ついに、大河ドラマの歴代最低視聴率を出してしまったようです。
http://www.daily.co.jp/gossip/article/2012/06/05/0005110647.shtml
(引用開始)
3日放送されたNHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が関西地区で前週比1・9%減の9・2%となり、初の2ケタ割れしたことが4日、分かった。
NHKによると、大河の視聴率1ケタ台は同局が確認しているデータ(関東89年以降、関西94年以降)では初めて。関東地区は前週比0・8%増の11・0%だったが、22話までの平均は13・9%となり、全話平均が歴代最低の94年「花の乱」(14・1%)の水準を下回ってしまった。
3日は同時間帯にテレビ朝日系「サッカー・W杯アジア最終予選 日本×オマーン」が31・1%を記録した影響があったとみられるが、今年「平清盛」が12%台を割り込んだ5回はいずれも他局の主要スポーツ番組などと重なる“不運”も。次回10日はフジテレビ「男子バレー・ロンドン五輪世界最終予選」の予定がある。(数字はビデオリサーチ)
(2012年6月5日)
(引用終わり)
私は、こちらの日本語放送テレビJSTVで観ていますが、確かに面白くないです。
ちまたでは、その原因は、「画面が汚い」「松山ケンイチの演技がワンパターン」とか言われてています。井戸敏三兵庫県知事も「画面が汚くチャンネルを回す気にならない」と批判したとか。
また「王家」という用語が使われていることにネット上では「天皇家の権威をおとしめる表現」だとして、批判する発言がたくさん見られます。(こういう発言をする人たちがネトウヨ(ネット右翼)なんでしょうね。でもどういう精神構造なのでしょうか。
私としては、視聴率低迷の原因はもっと単純で、脚本が悪く話がわかりにくいからだと思いますけど。
私は結構歴史好きな人間ですが、まず保元の乱・平治の乱の人間関係はもともとわかりにくいですね。登場人物の名前も似ているので、受験勉強をしていた頃ですら、憶え切れなかったように思います。
このドラマでは、歴史上の出来事をなぞっているばかりで(追記:平清盛が白河上皇の子である、など「説」も含めて)、その複雑な関係がやっぱり頭にはいってこない。ドラマは記憶能力が低下している現在、毎週のようにテレビを見ながらWikipediaで人間関係を確認する始末。しかも同じことを何回も。
そんなことを考えて調べてみたら、面白い人が面白いことを書いている記事を見つけました。
書いているのは、関裕二。私がはまっていて、何度かブログでも紹介している歴史作家です。
フォーサイトの記事
http://www.fsight.jp/article/11523
(上記が元記事ですが、会員制のようでそのうち読めなくなるかも。こちらに同じ記事があるのでこちらのリンクも貼っておきます。
http://getnews.jp/archives/223211)
(引用開始)
『NHK「平清盛」はなぜ面白くないのか』
2012/06/01
NHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が低迷しているのだという。
その理由は「画面が汚い」などというものではあるまい。最大の原因は、複雑な人間関係と時代背景を丁寧に説明していないからではないか。背景には、いくつも歴史の大転換が埋もれているのに、話を「男女の愛憎劇」に矮小化し、ホームドラマに仕立ててしまったことが、敗因であろう。実にもったいない話だ。
たとえば、平氏や源氏は天皇家の末裔なのに、なぜ平安貴族が蔑む、武家の道を歩んだのか。なぜ「穢れ」と忌み嫌われる殺生を引き受けねばならなかったのか。その理由が、描かれていない。
さらに、「院政」をめぐる問題がある。ドラマを観ていれば、白河上皇(伊東四朗)が独裁者であることは理解できるかもしれない。だが、このような「院の独裁」や「親政」が、白河上皇の時代から始まった事実と理由が明示されていない。
(中略)
さらに、「誰が天皇の妃になって皇子を生むかという女同士の暗闘」が、この時代の権力闘争の要であったという「現代人にはわかりにくいかつての常識」を十分説明していないから、ドラマを観ていても政争の真相がつかめない。
上皇と摂関家の暗闘は、やがて「上皇」「天皇」それぞれを、分裂した藤原氏が後押しすることで、藤原内部の骨肉の争いへと進展し、泥沼化していく。そして、紛争に利用され、振り回されていた武士が、「貴族のあさはかさ」に幻滅する一方、「自分たちの実力」に気づき、武士の時代を築いていくことになるのである。
平氏や源氏は、天皇の末裔であるからこそ、藤原氏に邪魔にされ、地方に飛ばされ、危険で穢れた仕事を与えられたのだ。けれども彼らは土地と結びついて「真の実力」を手に入れた。武士が腐りきった貴族や官僚たちの社会を潰すことができるようになったのは、貴族のいやがる仕事を黙々とこなした結果なのである。
これほど豊富な素材があるにもかかわらず、ドラマが陳腐なのは、「歴史そのものを再現するだけでおもしろい」という大河ドラマの基本を、忘れてしまったからではあるまいか。
(引用終わり)
「歴史そのものを再現するだけで面白い」と氏が書いている額面通りにと、私は思いません。このドラマ『平清盛』は歴史的事実をなぞって再現しているだけで、面白くはなく、まさに歴史を受験のための暗記物の勉強としてやっているくらいの退屈さに思えます。
そうではなく、関氏が自ら書いているように、その裏側の社会の大きな流れや、それぞれの人間の心の動きを、深くしっかりと視聴者に理解できるようにうまく描いて、「なるほど、この出来事はこういう流れで起きたんだ」という背景が理解できることで、初めて歴史事実にドラマとしての命が吹き込まれて、興味や感動を呼んで、結果として視聴率にもつながるように思います。
さて、そんな関裕二氏が書かれているサイト『教科書に載らない古代史』は以前にも私のブログで紹介しましたが(例えば、こちら『纒向遺跡と邪馬台国の謎 関裕二氏の説による大胆な古代史の見直し』)、再訪問してみると、記事が増えていました。
http://yomimonoweb.jp/sekiyuji/
聖武天皇と光明子についての記事は、これもまた大胆な推論によって歴史の裏側を理解した気分になれて、とても(しかも私は東大寺学園出身だけに、よけいに)興味深いものです。私は、下記の本で一度この説を知っているのですが、改めて読んでまたワクワクしました。(残念ながら、この本は絶版のようですね。)
鬼の帝 聖武天皇の謎 (PHP文庫)/PHP研究所

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