http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120425/k10014702361000.html
(引用開始)
アメリカ農務省は、24日、西部カリフォルニア州で飼育されていた乳牛1頭が国内で4例目となるBSEに感染したと発表しました。
日本は、アメリカ産牛肉のBSE対策として生後20か月以下の牛の肉でBSEの病原体が蓄積しやすい脳やせき髄などを適切に取り除くという輸入条件を課しています。
このため、農林水産省では「今回の感染牛は、生後30か月以上の高齢と確認しており、アメリカの市場にも流通していないので、直ちに国内の食肉市場に影響を与えるとは考えにくい」と話しています。
一方、食の安全を所管する厚生労働省は、世界的にBSEの発生件数が減っているとして、現在、生後20か月以下に限っているアメリカ産牛肉の輸入条件を緩和するかどうか食品安全委員会に諮問する手続きを行っています。
今回の発生を受けて食品安全委員会で審議が行われるとみられることから、今後、輸入条件の緩和を巡る国内の議論に一定程度、影響を及ぼすことも予想されます。
“特段の措置必要ない”
藤村官房長官は、午前の記者会見で「4例目のBSEの感染牛は、カリフォルニア州で飼育された30か月齢以上の高齢の乳牛で、通常のBSEサーベランスで発見されたものだ。食肉処理はされていないため、食肉が流通することはない。日本へ輸入されるのは、現行では20か月齢以下となっているので、輸入段階での特段の措置は必要ないと考えている」と述べました。
(引用終わり)
BSEについては、私は昨年7/21に、放射性物質の危険性と関連させながら、記事を書きました。
牛の全頭検査と狂牛病(BSE)
http://ameblo.jp/tomamx/entry-10950999459.html
要旨は、以下の通りです。
いつもの安井至先生のサイト記事によると、100万頭のBSE感染牛を危険部位も合わせて食べられてしまった英国でいわゆる「狂牛病」になった人が156名であることから考えると、多くても5頭しか食べておらずしかも危険部位を食べる習慣のない日本人が狂牛病にかかるのは、1万年に1人出るか出ないかだろう。それでも全国の各自治体は、安全のためには意味がないことを理解しつつも、優柔不断のため、現在でも多額の費用をかけて全く無駄な全頭検査を続けている。
今回のアメリカでのBSE感染牛の発見を受けて、もう少し調べました。
やはり、食品についての科学的な議論と言えば、松永和紀さんのFOOCOM.net。
やはり記事が書かれていました。
http://www.foocom.net/column/editor/6398/
(引用開始)
米国で4例めのBSE感染牛が見つかったとテレビニュースで聞き、TPPや、食品安全委員会でリスク評価をしている最中の「米国産牛肉の輸入緩和措置」についての議論が複雑になるなあ、と思った。あわてて米農務省(USDA)のウェブサイトを見ると、なんだ、非定型BSEだと説明してあるではないか。
非定型であれば、話はまったく変わってくる。科学的な観点から言えば、TPPや食品安全委員会のリスク評価にはほとんど差し障りがないはずだ。ニュースは、肝心のポイントが抜けていた。
(中略)
だが、今回の事例について、USDAの主席獣医官のJohn Clifford 氏は声明で、「非定型(atypical)であり、従来型とは異なり、プリオンに汚染された飼料を牛が食べたことによる感染ではない」と述べている。
(中略)
したがって、今回の一件は、米国のサーベイランスが一定の役割を果たしていることは証明しているとは言えても、「だから、米国の牛肉は危ないんだ」ということにはなり得ない。
(引用終わり)
非定型のBSEはある確率で自然に起るもののようで、これが、米国でまだBSE感染・蔓延の可能性が絶たれていないことを示すものではないことがわかりました。「非定型」であることが本当なのか、確認する必要はあるかもしれませんが。
(なお、一部のマスコミでは「非定型」についてちゃんと報道されていました。)
そしてその記事からリンクしている同じ著者による記事に、大事なことが書かれていました。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1639?page=1
米国牛肉 BSE 輸入規制 日本の条件、もはや科学的根拠なし
(引用開始)
肉骨粉の厳しい規制が始まってから10年ほどが過ぎ、BSE発生のリスクは非常に小さくなっているとみなされています。そのため、多くの国が規制を緩めているのです。BSEが多数発生した英国を含むEUでさえ、食肉にする前の検査対象とする牛の年齢を段階的に引き上げて、現在では72カ月齢を超える牛のみを対象としています。
ところが日本は、この「リスクの大きさに応じて対処を変えて行く」ということが下手くそな国。相変わらず月齢にかかわらず全頭検査を行い、輸入規制も厳しいまま。「厳しければ、とにかくいい」という判断が消費者には強く、リスク管理のコストまで検討して緩める、ということがなにごとにつけ、できません。
(引用終わり)
10万頭のBSE感染牛を食べてしまったと考えられ、156人の狂牛病患者を出してしまった英国よりも、わずか36頭の感染牛が発見されただけで2009年以降発生しておらず、国内での狂牛病患者は(おそらく)1名も出ていない日本の方がずっと厳しい検査を続けていることは、この国がいかにリスクとコストとを理解できないかを示しています。
河野太郎氏のように全頭検査をやめることを主張している政治家もいない訳ではないのですが…。
全く同じことが放射性物質についても起きつつあります。
科学的にリスクを捉え、その管理に要するコストとをバランスさせる感覚を持てるように、国民を啓蒙することが、まず最初に政府・政治家(さらにはできればマスコミ)に求められる仕事と考えます。
なお、TPPに反対だからといって今回のアメリカでのBSE牛発見を非科学的に問題視するべきでないこととは、原発反対だからといって放射性物質の危険性を非科学的にあおってはいけないということと同じです。
私はTPPには大反対ですが、日本の牛肉の全頭検査はやめるべき、原発は(現実的に)廃止の方向に向かうべきと考えますが、日本の食品の放射性セシウム基準は厳しすぎる・除染は無駄に広範囲に行うべきではないと考えます。
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