海江田経産大臣が、6日、全原発に対して「ストレステスト」を実施すると表明しました。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110706dde001040005000c.html
(引用開始)
海江田万里経済産業相は6日午前、経産省で記者団に対し、原子力発電所の一層の安全確保のため、全原発を対象に(耐性試験)を行うことを明らかにした。定期検査などで停止し、再稼働ストレステスト準備中の原発を優先して実施。具体的な試験項目は、細野豪志原発事故担当相や原子力安全委員会と協議して決定する。ただ、ストレステストの実施で原発の再稼働がさらに遅れるのは確実で、今夏の電力需給が逼迫(ひっぱく)するのは必至だ。
ストレステストの実施は、5日の菅直人首相と海江田、細野両氏の会談で決まった。
海江田氏は記者団に「直ちに作業に入りたい」と指摘。「安全確認だけでなく、国民の一層の信頼を得て再稼働していく」と強調した。再稼働が遅れる懸念については「需給に問題が起きないよう責任を持つ」と語った。地震や津波などに対する原発設備の強度や機能などの耐性を評価する。
欧州連合(EU)では東京電力福島第1原発事故を受け、6月から各国が自国の原発へのストレステストを実施している。経産省はEUのテスト内容も参考にする方針で、規制機関である原子力安全・保安院が実施する。
(引用終わり)
しかし、先月18日、海江田大臣は、原子力安全・保安院による各原発への立ち入り検査結果などを踏まえ、事故対応は適切に実施されているとして「運転停止中の原発の再稼働は可能」との見解を表明していました。
特に、先月29日に海江田大臣から停止中の九州電力玄海原発の再稼働を要請され、安全性は確認されたとして容認する姿勢を示していた佐賀県の古川知事や玄海町の岸本町長は、困惑・反発を隠せません。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110707ddm001040043000c.html
(引用開始)
古川知事は先月29日、会談した海江田万里経済産業相から玄海原発2、3号機の再稼働を要請され、「安全性はクリアされた」と表明。経産省は玄海原発の再稼働を突破口に各原発の立地自治体に再稼働を働きかけたい意向だった。
だが、古川知事は6日、佐賀県庁で記者団に「再稼働(の最終判断)はストレステストが終わるのを待ってからが妥当だ。現実的には7月中旬はない。まったく飛んだ」と表明。玄海原発のストレステストが数カ月かかる可能性を指摘し、最終判断の時期については「先が見えなくなった」と語った。また、原発を巡る菅首相と海江田経産相の認識が食い違っているとして、「何を信じたらいいのか」と戸惑いの表情を浮かべ、「首相の真意や政府としての統一見解が示されないと最終判断はできない」と述べた。
一方、既に九州電力に再稼働了承を伝えた玄海町の岸本英雄町長は「状況によっては(再開了承を)撤回しなければならず、私の返事は保留する」と述べ、再開了承を白紙に戻す考えを示した。
(引用終わり)
菅首相は、ストレステストが停止している原発の再開の条件なのかについては、明言を避けています。
http://news24.jp/articles/2011/07/07/04185962.html
(引用開始)
国会で7日、参議院予算委員会の集中審議が行われ、野党側は、全国で停止している原子力発電所の運転を再開するには「ストレステスト(耐性検 査)」の実施が前提条件となるのかどうか、政府の見解をただした。これに対し、菅首相は、前提条件となるかどうかについては明言を避けている。
自民党・片山さつき議員「『ストレステストが終わらないと再開できない』といった細野原発相が正しいのか、海江田経産相が言った『ストレステストは必ずし も再稼働の条件ではない。そうでないと電力状態が悲惨になる』。どちらが正しいんですか?2人の閣僚が別のことを言っています」
菅首相 「海江田経産相からも細野原発相からも、国際原子力機関(IAEA)が従来提起している、ストレステストの考え方を提起している。最終的にどういうルール でやるべきかの結論をいただいていないが、2人の閣僚にしっかりと国民の皆さんが納得できるルールを提案していただきたい」
(引用終わり)一方、枝野官房長官は、ストレステストの結果で、稼動中の原発の停止もあり得ると発言しました。
