―――ただの不憫です☆つるがびじょん!―――

「色男は大変だよなあ、蓮よ。」

目の前のローテーブルの上に、週刊誌をばさっと放られる。
朝一から俺と社さんは、社長に呼び出されていた。

「で、お前の事だから当然この記事はガセなんだろう?」
「勿論ですよ、何いってるんですか!俺がキョーコ以外の人と付き合うなんて、ありえない話です!」

今朝一番のワイドショーで流れた熱愛報道。
俺とドラマの主役が付き合っていると、そう書かれた。
掲載されている写真は、他の出演者達と食事にいった時の物。
なのに、うまい具合に二人だけしか写っていない。
周りに大勢いたのに、こんなに綺麗に二人しか写らないとは…ここまで来ると、もはや奇跡だと思う。

「まあ他局の裏番組が勢いづいてて視聴率上げたいから、ドラマのいい宣伝にもなると判断されたんだろうな。あそこのスポンサーはえげつない事を平気ですると、裏では有名だしな。」
「宣伝ですか…正直いい迷惑ですね。」

無駄に愛想よくにっこり笑ってみせると、隣の社さんが「うぅっ…」と胃の辺りを擦る。

「まあ、ちゃんとこっちが否定会見しておいてやるよ。だから蓮、勝手に最上くんとの交際宣言を出すんじゃないぞ?」
「…わかってますよ。」
「おまえなぁ…その顔はわかってねーだろう?最上くんは今が一番大事なんだ。イジメ役以外も素晴らしい演技が出来る事をアピールして、役者としてもタレントとしても仕事に幅を持たせるられるか。大事な時期なんだよ。それをお前とのスキャンダルで潰す気か?」
「………いいえ、キョーコを潰したくはありません。」

わかってる。本当に今が仕事の幅を広げるチャンスだと言う事は…
共演の女の子達とも仲良く出来てキョーコは本当に楽しそうだから、邪魔をしてはいけない事くらい、本当は俺にだってわかっている…
だけどやっぱり面白くないのも本心で。
醜い嫉妬心がひょっこり顔を出す。

「だったら俺に任せておけ。お前は最上くんへの言い訳でも考えてろ。」

そう言って、社長は俺達を応接室から追い出した。



『はい、最上です。』
「………あ、もしもし。俺だけど…」

夕方、彼女の休憩中であろう時間に電話がやっと繋がった。
本当は朝から何度かかけていたのだが、留守電にもならなかった。
メールも入れておいたのだが…返ってくる事もなく、不安だけが募っていった。。

『はい、お疲れ様です。どうかなさいましたか?』
「え…いや、その……今朝はごめん。」
『………あのニュースの事ですか。』
「うん…いつの間にか撮られていて」
『ストップ!それ以上は今夜お伺いしてお聞きしますので…合鍵使わせていただきます。それではまた今夜。』
「あ、うん……今夜…」

一方的にぴしりと話を進められ、切られてしまった。
これは…少し怒ってるかな……
そうだよな、俺が逆の立場でも怒るもんな。
とりあえず、今夜はキョーコに会う事ができる。
そうなればNGなしでさっさと終わらせて帰らなくては…!

結局俺は、他の出演者達に無言のプレッシャーをかけ、撮影をさくさく進めて終了時間を1時間以上早める事に成功した。



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不憫萌え推奨のラブレボでは、敦賀氏浮気とかあり得ません!
どちらかというと、勝手に噂を立てられて勘違いされまくる、ただただ不憫な敦賀氏です!←