2013年12月 * 拍手設置(加筆なし)


**原作沿い設定作品


※シリアス系・オリキャラ有・途中大人表現有(限定記事入ります)

特にオリキャラが蓮に絡むのが嫌いな方はご注意くださいませ。




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病室に入ると、敦賀さんはDVDを見ていた。
結局、記憶喪失は一過性かどうか判断が付かない為、『敦賀蓮』の出演した番組を全て見直しているのだ。

それで記憶が戻れば万万歳。
戻らずとも、以前の立ち振る舞いとそこそこ変わらないレベルにまで『敦賀蓮』を立て直せたら復帰…という事にしたらしい。

(敦賀さんのスケジュールがかなり詰まってるからって…かなり無茶苦茶よね)

私が一人ごちてもどうしようもない事だ。

スポンサーや共演者がいるこの世界。
記憶が戻らない事を隠している以上、いつまでものんびりは待ってくれない。


「失礼します。敦賀さん、お弁当を持ってきました。」
「…あぁ、ありがとう。」

テレビ画面からふいと顔を向けられる。
5日振りに見る敦賀さんの表情は以前と変わらないように見えた。


「あいつ根っからの役者なんだなーって思ったよ。特にドラマのDVDは食い入るように見るし、『敦賀蓮』を真似するのは完璧だしな…」


そう言って社さんが少し寂しそうな顔をしたのを思い出した。


確かに雰囲気、表情、喋り方は事故前の敦賀さんと同じだ。
記憶がないなんて嘘なんじゃないかと思えるくらい。

(だけど何だろう…何か違和感があるんだよね)

和かな笑みも声も変わらないのに、どこかに感じる違い。
それが胸を苦しくさせる。

(思い出せなくて苦しんでるのは敦賀さんなんだから!私が苦しくなってどうするのっ!?)
「社さんが頼んだんだってね、忙しいのにごめんね…えっと…最上さん。」

名前を覚えてもらえた嬉しさと、まだ思い出せてもらえていない寂しさが胸にあふれる。

「私はこれくらいの事でしたら大丈夫ですから!それよりちゃんと食べてくださいよ!ご飯は一日の基本なんですから…」

複雑な胸の内を悟られたくなくて、努めて明るく振る舞う。

「…ぷっ、なんだかお母さんみたいだね。」
「なんですかそれ!私は敦賀さんより4つ年下なんですよ。」
「うん、聞いたよ。知ってる。だけどそう思えたんだ。」

そう言うと、敦賀さんはふっと息をついて窓を見た。

「君にそう言われるのは初めてじゃないのかな…?なんだか懐かしい気がしたんだ。」
「……!!」

そうだ。昔ダークムーンの撮影の時に、社さんと二人に食事の大切さについてとくと説明した事がある!
少しは思い出してきてるのかな…!?

「そうですよ、敦賀さんはいつもご飯なかなか召し上がられませんでしたから…だからコレ!!ちゃんと食べてくださいよっ?」
「ありがとう。DVD全部見終わったら食べるよ。」
「あと一体どれだけ残ってるんですか!?まだまだたくさん残ってますよね?ご飯が先です!」
「いやそんなには…」
「いえ!たくさんあるって社さんから聞いてますっ」

早くお弁当を食べてほしくて。
私の味を思い出してほしくて、意地になって敦賀さんに食べさせた。
敦賀さんは苦笑いしてたけど………


お願い、私のこと少しは思い出して………







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切ないきょこたんが書きたかったり。






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