―――ふろむ☆つるがびじょん!―――


「え……ハリウッド、ですか…?」

珍しく『たまには飲みに付き合え』と言われて招かれた社長宅。
年代物のウィスキーを出してきて、いったい何の話だろうと思ったら………
ハリウッドからのオファーの話だった。

「ああ、クビにした準主役の替わりを探していてな。向こうの監督が『ダークムーン』の嘉月の演技を見て、お前に是非来てもらいたいと言ってるんだ。」

『ダークムーン』の嘉月……
あれは過去の俺を曝す事によって、演技に深みを与える事が出来た、今や俺の代表作…
向こうの監督が認めてくれるのは非常に嬉しい。
これで俺も、やっと父さんを超える役者になる為の第一歩を踏み出せる…

「撮影期間は1ヵ月半から2ヵ月だ。……つまり、来月の最上くんの誕生日には帰って来れない。そう思っとけ。」
「なっ!1日くらい抜け出しても…」
「お前なあ…あっちの撮影はもう準主役の抜けた部分を撮り直すだけになってるんだよ。機内で0泊2日にしたって、抜けてくる時間があるわけないだろ!」
「しかし…」
「これは『本当のお前』が『家』に帰るためのチャンスだろう?最上くんとラブラブで離れたくなのいは分かるが、そんな中途半端な気持ちで行っていいのか?」
「………」

「それに、中途半端な事してたら最上くんにも迷惑だ。」

確かにそうだ。
付き合いはじめてから、初めてのキョーコの誕生日がくる。
それは一緒に祝いたい。
二人っきりで過ごしたい。
だけど、こういうオファーがまた今後くるとは限らない。
チャンスは掴める時に掴んでおかないと。
それは向こうにいた時、散々思い知らされた。

俺は、自分の夢も叶えたい。
父さんのような立派な俳優になりたい。
だけど、キョーコも諦めたくない。
本当は、出来る事なら一分一秒離れていたくないんだ。
キョーコの全てを手に入れたい。
キョーコを離さずにいられるだけの、守れるだけの力が欲しい。
その為には、やはり今回のオファーは大事な訳で………

「………わかりました。向こうの監督と、話を進めてください。」




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今回の序章は何のフラグだ!?
さあどうなる!?
ラストに向けて、伏線次々回収中。
よって、ここに来て二人の心理描写が一気に多くなります。

いや、私はそっちのほうが書きやすいんだけどね。

あ、そうそう。
seiさんのSSには、時期は指定されていなかったので、きょこ17歳の夏~冬の出来事にしました。
だって…『はじめに。』で宣言しちゃったんだもん。
『敦賀氏は健全過ぎるほど健全な21歳の青年男子です!』って………
自然な流れよね?