ブルンさんのブログで知ったのですが、朝日新聞で食事による内部被曝が、福島ですら健康影響を心配する必要のないレベルであることが報道されていたようです。
http://www.asahi.com/national/update/0118/TKY201201180799.html
(引用開始)
福島の食事、1日4ベクレル 被曝、国基準の40分の1
家庭で1日の食事に含まれる放射性セシウムの量について、福島、関東、西日本の53家族を対象に、朝日新聞社と京都大学・環境衛生研究室が共同で調査した。
調査は昨年12月4日、全国53家族から家族1人が1日に食べた食事や飲んだものをすべて提供してもらい行った。
この食事を毎日1年間、食べた場合の被曝線量は0.023ミリシーベルトで、国が4月から適用する食品の新基準で、超えないよう定めた1ミリシーベルトを大きく下回っていた。福島でもっとも多かったのは、1日あたり17.30ベクレル。この水準でも年間の推定被曝線量は0.1ミリシーベルトで、新基準の10分の1になる。原発事故前から食品には、放射性のカリウム40が含まれており、その自然放射線による年間被曝線量は0.2ミリシーベルト(日本人平均)ある。セシウムによる被曝線量はこれを下回った。
調査した京都大医学研究科の小泉昭夫教授は「福島のセシウム量でも十分低く、健康影響を心配するほどのレベルではなかった」と話している。
(引用終わり)
私は1/14に「NHKの放射能デマ 『追跡!真相ファイル:"低線量被ばく 揺らぐ国際基準” 』」の記事にも同じようなことを書いていますが、不幸中の幸いにも、今回の事故による被曝は健康影響を心配するレベルではないことが、中立な科学者から何度も何度も発信されています。
今回もそれを裏付ける情報です。
これと関連しますが、福島県田村市の「たむらと子どもたちの未来を考える会」というサイトで、副代表をされている半谷輝己さんという方(「環境学ガイド」グループのメンバー)が、放射性セシウムによる内部被曝と食品への基準値の変更について、以下のようなコラムを書かれています。
部分的に引用します。詳細は、ぜひ元記事をご覧ください。
http://www.xn--f9j6c1a.jp/column_kijyunti.html
(引用開始)
誰のための基準値
平成24年1月12日現在、文部科学省放射線審議会において、厚生労働省から諮問されている「乳及び乳製品の成分規格に関する省令の一部の改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」の議論が続いています。
これは、「一般食品に含まれる放射性セシウムの放射能量を500Bq/kgから100Bq/kgの新基準値に変更して良いですか」について助言をください、と言えば分かり易いかも知れません。
平成23年12月22日に開かれた薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会において、以下の平成23年の9月と11月に調査されたデータが食品安全委員会より開示されました。
放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)による内部被曝は東京都民のみなさんは、自然放射性核種のK-40と比較してわずか1.5%、福島県民でさえ、わずか10%ということです。
つまり、東京都民も福島県民も誰も放射性セシウムによる内部被曝はほとんどしていなかったと言えるのです。
「誰も被曝をしていなくて良かったね、これからも福島産を食べても大丈夫なんだねそれどころか毎日食べても平気みたいだね」となるはずでした。
ところが誰も被曝をしていないにも関わらず、さらに厳しい基準値を導入しようとしています。
新基準値の100Bq/kgの導入は、福島県に大変なことを引き起こすことになります。
たくさんの福島産が出荷停止となるでしょう。
農業をさせて貰えない農家のみなさんに日々何をしろと言うのでしょう。
農業が出来ない喪失感と農業が出来ないストレスは、農家のみなさんの健康を脅かす事は明らかなのです。
(引用終わり)
さらにその後に、悲痛な「追記」が書かれています。
(引用開始)
追記
私、半谷輝己の母が、昨年11月26日に、
実家がある双葉町からの避難先の埼玉県にて他界致しました。
避難後、わずか半年で母の体重は半分の20数㎏となったのが原因です。
毎日の様に、40年近く暮らした自分の家に戻れない辛さを私に訴えていました。
「放射線の被曝では無いのです。避難後のストレスによる精神疾患が恐ろしいのです」と、
