平成23年9月14日(水) 一般社団法人日本伝統芸術国際交流協会 JAA倶楽部銀座サロンにおいて、芸能学会会長・三隅治雄氏が「養成講座開講にあたって」及び「江戸の水系について」と題した講義が開催されました。 前回「養成講座開講に当って」を掲載に、引き続き、行われた「江戸の水系について」の講義内容を掲載します。なお、その講義内容は、5回ぐらいに分けて掲載する予定です。


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 先ず第1回目のテーマですが「川と海が創出した江戸東京」ということで水と川の関わりについてお話をします。

それにつきましては、東京都でも、中央区でも最近こういうような取組みを始めております。


       中央区の水辺の現状と課題


中央区では「中央区の水辺の現状と課題」と題しまして、中央区はご存じのように前が海、それから川が日本橋川、神田川が流れて来て、そして、また回りを、目の前を色々な水路というものが、第一、隅田川というものを持っている。

 ということで見ながら、ここでいっているのは、戦後になり、交通の中心が舟運から陸上交通へと変化すると、水路の埋立が行われ、江戸以来の都市活動を支えてきた水路は徐々に姿を消し、さらに、高度成長期には、東京オリンピック開催に向けた河川の埋立や、日本橋川への首都高速道路整備、台風の被害からまちを守るためのコンクリートの直立堤防の設置などにより、水辺とまちの分断が進み、人々の水辺への関心が薄れることとなりました。」と現状を述べています。


だけどこんな現状にしたのは、実は中央区や東京都がそういうことをやったんです。そういうことを推進したから今このような状況になっている。


そこで反省をして、水辺の復権の兆しと題して「下水道普及率が高くなるなどに連れて水質が改善され、人々の水辺をもっと活用したいという気運が高まってきました。昭和60年代に入ると、ウォーターフロントの再開発が行われるように」なった。
とうきょう水辺たから探士隊のブログ-9月14日講義4
川向うの佃島の一角ですね。そこのウォーターフロントに超高層がどんどん建つようになりました。ただし、これが良いことかどうかは問題なのですけど、「従来の直立堤防に替わるスーパー堤防事業が進み、佃公園・石川島公園・新川公園・明石町河岸公園など、水辺の公園やテラスの整備による新しい快適な水辺空間が誕生し、再び水辺が注目を集めるようになりました。」


さぁこれからどうしようかということについて中央区は、「水辺の現状と課題」を提出して、大いにこのような事業に、みなさん参加を求めるという姿勢を示すようになりました。


       運河ルネッサンス


 一方、東京都の港湾局では、「運河ルネッサンス」というようなものを言い出しました。


もう、ご存じのとおりに東京の川向うの深川、江東区なんかは、運河はもともと川向うのずぅっと隅田川、江東区一帯の江東地区は運河が江戸時代から沢山造られていました。


そういうものの上で、運河の歴史をいえば「江戸時代、運河は、人々の生活にかかせないものとして」存在した。


ところが運河の現状は「近年、東京湾に着いた貨物を陸域へ運ぶ手段としては、トラックなどの陸上輸送が主流になりました。それに伴い、舟輸送量は低下し、運河の利用は大幅に減少しています。また、そのような産業構造の変化が進むにつれ、運河周辺の土地利用も、工場や倉庫などの産業基盤としての利用から、オフィスやマンションなどの都市的利用へと変化してきています。」と述べられているが、そのような現状に囲まれている運河は、それはそれでいいんだろうか、というような反省がある。


 だけども、しかしながら運河の新たな可能性として世界的に眺めてみるならば「世界的
な水辺都市として名を馳せるベニスやアムステルダとうきょう水辺たから探士隊のブログ-9月14日講義5 ムなど」あるいはベニチィア、テレビなどでもご存じのとおりに、非常に水路を美しくして、舟を浮かべ、舟歌を歌いながら楽しそうにしている。

そういうところに世界から観光客が大勢集まって来て、都市の中での水辺の美しさ、そこの楽しさ、そういうテラスが間近にあって、そのようなところで食事を楽しむというような情景、そういうようなところが「観光の目玉として運河が世界中から多くの観光客を引き寄せています。」

このことは、「都市の中の運河には観光資源としての大きな魅力があることを物語っています。現在東京都では、千客万来の世界都市・東京を目指して観光まちづくりを推進しているところですが、東京の運河も観光資源として大きな可能性を秘めています。」


ところがみなさんご経験があるのでしょうか、屋形船があって、私は屋形船に二度ばかり乗って絶望したのです。


どういうことかと言いますと、だいいちまだ隅田川がそれほど整備されていなくて、
まだまだ河岸はコンクリートで、屋形船は屋根が低いので、外を眺めますと、ビルと河岸のコンクリーとうきょう水辺たから探士隊のブログ-9月14日講義3 ト造りだけが見えて、外からその屋形船、隅田川を見ると屋形船に提灯がついて楽しそう、一見美しく見えるのですが、中にいる人間は、船底には板が敷いてあって、御座が敷いてあって、2時間で浅草をでて浅草に戻ってくる。


2時間の間で、天ぷらは揚げてくれ、刺身がだされ、2時間以内で食べ、その間にビールを飲む。


外を眺める時間も、食べている時間もなんだか中途半端で、せっつかれて、せっつかれてちっとも面白くもないですね。何かもう少しやり方があんじゃないかという思いもいたします。

でも屋形船などが浮かび、動いているのですけど、もう少し美しくやる、何か儲け主義の方が先に来ているような感じがしないでもありません。


そこで、これから運河ルネッサンスがどのようにしていくべきか、そのためには、大勢の人々の参加と協力を求めなければいけないというで、「みんなで取り組もう運河ルネッサンス」というのを出している。


これを出して2年になるのですけど、一向に進んでいないということは、どういうことなのかと必ず思うことが、要するにみなさんこういうようなことを取り組もうという気運が、都にも区にも生まれているのに、実際のところ広報が十分にされていないという現状があり進んでいない。


そんなことで私たちどもは、世の中が今までの陸上が中心だったのが、もう一度、水運を見直そうという風になっている。

その時において「どのようにするの、どうして行けば良いのか」ということが大きな課題になっているのです。


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講義は、まだ続きますが、紙面との関係で次ページになります。

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