2013年12月 * 拍手設置(加筆なし)
悪魔きょこ×天使蓮さんのお話し。
※拙宅唯一の死ネタです。
ハピエン蓮キョ以外受付ない方は閲覧ご遠慮くださいませ。
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奏江と会ってしばらくした後、久遠に会う為久しぶりに森へ向かったキョーコは、綺麗だったほとりの様子に驚くしかなかった。
白く美しく大輪を咲かせていた薔薇はハラハラと花弁を散らし、語り合う二人を優しく見守る木陰を提供してくれていた木々は、葉こそ付けてはいるが萎れているのは明らかだった。
そしてほとりには美しい男が横たわっている。
しかし、久遠にそっくりなその男の髪は艶やかなダークブラウン。
白いシンプルなシャツのまわりには、白い羽根が薔薇の花弁とともに散っていた。
「久遠…!?久遠さんなの…?」
キョーコは慌てて彼の肩を揺すった。
手を握ろうと取ると、自分の手がじゅっと焼けるように熱く感じ、悲鳴を上げながら手を離す。
キョーコの手も彼に触れた部分も、火傷のように赤く爛れていく。
瞬間キョーコは彼が人間ではなかった事に気が付いた。
―――彼は、天使だった………
基本天界で暮らす天使と、魔界で暮らす悪魔には接点がない。
相容れない存在の為、互いに触れ合おうとすると爛れてしまい、大きなダメージを受けてしまうのだ。
「んっ……キョーコ…ちゃん?」
ずっと静かだった彼が目を覚ました。
「久遠…さん?貴方は天使だったの?」
「…あぁ、爛れさせてしまったんだね。綺麗な手なのに…ごめんね?」
「そんなっ!そんな事はいいの!それよりどうして…」
「…ずっと見てたんだ。君のこと。天使よりも綺麗な心を持った、小さな悪魔さん……愛しくて、俺が守りたくて…人間になりすまして地上に下りてきたんだ……」
「じゃあ、久遠さんの精気を…私が奪ってしまったのね?」
「クス…こっそりあげてたつもりなんだけどなぁ。…キョーコちゃんが爛れないように力を使い過ぎてたみたいだ……」
そう言って、久遠はそっと目を閉じた。
「…久遠さん?久遠さん!?っっやだっ!起きて!目を覚ましてぇっ!!」
自分の手が爛れるのも厭わずに久遠を揺さ振り続けると、ふっと瞼を開いた久遠がゆっくりと微笑んだ。
「キョーコちゃん、笑って…俺はキョーコちゃんの笑顔が大好きなんだ………」
そしてそのままふわりと笑みを浮かべ再び目を閉じると、すぅっと胸の上下する動きが止まった。
キョーコはその安らかな笑みを見て、初めて久遠が好きと気付いた。
綺麗な泉のほとり、白い薔薇。静かに煌めく木漏れ日。
どれもキョーコの好きなもの。
だけど、それ以上にこの場が心安らげる場所なのは、久遠がいたからだ。
「…好き……私も久遠が好き…」
でももう彼にはキョーコの声は届かない。
(彼が居なくなるのならば………私はもういい。もう…いいの………)
キョーコは、最期の瞬間をまさに刻もうとしている久遠の胸にそっと寄り添い、耳をあてた。
天使である久遠の体は、命が尽きても悪魔のキョーコから精気を奪っていく。
久遠の最期の鼓動を確認し、キョーコもそっと涙に濡れた瞳を閉じ、そのまま動かなくなった。
深い森の中にある小さな泉には、今日も美しい白い薔薇が大輪を咲かせていた。

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文才ぷりーず。
(今でも思うぜ、文才ぷりーず← *2013年12月25日)
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