早い時期から私は知っていたのに、私は、母を救う事は出来ませんでした。
私の悔しさを理解できますでしょうか。
母を救う方法は、慣れ親しんだ家や土地に戻すことを起点にしなくてはならなかったのです。
新基準値は、20㎞圏内の農家のみなさんにとっても、帰還への希望を打ち砕くものです。
さらには、私の実家の15件ある隣組において、
母を含めて5人のお年寄りがすでに避難後亡くなっています。
恐らく多くの仮設住宅でも同じような被害が、この瞬間も起きているでしょう。
これ以上犠牲者を増やしてはいけません。
今、早急に手を打つべきことは新基準値ではないのです。
(引用終わり)
これが福島で今起きている現実です。
原子力発電反対派の人々が、科学的根拠の乏しい「ゼロリスク」をいたずらに追い求めることは、その人自身や家族の不必要な精神的ストレスを引き起こすとともに、その影響はただでさえ被害にあった多くの福島の方々をさらに苦しませ、次々と犠牲者まで生むことになっていることに気づくべきです。
原子力発電反対派の人の多くが「良心」から行動していることを私も感じています。
しかしその活動が、実は福島の人々に甚大な悪影響を与えていることを認識することが必要だと考えます。
実はこのことは、チェルノブイリの教訓でもありました。
私が引用するのは、いつもマイナーなサイトの記事ばかり(!?)と考えられているかもしれませんが、「NEWSWEEK日本版」にこのような記事があるのを見つけました。
よくまとまっていますので、少し長めですが引用して今日の締めとさせていただきます。
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/01/post-437.php
チェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたのは放射能ではない
2012年01月05日(木)19時52分
IAEA(国際原子力機関)は90年代に「4000人が慢性被曝で癌になる」と予想し、児玉龍彦氏(東大)は「チェルノブイリで膀胱癌が増えた」と国会で証言したが、これは間違いである。国連科学委員会(UNSCEAR)の調査の行なった被災者53万人の疫学調査でも、小児甲状腺癌以外の癌は増えていない。つまりチェルノブイリ事故の放射能による死者は、59人しか確認されていないのだ。
ところが事故後、ロシアの平均寿命は1994年には事故前と比べて7歳も下がり、特に高齢者の死亡率が上がった。一部の人々はこれを放射能の影響だと主張するが、死亡率の上昇は原発からの距離に関係なく、むしろ現地のウクライナより遠いロシアのほうが上昇率が大きい。また放射線の影響は癌以外には出ないが、事故後に増えたのは心疾患などのストレス性の病気だった。
(中略)
チェルノブイリで退去命令が出たのは年間5ミリシーベルト以上で、これは日本の計画避難区域よりきびしい値である。当時のソ連は社会主義の崩壊直前で経済は疲弊していたため、移住を強いられた人々のほとんどは失業し、政府の援助も受けられなかった。結果的に20万人が家を失い、1250人がストレスで自殺し、10万人以上が妊娠中絶したと推定される。ロシア政府の報告書は次のように結論している。
「事故に続く25年の状況分析によって、放射能という要因と比較した場合、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限、事故に関連した物質的損失といったチェルノブイリ事故による社会的・経済的影響のほうがはるかに大きな被害をもたらしていることが明らかになった。」
福島で起こっていることも同じである。放射線量はチェルノブイリよりはるかに低く、年間20ミリシーベルトを上回る地域はもうないのに、政府は住民の反発を恐れて避難民を帰宅させない。「除染してから帰宅させろ」という要望に応じる財源も要員もなく、除去した土を移動させる場所もないため、11万人以上が10ヶ月近く不安な避難生活を強いられている。
ロシア政府は「チェルノブイリ事故の主な教訓の一つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されなかったことである」と指摘し、「この教訓は福島第一発電所の事故にとっても今日的なものだ」と述べている。事故対策の最終目的は放射能を減らすことではなく、人々の被害を減らすことである。微量の放射線にこだわって、これ以上彼らを隔離したままにすることは人道上ゆるされない。
(引用終わり)