2013年12月 * 拍手設置(加筆なし)


**原作沿い設定作品


※シリアス系・オリキャラ有・途中大人表現有(限定記事入ります)

特にオリキャラが蓮に絡むのが嫌いな方はご注意くださいませ。




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『…あの…本当に申し訳ないのだけど、君のこともわからないんだ。』


眉を寄せて、困惑したようにそう告げられた。
私は涙すら流すことも出来ず、その場で固まった。





あの後どうやってだるまやまで戻ってきたのかわからない。


今日の仕事はきまぐれの収録だけだった。

顔を出さずに済む坊だったし、もうすっかり慣れた仕事だっただけに、一応はこなせていたらしい。

ブリッジの皆さんからは「敦賀さん心配やなー」と声をかけられたが、社長の発表があるまでLME所属者全員には箝口令が敷かれた為に局内ではそれ以上の話は出せなかった。
ショックでふらふらだった私に、社長さんは「念のため」と言ってセバスチャンさん(仮)を臨時マネージャーとして1日付けてくれた。

私は移動中ずっとぼーっとしていたらしい、気付いたら局入り、気付いたらだるまや…と言った感じで1日が終わりを迎えている。

………敦賀さんは全ての記憶を失くしていた。

自分が誰なのかわからない。
旧知の仲である社長さんの事も「どなたですか?」と尋ねる始末だった。
これが一時的な物なのかお医者様でも判断がつかずに、ひとまず様子を見ることになった。

(明日は再検査だって言ってたな…)

手を握っていた私に投げ掛けられた、困惑の視線。
「覚えていない」と戸惑いながら告げる声。

全てが私の知る敦賀さんではなかった。

「お姉様(キョーコちゃん)の事だけは、何があっても覚えてらっしゃる(忘れない)と思ったのに!!」

(マリアちゃんと社さんは口を揃えてそう言ったけど…)

私のことも忘れた事に驚いたらしい二人にはそう言われた。

二人は敦賀さんの気持ちに気付いていたらしい。
社さんからは「あいつはかなり前からキョーコちゃんの事好きでね~」なんて、乙女顔して力説してきた。

(でも、忘れるものは忘れるのよ…)

眠たくはなかったけど、炬燵に入ってごろんと横になる。
ふと壁に貼られたポスターに目が止まった。

ショータローのより小さい敦賀さんのポスター。
まだ敦賀さんを敵視してた頃の物。
だけど、病室で見た敦賀さんよりもずっと、私の知ってる『敦賀蓮』に近しい表情。

(私の知らない敦賀さん。…私を知らない敦賀さん)

(もう、今まで通りにはならないんだ)

『愛してる』なんて言葉だけじゃない。
今まで優しくかけられていた全ての言葉が、全ての表情がもうなくなるのかと思うと涙が溢れてきた。

「……っ……うぅ~~っ!……!」


嗚咽はいつの間にか叫び声に変わり、私は久しぶりに声を上げて泣いた。





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だるまや迷惑編。







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