http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201107070079.html
(引用開始)
枝野幸男官房長官は7日午後の記者会見で、全国の原発を対象に行うストレステスト(安全検査)について「適切でない結果が出たときに対応しないのなら、やる意味がない」と述べ、稼働中であっても結果次第で運転停止に向けて対応する考えを示した。
(引用終わり)
このような状況を踏まえて、私の見解を。
まず政治的な観点から。
菅首相はますますダメダメであることを露呈しましたね。
瑣末な問題であれば担当大臣に任せるのでもいいでしょう。しかし、これほど日本全体が注目する最重要な政治的問題について、一国のリーダーが明確な見解を示せず、大臣に任せると堂々と発言するとは、完全に首相失格です。
ウワサでは、ストレステストはまたまた菅首相の思いつきとも言われています。過去に自分がどういう見解を示し、どう指示したのか、その一貫性の無さもわかっていないのでしょうか?自分の延命しか興味がないとまで言われていますが、どうなのでしょうか。
そして海江田大臣。この件の責任を取って、辞任を示唆しました。
もう菅首相には付き合い切れないとの思いもあるかもしれません。菅首相に振り回されて同情的な声もあるでしょう。
しかし、自ら蒔いた種であるのも事実。6/29に国が安全を保証するとして玄海原発の再稼動を要請したとき、どれだけ自らが確信を持てる根拠があったのでしょう?私もその点、ブログでも危惧していました。
経産省の官僚から楽観的な報告を受けたのか、あるいは菅首相からの指示を真に受けたのか、わかりませんが、いずれにせよ所管大臣として国民の命を自らの責任で守るだけの確固たる見識があっての行動ではなかったことは、明白です。辞任もやむなしというか、やはり大臣として失格でしょう。
一方で、枝野官房長官はまだまともな思考能力を保っているようです。
とは言え、首相・閣僚の見解がまとまっていないということは、結果的に内閣官房長官としての仕事はできていないということ。まあ、首相・閣僚がひどすぎるので、個人的には同情しますが。
さて、こんなわが国政府のあまりにもひどいゴタゴタはここで置いて、以下は技術的な観点だけで。
私は、停止中の原発の再稼動だけを問題にするのではなく、中立な立場で全ての原発の安全を確認し、安全だと確認できれば停止中の原発の再稼動も認め、一方で安全と判断できない原発は現在稼動中の原発でも停止させるべきと訴えてきました。
「ストレステスト」なるものが、正しく行われ、しかも枝野官房長官の言うとおりに進められるのであれば、私の考えていた通りの安全確認となるので、これは大賛成です。
これに時間がかかるのはある程度仕方が無いでしょう。停止中の原発の再稼動が遅れることも容認せざるをえません。(電力不足については、昨日のブログで書いた自家発電を最大限利用することを求められればいいのですが・・・本当なら。)
ただ問題は、これを「規制機関である原子力安全・保安院が実施する」とされていることです。
毎日新聞がわざわざ「規制機関である」と書いているのは、皮肉でしょうか?もう国民の誰一人として、安全保安院が規制機関であるなどと信じていません。また、原子力安全委員会もしかり。
一方で私は、リスクが完全にゼロでない限りは、すなわち全ての原発を今すぐ止めよという意見にも賛成しません。
このテストを本当に中立な立場で実施するために、誰が担当するのがいいのか、ここがやっぱり難しい問題です。原発に対して厳しい目を持ちつつ、現実的な(妥協的という意味ではなく)判断ができる学者が責任者となって実施すべきですね。
もちろん原子力村の学者は絶対に失格です。
個人的には、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長を務めておられる、失敗学の畑村洋太郎東大名誉教授が最も適任だと考えます。
政府のゴタゴタはもういい加減にしてほしいですが、とにかく、全原発の安全をしっかりと正しく確認するよう、着実にテストが進められることを願ってやみません。
※ この他にも、九州電力のやらせメール事件もありましたが、書く元気がありません。
九電もその体質をさらしてくれたおかげで、東電だけでなく、全電力会社を解体して発送電分離する方向に弾みがつけばいいなと思ったりしました。