「自分のミスです、申し訳ありません。」

俺と蓮は社長に呼び出され、写真を見せられた。
それは蓮が、交際相手と名乗り出た高遠杏子に見送られる場面だった。
写真には深夜の時間帯が記録されており、尚且つ場所が彼女のマンションだという事から、何もなかったとは考えにくい。
蓮は言葉を濁しながらも、高遠杏子とは別れたと言った。

………………。
別れたって事は、その子と何かあったって事を認めてるわけだよな?
例え記憶がなくても、キョーコちゃん一筋だと思っていたのに…二人を見守るお兄ちゃんとしては、少しショックだった。
やっぱり蓮の奴、過去に相当やんちゃしてた時期があって、記憶がなくなった事でその頃の性格が出てきたのではなかろうか?
じゃなきゃあの蓮がキョーコちゃん以外と…だなんてあり得ない!!

蓮はもう少し社長と話す事があると言われ、俺は一足先に応接室を出た。
一般社員のフロアに出ると、ゴム手袋を嵌め、携帯電話を取り出す。
キョーコちゃんに電話をする為だ。
先日キョーコちゃんに頼まれた物が手配できたのだ。
この状態を打開できるかもしれない物。
キョーコちゃんはそう言っていた。
ならば一刻も早くキョーコちゃんに渡したい。
確か今なら帰宅前のキョーコちゃんを捕まえられるかもしれない。

キョーコちゃんは数コールで電話に出てくれた。

『お疲れ様です、社さん』
「キョーコちゃん、遅れちゃったけど頼まれた物無事に届いたんだよ。それで、なるべく早くに渡したいんだけど、今ど…」
『京子ちゃん、お風呂沸いたよ』

突然、電話先から男の声が聞こえた。

…お風呂?お風呂!?
キョーコちゃん、お風呂って何!?!?!?
一体どこにいるのキョーコちゃああああああん!!!!!

「あのっ、キョーコちゃん!?」
『あっ、あのですね!今夜は敦賀さんのマンションには戻りませんので、お気になさらずとお伝えください!』
「いやあのね蓮は」
『明日受け取りに参りますので!明日また社さんにご連絡しますので!敦賀さんにはあれの事は絶対内緒にしててくださいねっ!それでは失礼します!!!』

俺の話を聞く前に、キョーコちゃんは早口で一気に喋り切ると、礼儀正しい彼女らしくなく電話を強制終了した。

………………………。
まずいぞ。非常にまずい。
キョーコちゃんのあの様子では、既に蓮のスキャンダルを知っているみたいだ。
このままじゃ誤解を解く機会も与えられずに、あいつ一生避けられるんじゃ…


(れ~~んっ!!早く記憶を戻してくれーっ!!!)

俺の心は久々に涙で海ができそうになっていた。





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いい人やっしー。
そしてきょこたんはいずこにおわす!!?