐘を打つ。
「敦賀さんこそ早いですね。昨日は遅くなるってメールで言ってませんでした?」
『うん、まあそれなりに遅かったけどね。でも今朝はキョーコの入りが早いだろう?だから夜聞けなかった声を聞いておきたくて…』
電話ってアイテムは何て罪作りなんだろう。
ただでさえこの人の声は、人を惑わすほどの威力があるのに…
こんな言葉を耳元で言われる身にもなって!
心臓がいくつあっても足りないんだから……っ!
「そっ、そんな事言わないでくださいよ!たかだか一晩くらいっ」
『そう?一晩って案外長いよ?キョーコの声が聞けなくて、昨日は淋しかったよ。』
「もぉ…っ、そんな事言わないでください!今日は同じ局で撮影だから、すれ違えるじゃないですか!」
『それはそれで嬉しいけど、そうじゃないんだよ。
…っと、キョーコは1日TVジャパンなんだよね?お昼はどうするの?』
「あ、お弁当を作って行こうと思ってます。敦賀さんの分も作りますよ?」
『じゃあ少し早めに局入りするね。だから一緒に食べよう?』
「そうすると社さんの分も作った方がいいですね、わかりました。」
『うん、ありがとう。愛してるよキョーコ。』
「…そんなに簡単に愛とか言っちゃダメですよ。私達は慎ましい日本人なんです!」
『はいはい、照れ屋さんなんだから(クスクス)じゃあ、またお昼にね?』
「わかりました。それではまたお昼に…」
ぷつりと通話が終了すると、その場にへたりこみそうになった。
あの声…腰に来るんだってば!
本当に電話先でも、耳元でくすくすと笑うのはやめてほしいわ。
(社さんが言うには)私とお付き合いが始まってからの、フェロモン常時垂れ流し状態の敦賀さんは本当に危険なんだそうだ。
社さんが日々追っかけの子をフリーズさせるのに困ってるくらい、みんな本気でメロメロになってるんだもの。
その手のものに免疫のない私なんかは、そのうちカラッカラに干からびて、さらさらと砂になって風に飛ばされちゃうんだわ!
(何て恐ろしいヒトなのかしら…)
そんな尋常でないオーラを持った人が、畏れ多くも恋人だなんて……
本当にこの事が世間様に知れたら、わたしの命なんてあっという間に消されてしまうわ!
「あ、いけない!つなぎ持っていかないとダメよね。」
敦賀さんのお弁当は社さんに渡せばいいと思っていたので、気にしていなかった。
押し入れの中の衣装ケースから、洗ったばかりのショッキングピンクを引っ張り出す。
昔は私の戦闘服。
今は私を守るもの。
カバンの中にそっとしまって、シャワーを浴びるための身支度を始めた。
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電話の声って、耳元で言われてるみたいでドキドキしますよね。
某所とパステルのお陰で、すっかり1話が長めの傾向になりました←いえこれくらいが普通?